
「そろそろ、うちも管理会計をちゃんとやらないと」——年商が5億を超えたあたりから、そう考え始めた社長は多いのではないでしょうか。
会社が大きくなった。
社員も、取引先も、部門も増えた。
でも、数字の見え方だけは、創業のころと変わっていない。
売上は伸びている。なのに、手元のお金はなぜか楽にならない。どの商品で、どの部門で、本当に儲かっているのかが、決算書を見ても分からない。そんなモヤモヤを抱えたまま「管理会計」という言葉にたどり着いた——おそらく、そういう順番だと思います。
ところが、ここで多くの社長がつまずきます。ネットで「管理会計 やり方」と調べると、財務三表だ、原価計算だ、KPIだ、と一気に出てくる。結局どこから手をつければいいのか、余計に分からなくなる。そして「うちにはまだ早い」と、そっとタブを閉じる。私が現場で何度も見てきた光景です。
私は認定経営革新等支援機関の税理士として、40社を超える会社の財務の現場に立ち会ってきました。社会医療法人の監事を務め、複数社の経営会議にも入っています。その立場から、言葉を選ばずに書きます。
管理会計の入口で、社長がまず作るべきは「3つの表」だけです。決算書の財務三表を勉強し直す必要も、いきなり全社の原価計算を組む必要もありません。
この記事では、その3表が何か、なぜ決算書の財務三表とは別物なのか、そして製造・卸の社長がどの順番で手をつければいいのかを、現場の言葉で渡します。
「うちは何から作ればいいか」を、30分で整理しませんか
直近1期の決算書と、今お使いの月次資料があれば、あなたの会社が「まず作るべき3表」のどこから始めるべきかを、その場で一緒に組み立てます。管理会計は、全部やろうとすると必ず挫折します。まず入口の1表から。無料相談・強引な勧誘はありません。
1. なぜ「管理会計を始めよう」とした社長ほど、入口でつまずくのか?
結論から書きます。つまずく原因のほとんどは、「決算書の財務三表」と「管理会計で作る表」を、同じものだと思い込んでいることです。ここが混ざっていると、いつまでも入口を見つけられません。
「管理会計」と検索すると、多くの解説記事が、まず貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)・キャッシュフロー計算書(CF)の説明から入ります。いわゆる財務三表です。これはこれで大事な知識です。ただ、正直に言うと——この三表は「税務署と銀行に見せるための、過去の成績表」であって、社長が来月の打ち手を決めるためのものではありません。
決算書は、1年に一度、確定した過去を、会社全体で1枚にまとめたものです。会社全体、年に一度、確定後。この3つが、社長の日々の判断とは相性が悪い。社長が知りたいのは「今月、どの商品が儲かっていないか」「来月、資金は回るか」「計画とどれだけズレているか」——もっと手前の、生々しい問いだからです。
管理会計というのは、乱暴に言えば「会社を、社長が判断できる単位まで割って、先を読むための数字づくり」です。決算書が「会社を1枚に丸める」方向なら、管理会計は「会社を部門別・商品別・月別に割って、未来に向ける」方向。向きが真逆なのです。
だから、財務三表の勉強から入ると、社長は「難しい会計の話」に迷い込んで消耗します。そうではなく、いま自社の判断に足りていない数字は何か、から入る。そのために作る最初の道具が、次に渡す3表です。
2. 社長がまず作るべき「3つの表」とは何か?
いきなり結論です。管理会計の入口で、私が製造・卸の社長に最初に作ってもらうのは、いつもこの3表です。①部門別・商品別の粗利表、②資金繰り表、③予実対比表。この3つで、「どこで稼ぐか・お金は回るか・計画とどうズレたか」が見えます。
なぜこの3つか。それは、社長が経営で下す判断が、突き詰めると「どこに力を入れ、どこを削るか(選択)」「お金は足りるか(資金)」「打った手は効いているか(検証)」の3種類に集約されるからです。この3つの問いに、それぞれ1枚の表で答える。それが入口の3表です。
表①:部門別・商品別の粗利表(どこで稼いでいるかを、割って見る)
1枚目は、粗利を「会社全体」ではなく「部門別・商品別」に割った表です。管理会計の入口として、私はこれを最優先に置いています。理由は単純で、年商5〜10億の製造・卸で、社長がいちばん見えていないのが「どこで稼ぎ、どこで損しているか」だからです。
決算書のPLでは、粗利は会社全体で1本の数字になっています。でも現実の会社は、よく売れる主力商品と、付き合いで続けている赤字ぎりぎりの商品が、同じ器の中で混ざっている。全体で見れば黒字でも、割ってみると「実は3つの商品が全体の利益を稼ぎ、残りが足を引っ張っていた」というのは、本当によくある話です。
この表があると、社長の判断が変わります。値上げ交渉をどの取引先から切り出すか。どの製品ラインに設備投資を寄せるか。撤退を検討すべき商品はどれか。「なんとなく忙しい」から「この商品で稼ぎ、この商品は見直す」へ、判断が具体的になる。部門別・商品別に粗利を見える化する話は、部門別・商品別の収益を見える化する方法で詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。
表②:資金繰り表(利益ではなく、お金の動きを先に読む)
2枚目は、これから数か月分のお金の入りと出を、月ごとに並べた資金繰り表です。過去を映す決算書と違い、資金繰り表は「未来」を書く表だという点が、最大の違いです。
製造・卸は、仕入や外注の支払いが、売上の入金より先に来やすい業種です。だから、利益が出ていても現金が薄くなる局面が必ずある。「黒字なのに、月末が毎回ヒヤヒヤする」——この感覚に心当たりがあるなら、それは資金繰り表を持っていないサインです。利益とお金は、動くタイミングがずれる。ここを取り違えると、伸びている会社ほど資金ショートに近づきます。黒字なのに現金が残らない構造については、黒字なのに現金がない会社の財務改善で掘り下げています。
資金繰り表は、少なくとも先の3か月、できれば半年先まで書きます。「いつ、いくら足りなくなりそうか」を、足りなくなる前に知る。これができると、銀行への相談も、慌てて頼み込む姿勢から、余裕を持って先に動く姿勢に変わります。銀行は、追い込まれてから来る会社より、先を読んで来る会社を評価します。
表③:予実対比表(計画と実績のズレを、毎月確かめる)
3枚目は、年初に立てた計画(予算)と、毎月の実績を並べて、そのズレを見る予実対比表です。①と②が「今の状態を見る」表なら、こちらは「打った手が効いているかを検証する」表です。
多くの会社は、期初に計画を立てて、そのまま金庫にしまい込みます。そして期末になって「今年も計画どおりにはいかなかったな」と振り返る。これでは、計画を立てた意味がありません。予実対比の価値は、ズレに毎月気づいて、期中に手を打ち直せることにあります。
「売上は計画どおりなのに、利益が計画を下回っている」なら、原価か経費が想定より膨らんでいる。「特定の部門だけ未達が続く」なら、そこに原因がある。予実対比表は、こうした異変を早い段階で拾う”アラーム”です。計画そのものの立て方は、経営改善計画書の書き方も参考になります。
①粗利表で「どこで稼ぐか」、②資金繰り表で「お金は回るか」、③予実対比表で「手は効いているか」。この3表だけで、社長の意思決定はぐっと具体的になります。
3表のうち、今どれを持っていますか
「資金繰り表はあるけど、部門別の粗利は見たことがない」——そんな社長が大半です。まずは自社に足りない1表から。月に一度、この3表を一緒に読むところから始める伴走の形もあります。無料相談で、あなたの会社の”最初の1表”を決めましょう。LINEからでも受け付けています。
3. なぜ決算書の「財務三表」だけでは、経営判断ができないのか?
結論を先に書きます。決算書の財務三表は「過去・全社・年次」でできていて、社長が必要とする「未来・部門別・月次」の視点が、構造的に抜け落ちているからです。悪い書類だからではなく、目的が違うのです。
財務三表(BS・PL・CF)は、税務申告と銀行提出のために作られています。だから、正確さと網羅性が最優先で、1年分を会社全体で1枚に丸める作りになっている。この三表を読めること自体は経営者にとって大事な素養で、そこは財務三表の読み方で解説しています。ただ、読めることと、判断に使えることは別の話です。
たとえば、決算書のPLを見て「今期は黒字だった」と分かっても、「来月どの商品に力を入れるべきか」は一言も書かれていません。BSを見て自己資本比率が分かっても、「3か月後に資金が足りるか」は読み取れない。決算書は、過ぎた1年の答え合わせであって、これから打つ手のガイドではないのです。
ここを、多くの会計解説は曖昧にしています。「管理会計にも財務三表が大事」と書くから、社長は「まず財務三表を勉強しなきゃ」となって、入口で止まる。私が伝えたいのは逆です。財務三表は”読めればいい”、社長が”作るべき”なのは入口の3表。この線引きが、管理会計を挫折させないコツです。
決算書を過去の成績表として押さえたうえで、部門別粗利・資金繰り・予実という「未来と現場に向いた3表」を持つ。この両輪がそろって初めて、数字が経営の武器になります。決算書そのものを経営者目線でどう読むかは、経営者のための決算書の読み方もあわせてどうぞ。
4. 管理会計を始める社長が、絶対にやってはいけないことは?
正直に書きます。管理会計は、始め方を間違えると、コストと手間だけかかって続かない仕組みになります。私が現場で何度も見てきた、代表的な失敗が3つあります。
❌ 管理会計の入口で、社長がやりがちな3つの失敗
- いきなり全部やろうとする——部門別・商品別・原価計算・KPI管理を一度に立ち上げようとして、現場が疲弊し、3か月で形骸化する。管理会計は、1表ずつ育てるものです。
- いきなり「完璧な原価計算」を目指す——製造業ほど、正確な原価を1円単位で出そうとして沼にはまる。最初は概算でいい。粗利の”率の推移”が追えれば、判断には十分間に合います。
- 数字を作ること自体が目的になる——立派な表は毎月出てくるのに、それを見て何も決めていない。管理会計は「判断を変えるため」の道具。見て動かないなら、作る意味がありません。
この3つに共通するのは、「精密さ」や「網羅性」を先に求めてしまうことです。管理会計は、精度より”回すこと”が先。粗くても毎月見て、毎月1つ判断を変える。そのサイクルが回り始めてから、少しずつ精度を上げればいい。完璧な仕組みを作ってから始めようとした会社ほど、始まる前に止まります。
5. まず何から手をつければいいのか?
答えはシンプルです。3表を同時に立ち上げようとせず、自社にいちばん足りない1表から始める。それを3か月回してみる。それだけで、数字の見え方が変わります。
選び方の目安はこうです。「売上は伸びているのに利益が薄い」なら①部門別・商品別の粗利表から。「黒字なのに資金が不安」なら②資金繰り表から。「計画を立てても達成できない」なら③予実対比表から。自社のいちばん強い痛みに、いちばん近い表を選んでください。
最初は、今ある試算表や販売データを使った、粗い手作りの表でかまいません。会計ソフトやエクセルで、月に一度、同じフォーマットで出す。大事なのは、きれいな表を作ることではなく、毎月見て、先月との差を見て、1つでも打ち手を変えることです。1表が回り始めたら、次の表を足す。管理会計は、この積み上げでしか根づきません。
数字が読めるようになると、社長の頭に余白が生まれます。「なんとなく不安」で埋まっていた思考が整理され、その分を、値決め・投資・人の配置といった本来の経営判断に回せるようになる。数字が味方になった社長は、勘と経験に、根拠が1本加わります。
とはいえ、最初の3か月を一人で走るのは、正直しんどい。「この粗利率は、去年と比べて良いのか悪いのか」「この資金繰り、放っておいて大丈夫か」——その判断基準が、まだ手元にないからです。その基準を隣で一緒に作る相手がいると、立ち上がりが一気に速くなります。私の事務所が月一の伴走という形を用意しているのは、この「最初の入口」でつまずく社長が本当に多いと知っているからです。税理士に財務の伴走まで頼む意味は、数字が苦手な社長がまず見るべき数字でも触れています。
「管理会計、いつか」のままの1年か、数字で判断できる1年か
また「そろそろやらないと」と思いながら、決算書を眺めて閉じる日々に戻るのか。それとも、入口の1表を持って、どこで稼ぐか・お金は回るかを自分の目で確かめられる社長になるのか。分かれ道は、最初の1表を誰かと決めるかどうかです。
直近1期の決算書があれば、無料相談で「あなたの会社が最初に作るべき1表」をその場で一緒に決めます。
オンライン/対面どちらでも対応・強引な勧誘はありません
6. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 管理会計と財務会計(決算書)は、何が違うのですか?
ざっくり言うと、目的と向きが逆です。財務会計は税務署や銀行に見せるための「過去・全社・年次」の記録で、正確さが最優先です。管理会計は社長が判断するための「未来・部門別・月次」の数字で、多少粗くてもスピードと使いやすさが優先されます。決算書は”読めればいい”、社長が”作るべき”なのは管理会計の入口3表、と整理すると迷いません。
Q2. 3表は、全部いっぺんに作らないといけませんか?
いいえ。むしろ同時に立ち上げるのは失敗の元です。自社のいちばん強い痛みに近い1表から始めてください。売上は伸びるのに利益が薄いなら粗利表、黒字なのに資金が不安なら資金繰り表、計画が未達続きなら予実対比表から。1表が回り始めてから、次を足します。
Q3. 会計ソフトを入れれば、管理会計はできますか?
ソフトは道具として役立ちますが、入れただけでは管理会計にはなりません。大事なのは、出てきた数字を毎月見て、判断を1つ変えること。ソフトが自動で出す表も、「どう部門を分けるか」「どの粒度で見るか」を設計しないと、見づらいだけの表になります。設計と運用の”読み方”のほうが本体です。
Q4. 製造業ですが、正確な原価が出せません。それでも管理会計は始められますか?
始められます。むしろ、最初から完璧な原価計算を目指すと沼にはまります。今ある数字で概算の粗利率を出し、その”率が去年より上がったか下がったか”を追うだけで、判断には十分間に合います。精度は、運用が回り始めてから段階的に上げていけば大丈夫です。
Q5. 顧問税理士はいますが、管理会計の相談はしたことがありません。相談だけでも可能ですか?
可能です。今の顧問税理士はそのままで、管理会計の設計や数字の壁打ち相手としてだけ関わる形もあります。税務・決算と、経営数字の伴走は役割が別物です。「今の税理士に経営の数字までは相談できていない」というご相談は、非常に多くいただきます。
Q6. 大阪以外でも相談できますか?
可能です。オンラインで全国対応しています。事務所は大阪市淀川区西中島(新大阪すぐ)ですが、月次の数字の伴走はオンラインで完結するケースがほとんどです。対面をご希望の場合は、大阪近郊であれば訪問も相談可能です。
まとめ|管理会計は、3表を”1枚ずつ”始めれば根づく
最後に、もう一度だけ整理します。管理会計の入口で、社長がまず作るべきは次の3表です。
- ①部門別・商品別の粗利表——どこで稼ぎ、どこで損しているかを割って見る
- ②資金繰り表——利益ではなく、未来のお金の動きを先に読む
- ③予実対比表——計画と実績のズレに、毎月気づいて手を打ち直す
決算書の財務三表は、過去の成績表として”読めれば”いい。社長が”作るべき”なのは、この未来と現場に向いた3表です。しかも、3つ同時ではなく、自社にいちばん足りない1表から。粗くていいから毎月見て、毎月1つ判断を変える。管理会計は、この積み上げでしか根づきません。
会社を、次のステージに伸ばしたい。その気持ちがあるなら、最初の一歩は今月から踏めます。まず、自社に足りない1表を決めるところから。もし、どの表から始めるべきか迷うなら、その1枚を一緒に選ぶところから、私がお手伝いします。
管理会計を、経営判断まで一気通貫でつなぎたい社長へ
入口の3表が回り始めた先には、月次の数字を経営判断に翻訳し、値決め・設備投資・銀行交渉・組織づくりまで並走する伴走支援があります。数字を「作る」から「使って伸ばす」へ。年商5〜10億のその先へ会社を運ぶ財務パートナーとして、Luxe Partnersでご一緒します。
この記事を書いた人
稲田光浩(いなだ みつひろ)
税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・認定経営革新等支援機関・freee認定アドバイザー
- 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
- 認定経営革新等支援機関として、経営改善計画・資金調達を金融機関へ通してきた実績
- 監事:社会医療法人
- 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
- プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計
〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605


