営業赤字△500万円を+2,000万円に。私が「決算を作るだけの税理士」を辞めた日|稲田光浩

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— STORY / なぜ独立したのか —

営業赤字△500万円だった運送会社を、経常利益2,000万円台へ。
利益200万円で頭打ちだった防犯カメラ会社を、1,000万円・実質無借金経営へ。
この2社に私が「税理士として」したことは、答えを渡すことではありませんでした——

この記事は約7分で読めます。/稲田光浩(大阪・淀川区/税理士業界19年・独立5年目)

「税理士って、決算と申告する人ですよね」——独立する前、私は、この言葉に反論できませんでした。

2007年に会計事務所へ入り、2013年から複数の税理士法人で税務と経営コンサルの現場を歩き、2021年10月に独立しました。18年、この仕事をしてきた計算になります。

その私が、独立を決めた直接のきっかけは、一件の顧問先で起きた出来事でした。
本記事は、その出来事と、そこで私が学んだ「税理士の仕事の本当の範囲」の話です。

初めまして。稲田光浩(いなだ みつひろ)。大阪市淀川区西中島で、稲田光浩税理士事務所を営んでいます。少しだけ、私の話をさせてください。

「決算を作るだけ」では、社長は救えないと思った日

独立の直前、私が担当していた顧問先の1社に、資金繰りにいつも追われている会社がありました。売上は上がる、社員も働いている。けれど、月末になると通帳の残高が薄い。売上を追うことでしか、資金繰りを埋められない構造に、社長がずっと囚われていました。

営業マンは、今月の売上目標を追う。
そのために、値引きを飲む。粗利が薄くなる。
薄い粗利を量で埋めるために、また値引きする。
働けば働くほど、通帳は薄くなっていく。

目の前で回っていたのは、そういう循環でした。

ある月、私は決算書を持って、社長にはっきりこう言いました。

「社長。目先の売上を追い続けている限り、この資金繰りは変わりません。
今、必要なのは手元資金を厚くすること。そして、目先の売上ではなく、将来の売上につながる案件だけを取ることです」

営業マン全員の目標設定を変えました。
値引きの基準を変えました。
取る仕事を、選ぶようにしました。

結果として、その会社は合計で数千万円規模の粗利を追加で獲得することに成功しました。数字だけを見れば、それは「粗利改善プロジェクト」の成功事例です。ただ、私にとって決定的だったのは、粗利の増加額よりも、社長の顔つきが変わったことでした。

資金繰りに追われている社長の目は、いつも足元を見ています。手元が厚くなると、目線が上がる。3年後、5年後の話ができるようになる。私は、それを間近で見てしまった。

そして、こう思ったのです。

決算書を作るだけの税理士では、この社長はきっと救えなかった。
本当に必要とされているのは、経営判断に一緒に踏み込む税理士だ。

そう腹を決めた数か月後に、独立しました。2021年10月のことです。

「経営判断に携わる税理士になる」——独立時に決めた一線

独立にあたって、私は自分に一つの約束をしました。数字の翻訳と、経営判断への同席を、この事務所の仕事の中心に置く、と。

普通の税理士業務——記帳・決算・申告——は、当然きちんとやります。それは土台であり、外せません。ただ、そこで止まらない。決算書が出たら、そこから先の話を必ず一緒にする。「この数字は、次の3ヶ月で何を変えるべきと言っているのか」。ここまでを、税理士の仕事の範囲だと定義しました。

4年経った今、その約束は少し形を変えて、こういう仕事になっています。

  • 東京プロマーケット上場準備中の企業で、監査役——「お金の使い道を審査する側」の席に、常にいます
  • 社会医療法人の監事——法人の業務・会計を監査する立場を任されています
  • 複数社の経営会議・取締役会に、外部の立場で継続的に参加
  • 年商1〜10億円規模の会社の財務伴走・CFO支援——決算書を作るだけでなく、月次の意思決定に並走します

肩書きを並べたいのではありません。「決算書を外から眺めているのではなく、意思決定が下される部屋の中にいる」——独立時に自分に約束したこの一線を、今も守れているという証明として、書いています。

独立後、実際にお手伝いした2つの事例

抽象論だけでは伝わらないので、独立してから実際に伴走した2つの事例を、業種と数字だけで書きます(守秘義務のため会社が特定できる情報は書きません)。

事例①|運送業:営業赤字500万円 → 経常利益2,000万円へ改善

ご相談いただいた時点で、営業赤字△500万円。ドライバーの努力ではなく、経営の見え方の問題でした。私が最初にやったのは、トラック1台ごとの損益を可視化することです。「どの車両が稼ぎ、どの車両が赤字を出しているか」——これを社内で数字にしていなかった。

赤字車両が見えたら、次は改善策の議論です。ここで大事にしたのは、私が答えを持ち込むのではなく、現場責任者と後継者を巻き込んで会議を何度も回したこと。ルート、荷主、単価、稼働率——現場を知る人間が数字を見て、初めて有効な打ち手が出てきます。

並行して、ドライバー個人にも数字を見せる仕組みを入れました。安全運転ランキング・燃費効率ランキングを作り、上位のドライバーには金一封を出す制度をつくった。事故率が下がり、燃料コストが下がり、社員のモチベーションが上がる。数字を「管理される道具」ではなく、「頑張った人が報われる道具」に変えた瞬間、現場の空気が変わりました。

コスト管理も徹底しました。保険・修理・タイヤ・燃料——聖域を作らず、1つずつ見直す。結果として、△500万円だった営業損益が2,000万円台の経常利益に転換しました。私がやったのは、答えを渡すことではなく、数字を見える形にして、決められる人が決められる会議を作ったこと。それだけです。

事例②|防犯カメラ業:利益200万円 → 1,000万円へ、実質無借金経営に

もう1社は、防犯カメラの卸・施工を手がける会社。売上は伸びているのに利益が薄く、社長も「なんとなく忙しいだけ」の状態でした。ここで入れたのが、「出したい利益から逆算した粗利管理」です。

通常、値決めは「原価に何%乗せる」で決めます。でもそれだと、原価が上がっても価格転嫁が遅れ、粗利がじりじり削られていく。逆にして、「今期この利益を出すには、粗利率と粗利額はこの水準が必要」と先に決めてしまう。そこから逆算して、案件ごとの見積・受注基準・値引きの上限を設計しました。

取る案件・断る案件の基準ができると、社員は迷わなくなります。粗利率を割る案件は、社長の確認なしに営業が「これは受けない」と判断できる。意思決定が現場に降りたのです。

結果として、利益は200万円から1,000万円まで伸びました。手元現金も適切な水準を超え、借入があっても実質無借金経営と言える状態になりました(現預金が借入額を上回る=正味では借りていないのと同じ)。ここまで来ると、銀行との会話も一変します。「今月大丈夫ですか」から、「新しい投資のご相談ありますか」に変わる。

2つの事例に共通するのは、私が答えを渡したのではないということです。数字を見える形に整え、決めるべき人が決められる会議を作り、意思決定を現場に降ろす——それが独立してから私がやっている仕事の中身です。

私が現場で守っている、3つの軸

18年の実務と、独立からの4年で、私が現場で守るようになった軸は3つあります。

軸①:利益よりキャッシュを先に見る

帳簿上黒字でも、現金が回らなければ会社は止まる。あの独立のきっかけになった会社が教えてくれた、一番大きな教訓です。決算書を開いたら、私が最初に見るのは、いつも「お金の残り方」です。

軸②:銀行とは、困る前から付き合う

資金が細ってから駆け込む融資は、条件が悪くなるか間に合わないかに寄ります。業績の良い今、良い条件で厚めに借りておく。銀行が「晴れの日に傘を借りる」と言うのはそういう意味です。

軸③:目先の売上より、将来の売上を取る

これが、独立のきっかけになった一件で学んだ最大の教訓です。売上を伸ばすことと、粗利を残すことは、別の作業です。値引きで積んだ売上は、翌年も値引き前提の売上になる。取る仕事を選ぶ勇気は、財務の裏付けがあって初めて持てる——これも同じ現場で学びました。

正直に書く。うまくいかなかった話も

成功事例だけ書くと、こちらも嘘くさくなるので、正直に書きます。

独立の前、粗利改善プロジェクトに入るまでの数年間、私はあの会社の社長に「値引きをやめましょう」と言うタイミングを、何度も逃していました。目の前の売上目標を追う体制ができあがっていて、「今それを言うと社内が回らなくなる」と、社長より先に私が躊躇していたのです。

結果として、値引き構造が固定化してからの立て直しになりました。もっと早く、決算書を持って向き合っていれば、社長の眠れない夜は数十回減らせたはずです。

だから独立してからは、私は「まだ早い」「言いにくい」を理由に先送りすることをやめました。数字がおかしいと思ったら、その月に伝える。社長の反応が悪くても、伝える。信頼を失うのは、間違った提案をした時ではなく、気づいていたのに黙っていたと後で分かった時だと、痛感したからです。

この事務所は、いま誰と一緒に仕事をしているのか

今、私が主に伴走しているのは、年商1〜10億円規模の成長期の会社です。業種は幅があります。製造業・卸売業・医療歯科・飲食・スタートアップ。共通しているのは、「決算・申告だけでは物足りない」「経営の話ができる相手がほしい」と、社長自身が思っているタイミングにあることです。

freee認定アドバイザーとして、日々の数字が月次で経営判断に届く仕組みも一緒に整えます。AIの経営活用も、自分の事務所で毎日実践しながら、顧問先には「実際に使える形」で持ち込みます。技術は目的ではなく、社長と社員の時間をつくる手段として。

最後に。何のためにこの仕事をしているのか

私のミッションは、経営者・パートナー・地域社会の可能性を拡げ続け、あらゆる可能性を信じ、開花に導くこと——と書くと、少し大きな言葉に聞こえるかもしれません。

だから、もう少し等身大に書きます。

私は、あの日の社長のような人の隣に、もう一人立ちたい。

売上を追い続けなければ資金繰りが持たない、と思い込んでいる社長。
決算書は毎年出てくるのに、次に何をすればいいか分からない社長。
お金の不安が頭に常駐して、未来の話ができなくなっている社長。

その社長の隣に、決算書と資金繰り表を持って座り、次の3ヶ月に何をすべきかを一緒に決める。そこまでが、税理士の仕事だと私は思っています。18年前の私には反論できなかった「税理士は決算と申告する人」という言葉に、今ならこう答えられます。

税理士は、決算と申告を通じて、社長の意思決定に一緒に責任を持てる仕事です。
少なくとも私は、そう定義してこの事務所をやっています。

もしこの話に何か重なるものがあれば、一度話を聞かせてください。売り込みはしません。私が独立時に自分に約束した一線を、今の御社でも守れるかどうか——それだけを、45分お話ししたいと思います。

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この記事を書いた人

稲田光浩(いなだ みつひろ)

税理士(近畿税理士会・登録番号135413)/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・freee認定アドバイザー

  • 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
  • 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
  • 監事:社会医療法人 1法人
  • 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
  • 2007年会計業務/2013年から複数の税理士法人で税務・経営コンサル/2021年10月独立開業

〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605

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