債務償還年数の目安は何年?計算式と、銀行評価を上げる3つの改善策

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あなたの会社の債務償還年数、銀行が「何年以内」を目安に見ているかご存知でしょうか。

一般的な目安は10年以内。これを超えると、融資審査での評価が厳しくなる可能性があります。

私は税理士として、東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役、社会医療法人の監事を務め、複数社の経営会議・取締役会に出ています。銀行との融資交渉の席にも、顧問先の隣で何度も座ってきました。その席で銀行員が必ず電卓を叩いている数字が、この債務償還年数です。

この記事では、債務償還年数の意味と計算式を初めての方にも分かるように解説したうえで、銀行がこの数字をどう使っているか、そして短縮するための5つの改善アクションまでを一本にまとめました。

読み終わる頃には、自社の数字を自分で計算し、次の決算で何を直すべきかが見えるはずです。

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債務償還年数とは?何を測る数字なのか

結論から書きます。債務償還年数とは、「いまの稼ぎを全部返済に回したら、借金を何年で返し切れるか」を示す数字です。

会社の”返済能力”を1つの数字に圧縮したもの、と考えてください。

数字が短いほど「すぐ返せる健全な会社」、長いほど「返済に時間がかかる、リスクの高い会社」と読まれます。

なぜこの数字が大事なのか。銀行が融資審査で必ず見る指標だからです。銀行は「この会社にお金を貸して、ちゃんと返ってくるか」を判断するとき、利益の額そのものではなく、借金と稼ぐ力のバランスを見ます。そのものさしが債務償還年数です。

ここで1つ、現場で本当に多い誤解を書いておきます。

「うちは黒字だから、銀行の評価も大丈夫ですよね?」

無料相談の場で、私が本当によく聞く言葉です。そして正直に書きます。これは違います。

利益が出ていても、借入が利益に対して大きすぎれば、債務償還年数は平気で15年、20年になります。逆に、利益がそこそこでも借入が軽ければ数年で収まる。黒字かどうかと、銀行から見て健全かどうかは、別の話です。私は現場でこのすれ違いを何度も見てきました。

債務償還年数の計算式は?具体例で確認する

計算式はこうです。

債務償還年数 =(有利子負債 − 正常運転資金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)

用語を噛み砕きます。

  • 有利子負債:銀行借入など、利息を払って借りているお金の合計
  • 正常運転資金:売掛金+在庫−買掛金。商売を回すために常に立て替えている分で、事業を続ける限り実質的に返済を求められにくいため、借入から差し引きます
  • 経常利益+減価償却費−法人税等:1年間に返済に回せる現金(簡易キャッシュフロー)。減価償却費は「お金が出ていかない経費」なので、利益に足し戻します

数字を入れてみましょう。

  • 借入金:1億円
  • 正常運転資金:2,000万円
  • 経常利益:3,000万円
  • 減価償却費:1,000万円
  • 法人税等:500万円

(1億円 − 2,000万円)÷(3,000万円 + 1,000万円 − 500万円)= 約2.3年

この会社なら、銀行は「2年ちょっとで返し切れる稼ぎがある」と読みます。まったく問題のない水準です。

私も顧問先との決算面談では、まずこの数字から確認します。売上でも利益率でもなく、ここから。銀行との会話が、この数字を起点に組み立てられるからです。

なお、銀行や信用保証協会によって、運転資金を引かない簡便な式(借入金 ÷ 税引後利益+減価償却費)を使うこともあります。式のバリエーションはありますが、「借金 ÷ 年間の返済原資」という骨格はどれも同じです。まずは自社の決算書で一度、電卓を叩いてみてください。5分で出ます。

目安は何年?銀行は何年から警戒するのか

実務上の大きな目安は「10年以内」です。かつての金融検査の実務から引き継がれてきた水準で、いまも多くの銀行が債務者区分(会社の格付け)を考えるときの参考にしています。

ただし「10年ならセーフ」と安心してほしくはありません。私の体感では、現場の温度感はもう少し細かく分かれます。

  • 5年以内:優良。融資はスムーズに進みやすく、金利交渉の土俵にも乗りやすい
  • 5〜10年:標準的。事業内容と計画次第で、追加融資も十分に狙える
  • 10〜15年:注意ゾーン。銀行内部での評価が一段下がり、新規融資に慎重になり始める
  • 15年超:警戒ゾーン。追加融資のハードルはかなり高く、改善計画の提出を求められることもある

業種によっても目安は変わります。不動産賃貸業のように長期の借入で資産を持つビジネスは20年程度まで許容されることがある一方、運転資金中心の卸売業・サービス業では10年を超えると厳しく見られやすい。自社の業種でどう見られるかは、メインバンクの姿勢込みで判断する必要があります

一点、正直に書きます。この目安を知ったからといって、来月の審査結果が変わるわけではありません。変わるのは「決算までに何を直すか」という打ち手の精度です。だからこそ、次の章の「銀行の見方」まで理解してほしいのです。

銀行は債務償還年数をどう使っているのか?

銀行員は、決算書を受け取ると自行のシステムに数字を入力し、会社を格付けします。債務償還年数は、その格付けを左右する主要な指標の1つです。

ここで押さえてほしいのは、銀行融資は”数字の審査”ではなく、“返済ストーリーの審査”だということです。

債務償還年数が12年だったとします。数字だけ見れば注意ゾーン。しかし「大型の設備投資をした直後で、来期から償却が利益を押し上げ、3年で8年台まで戻る計画です」と根拠付きで説明できれば、銀行の見方は変わります。

逆に、数字が8年でも、なぜその借入があるのか、どう返すのかを社長が説明できなければ、評価は伸びません。

私が融資の現場で何度も見てきたのは、同じ決算書でも、説明できる社長とできない社長で、融資の条件が変わるという現実です。数字を計算できるようになったら、次は「この数字を銀行にどう語るか」まで準備する。ここまでやって初めて、債務償還年数はあなたの武器になります。

なお、債務償還年数とセットで銀行が見るのが、運転資金と手元流動性です。この3つの数字のつながりは「黒字なのに現金がない|成長企業が陥る資金ショックの正体と財務改善5ステップ」で詳しく解説しています。

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債務償還年数を短縮する5つの改善アクションとは?

式を思い出してください。(借入 − 運転資金)÷ 返済原資。改善策は大きく3つ——稼ぐ現金を増やす/運転資金を圧縮する/借入と決算書を見直す——に集約されます。この3つを、実行しやすい順に5つのアクションに分解します。

① 経費を見直して、分母の現金を増やす

最も即効性があるのはここです。使っていないサブスク契約、惰性で続いている外注費、効果測定していない広告費。年間ベースで棚卸しすると、削れる固定費は思っている以上に出てきます。私の体感では、固定費の棚卸しを一度もやったことがない会社ほど、削れる余地が大きい。利益が増えれば返済原資が増え、償還年数は自然と縮みます。

② 売上より「粗利」を増やす行動を取る

売上を増やすなら、利益率の高い商品・サービスの拡販、既存顧客への追加提案が先です。薄利の売上を積んでも、売掛金と在庫が膨らんで運転資金が増え、かえって償還年数が悪化することがあるからです。「売上を伸ばしたのに数字が悪くなった」という相談を、私は現場で何度も受けてきました。

③ 運転資金を圧縮して、分子を減らす

売掛金の回収サイトを縮める。滞留在庫を処分する。買掛金の支払サイトを見直す。地味ですが、運転資金の圧縮は借入そのものの必要額を減らします。とくに在庫は、放置するほど分子を押し上げる”静かな犯人”です。

④ 借入の構成を見直す

金利の高い借入の借り換え、複数借入の一本化、返済期間の適正化。借入の組み方次第で、毎年の資金繰りと銀行評価は大きく変わります。ただし、どの借入から手を付けるかの順番や銀行への切り出し方には技術が要るため、具体的な手順はこの記事には書きません。個別のご相談で、御社の借入一覧を見ながらお伝えしています。

⑤ 決算書の見せ方を整え、毎月モニタリングする

同じ実態でも、決算書の作り方で銀行の読み取る数字は変わります。役員貸付金の整理、雑勘定の解消、減価償却の適正な計上。こうした「決算書の整え方」は、税理士の腕が最も出る領域です。そして改善は、やりっ放しでは戻ります。債務償還年数を経営会議のKPIに入れ、月次で追いかけてください。数字は、見ている人の会社でしか良くなりません。

外部の目を入れて財務改善を進める方法は「税理士が財務コンサルとして伴走するメリット」でも解説しています。

やってはいけない改善の仕方とは?

❌ 債務償還年数の改善でやってはいけないこと

  • 手元資金を削って繰上返済すること。償還年数は縮みますが、現預金が薄くなり、不測の支出で一気に資金繰りが詰まります。銀行も「返済より手元流動性」を重視する場面が多い。返すより先に、残す設計です。
  • 安易にリスケ(返済猶予)に飛びつくこと。月々の負担は軽くなりますが、多くの場合、新規融資の道が事実上閉ざされます。リスケは最後の手段であり、順番を間違えると戻れません。
  • 利益を大きく見せるための無理な会計処理。銀行の審査部は決算書の異常値を見抜きます。一度「数字を作る会社」と見られたら、信頼の回復には年単位の時間がかかります。

共通しているのは、目先の数字だけを追って、銀行との信頼という土台を壊してしまうことです。債務償還年数は、信頼を測るための数字であって、ごまかすための数字ではありません。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 債務償還年数の目安は業種によって違いますか?

違います。一般的な目安は10年以内ですが、不動産賃貸業など長期借入で資産を持つ業種は20年程度まで許容されることがあり、運転資金中心の卸売業・サービス業はより短く見られる傾向があります。メインバンクの姿勢によっても変わるため、自社の数字と業種をセットで判断する必要があります。

Q2. 赤字の場合、債務償還年数はどうなりますか?

返済原資(経常利益+減価償却費−法人税等)がマイナスになると、債務償還年数は計算不能、つまり「いまの稼ぎでは返し切れない」状態と評価されます。この場合は償還年数の改善以前に、赤字要因の特定と黒字化の道筋づくりが先です。早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q3. 10年を超えていたら、もう融資は受けられませんか?

そんなことはありません。10年超でも、悪化の原因(設備投資直後・一時的な利益の落ち込み等)と改善の道筋を数字で説明できれば、融資に応じる銀行はあります。大事なのは数字そのものより、返済ストーリーを語れるかどうかです。逆に、説明を放棄して申し込みだけ繰り返すのは逆効果です。

Q4. 正常運転資金はどうやって計算しますか?

「売掛金+受取手形+在庫−買掛金−支払手形」で計算します。商売を回すために常に立て替えている金額で、事業を続ける限り実質的に返済を求められにくいため、債務償還年数の計算では借入から差し引きます。決算書の貸借対照表があれば5分で計算できます。

Q5. 大阪以外の会社でも相談できますか?

可能です。当事務所は大阪市淀川区にありますが、Zoomによるオンライン相談で全国に対応しています。決算書を画面共有しながら、債務償還年数を含む銀行目線の数字を一緒に確認できます。初回45分は無料です。

まとめ|数字は、直せる

債務償還年数は、「いまの稼ぎで借金を何年で返せるか」を示す、銀行審査の中心的な指標です。

目安は10年以内。計算式は(有利子負債−正常運転資金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)。そして短縮の方向は、分母の現金を増やすか、分子の実質借入を減らすかの2つだけです。

私が現場で見てきた限り、この数字が悪い会社の多くは、能力の問題ではなく、単に「誰もこの数字を見ていなかった」だけです。見始めた会社から、数字は変わっていきます。社員の雇用を守り、未来への投資を続けるためにも、利益と資金繰りの数字から目を逸らさないでください。

来期もまた、決算書が届いてから銀行の反応に一喜一憂するのか。それとも今日、自社の債務償還年数を電卓で叩いて、改善の一手を打ち始めるのか。

分かれ道は、いつもその一歩です。

まずは45分、数字を見せてください

契約の話は、しなくてかまいません。直近の決算書をお持ちいただければ、債務償還年数と「銀行が御社をどう見ているか」を整理してお返しします。合わないと感じたら、遠慮なく断ってください。

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この記事を書いた人

稲田光浩(いなだ みつひろ)

税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・freee認定アドバイザー

  • 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
  • CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
  • 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
  • 監事:社会医療法人 1法人
  • 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
  • プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計

〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605

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参考:日本政策金融公庫/中小企業の財務指標に関する公的情報

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