結論から言うと、財務コンサルはすべての会社に必要なものではありません。
しかし、ある条件に当てはまる企業にとっては、導入するかどうかが経営の安定性・成長スピードを大きく左右します。
私はこれまで10年以上、中小企業・成長企業の財務改善や経営支援の現場に関わってきました。その経験から断言できるのは、
財務コンサルが「不要な会社」と「今すぐ導入すべき会社」には、明確な違いがある
という事実です。
この記事では、
- 財務コンサルが不要な会社の特徴
- 導入すべきかを判断する3つの判断軸
- 導入時によくある失敗と注意点
を、抽象論なし・現場視点で解説します。
財務コンサルとは何をする存在か?(よくある誤解)
「財務コンサル=資金調達の人」と思われがちですが、これは一部に過ぎません。
本来の財務コンサルの役割は、経営判断を数字で支えることです。
具体的には以下のような領域を扱います。
- 資金繰り・キャッシュフローの設計
- 財務体質(BS)の改善
- 借入・投資判断のシミュレーション
- 数字を使った経営戦略の可視化
- 社長の感覚的判断を「仕組み」に落とす支援
税理士が「過去の数字を正しくまとめる存在」だとすると、
財務コンサルは「未来の数字を設計する存在」と考えると分かりやすいでしょう。

結論:財務コンサルが不要な会社の特徴
まずは、「うちには本当に必要なのか?」という疑問に答えます。
以下に当てはまる場合、財務コンサルの優先度は高くありません。
① 売上・利益が安定し、大きな投資予定がない
- 毎年安定した黒字
- 借入返済に無理がない
- 設備投資・人員拡大の予定がない
- キャッシュ残高を把握できている
この状態であれば、顧問税理士+社内管理で十分なケースが多いです。
② 社長自身が数字を理解し、意思決定できている
以下ができている場合、外部の財務コンサルは必須ではありません。
- PL・BS・CFを見て即判断できる
- 借入や投資の影響を数字で説明できる
- 数字と現場感覚にズレがない
実務上、このレベルに達している経営者は全体の1~2割程度です。
③ 相談内容が曖昧なまま導入を考えている
- なんとなく不安
- 周りが入れているから
- 資金繰りが苦しいが原因が分からない
この状態で導入すると、
「結局、何も変わらなかった」という結果になりやすいです。
それでも導入を検討すべき会社の共通点
一方、次のような悩みがある場合は、財務コンサルの導入価値は高いと言えます。
- 売上は伸びているのにお金が残らない
- 投資判断を感覚で行っている
- 借入が増え、将来が不安
- 社長が数字を見る時間を取れていない
ここからは、導入判断に使える3つの明確な判断軸を解説します。
財務コンサル導入を判断する3つの判断軸
判断軸① お金の流れを「説明」できるか
以下の質問に即答できますか?
- なぜ今月キャッシュが増えた(減った)のか
- 利益と現金がズレる理由は何か
- 来期末の現金残高はいくらか
答えられない場合、
経営判断をブラックボックスで行っている状態です。
この状態は、成長期に入るほどリスクが高まります。
判断軸② 成長フェーズに入っているか
- 人員増加
- 設備投資
- 広告投資
- 新規事業
これらはすべて「先にお金が出ていく」判断です。
現場では、
「売上は伸びたが資金が足りない」
という相談が非常に多くあります。
成長期こそ、財務設計の有無が経営を左右します。
判断軸③ 意思決定を仕組み化したいか
AI・自動化時代において重要なのは役割分担です。
人がやるべき判断
→ 投資するか、借りるか、撤退するか
仕組み・AIに任せる作業
→ 集計、予測、シミュレーション
財務コンサルは、
社長が判断すべきポイントだけを残す仕組みを作る存在でもあります。
財務コンサル導入でよくある失敗と注意点
① 税理士と役割が被っている
- 記帳代行が中心
- 決算説明だけ
- 未来の話がない
これは財務コンサルとは別物です。
② 数字の説明で終わる
良い財務コンサルは、
「だから次に何をするか」まで落とします。
③ 社長が丸投げしてしまう
財務は社長の意思決定を代替できません。
あくまで判断の質を高める補助輪です。
よくある質問(FAQ)
Q. 税理士がいれば財務コンサルはいらない?
A. 役割が違います。税理士は過去、財務コンサルは未来を扱います。
Q. 小規模企業でも意味はある?
A. 成長・投資フェーズなら規模は関係ありません。
Q. 効果はどれくらいで出る?
A. 3~6ヶ月で判断の質が変わるケースが多いです。
Q. スポット相談でも良い?
A. はい。最初はスポットの方が失敗しにくいです。
要点まとめ
- 財務コンサルは全社必須ではない
- 不要な会社には明確な特徴がある
- 判断軸は「説明力・成長フェーズ・仕組み化」
- 導入目的が曖昧だと失敗しやすい
- 正しく使えば経営判断の精度は大きく向上する



