「そろそろ次の世代にバトンを渡さないと…」
そう思いながらも、具体的な準備を後回しにしている中小企業の社長は少なくありません。
今、日本では少子高齢化の影響で「後継者がいない会社」が増えています。2025年には約127万社が黒字廃業の危機にあるとも言われ、これは国全体の雇用やGDPにも直結する深刻な問題です。
そしてこの問題は、もはや他人事ではありません。
「うちの社員には経営なんて無理だろう」
「育てたいけど、自分が何を教えればいいのか分からない」
そんな不安を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、「中小企業の後継者を育てるために社長がすべきこと」をテーマに、現場で本当に機能する育成ステップや考え方をお届けします。
中小企業の後継者育成が急務となる社会背景
なぜ今「後継者育成」が注目されているのか?
最近になって「後継者育成」が経済誌やビジネスメディアでも多く取り上げられるようになったのには、明確な背景があります。
ひとつは、中小企業の“存続危機”が現実のものになってきたからです。
少子高齢化により、経営者の高齢化が一気に進行中。2025年には経営者の平均年齢が70歳を超えるとも言われており、事業承継のタイムリミットが迫っています。
さらに、後継者が決まっていない企業は、黒字経営であっても廃業を選ばざるを得ないケースが多く、これが“黒字廃業”と呼ばれる問題です。
また、最近では経営を引き継ぐ「人の問題」だけでなく、価値観やビジョンの継承、ITスキルや時代の感覚を持った経営判断ができる人材の育成も必要とされてきています。
つまり今の時代、後継者は「若くて意欲のある人」では不十分。経営全体を理解し、社長の器として成長できる人を育てなければならない、という視点が求められているのです。
後継者不在がもたらす会社へのリスクとは?
「後継者がいないだけで、ここまでリスクが大きくなるのか…」
そう驚かれる経営者の方も少なくありません。
ですが、後継者不在には見過ごせないリスクがあります。
まず1つ目は、社員のモチベーション低下です。
「社長が辞めたらどうなるのか分からない」
「この会社に未来はあるのか?」
こうした不安が広がれば、優秀な人材ほど早期に転職を考える可能性が高まります。
2つ目は、金融機関や取引先の信頼の低下。
後継者がいない会社に対しては、融資の判断もシビアになりますし、大手企業との取引でもマイナスに働くことがあります。
3つ目は、廃業やM&Aを余儀なくされるリスク。
後継者がいないことを理由に、会社そのものを手放さざるを得ないケースは年々増加中です。
社長がまずやるべき後継者育成の準備とは
後継者を育てるには、まず社長自身が「何を引き継がせるか」を整理する必要があります。
以下の準備を進めることが、育成の土台となります。
- 承継時期の目安を決め、スケジュールを立てる
- 事業の「ビジョン」や「価値観」を言語化する
- 業務内容や意思決定を見える化する
- 社員・取引先との信頼関係を整理する
- 社長としての“譲る覚悟”を固める
育成より先に「社長の覚悟」が必要な理由
「自分がまだ元気だから」「急ぐ必要はない」——そう考える社長ほど、後継者育成が遅れます。
でも実は、後継者を育てる前に一番必要なのは社長自身の“覚悟”なのです。
育成は、単なる知識やスキルの伝達ではなく、“自分の立場を譲る準備”でもあります。これは精神的にも大きなハードルです。
だからこそ、早い段階で「自分はいつ引くか」「引いた後どう関わるか」を整理しておく必要があるのです。
後継者育成は“教育”ではなく“経営の委譲”
後継者育成とは「経営を譲っていくプロセス」であり、“一緒に経営する”という経験の中でしか育たないのです。
後継者に必要なのは、決断する責任を持たせる経験、そして失敗をフォローしながらも任せる姿勢です。
早い段階から「小さな経営判断」を任せること。
利益が多少落ちても、信頼と経験という“見えない資産”を育てることが、後々大きな経営力へとつながるのです。
事業承継計画はいつから作るべき?
理想は、10年〜5年前には構想を始めること。
計画書には「いつまでに誰に」「どのような段階で」「どこまで任せるか」などを記載しましょう。
事業承継計画は、固定されたものではなく「見直し可能な地図」のような存在。
だからこそ、まず一度作ってみることが、最初の一歩となるのです。
実践!後継者を育てるための6つの具体ステップ
ステップ①:候補者の見極めと指名
(※すでに前パートにて記載済)
ステップ②:リーダー教育と現場経験
管理職やプロジェクト責任者などのポジションで実務経験を積ませ、判断力とリーダーシップを育てます。
教育はインプットよりもアウトプット。失敗したときこそ学びのチャンスと捉えましょう。
ステップ③:小さな意思決定から任せていく
小さな経営判断から段階的に任せていくことで、自信と実力を養います。
ステップ④:経営数字や戦略を共有する
PL・BSの読み方、キャッシュフローの見方などを習得させ、経営視点を育てましょう。
ステップ⑤:社員や取引先への発信と信頼構築
社内・社外に後継者として紹介し、信頼と安心感を生み出す発信を行いましょう。
ステップ⑥:失敗も含めたPDCAで支援し続ける
育成は長期的なプロセス。定期的に振り返り、改善を重ねて支援し続けましょう。
後継者がいない・辞めた場合の代替案とは?
社内に適任者がいないときの解決策
無理に内部にこだわらず、後継者バンクや外部からの招聘も視野に入れましょう。
第三者承継(M&A)との違いとメリット
M&Aによって即戦力経営者を迎え入れることができ、事業の存続・発展が可能です。
ただし理念の共有や社員の雇用継続に配慮した選定が必要です。
後継者育成に活用できる補助金・支援制度まとめ
事業承継引継ぎ補助金
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補助金枠 | 対象 | 概要 |
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経営革新枠 | 後継者 | 設備投資・新事業開発など |
専門家活用枠 | M&A希望者 | FA費用や相談料の補助 |
廃業・再チャレンジ枠 | 起業準備者 | 廃業費用、新事業準備支援 |
まとめ
- 後継者育成は「今から」始めるべき
- 社長の覚悟と段取りがすべてを左右する
- 教育ではなく「経営の委譲」である
- 社内外への発信と支援制度を活用しよう
後継者育成は一朝一夕では実現できません。この記事を読んだ今こそ、第一歩を踏み出してみませんか?