黒字なのにお金がない理由は5つ|社長が確かめる3つの数字

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先日、年商6億円の建材卸の社長から「決算は2期連続で黒字なのに、月末になると預金通帳を3回見直す。なんでウチは現金が増えないのか」とご相談を受けました。試算表を開くと、利益は出ています。社長の言うとおり黒字でした。それでも現金は減っていました。理由は、決算書のもっと奥、3つの数字に隠れていたのです。結論から言うと、「黒字なのに現金がない」現象の正体は、利益と現金のズレです。売掛金・在庫・設備投資・借入返済の4ヶ所で、利益が現金以外の形に化けています。これを放置すると、決算は黒字のまま倒産する「黒字倒産」になります。2024年の東京商工リサーチによると、倒産企業の約4割は直近決算が黒字でした(出典:東京商工リサーチ)。中小企業庁「中小企業白書」でも中小企業の資金繰り悪化が課題として示されています。

この記事では、年商3〜10億円の成長企業が陥る”資金ショック”の正体と、銀行を動かす財務改善5ステップを、経営会議に外部の立場で参加してきた現場の見方でお伝えします。読み終える頃には、自社の通帳を見るのが少し楽になっているはずです。

決算書を見ながら頭を抱えるオーナー社長|黒字なのに現金がない 改善
黒字なのに月末が怖い——売上が伸びている時期に起きやすいこと

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「黒字なのに現金がない」の正体|PLとCFの乖離が起きる5つの理由

まず、社長が一番もやもやする部分を言葉にします。利益と現金は別物です。損益計算書に出てくる利益と、通帳の残高は同じ金額にはなりません。主な理由は5つあります。

理由1|売掛金が膨らんでいる(請求はしたが入金されていない)

売上を計上した時点で、損益計算書では利益が立ちます。しかし入金は1か月後、2か月後です。計算で示すと、年商6億円で売上がすべて掛売りの会社の場合、回収までの期間が30日から60日に伸びると、計算上は約4,900万円(6億円÷365日×30日)が売掛金として残り、現金になりません。社長の感覚では「売上が伸びている」だけですが、通帳では「現金が減っている」になります。

理由2|在庫が積み上がっている(仕入れたが売れていない)

在庫はPL上「費用」になりません。「資産」として貸借対照表(BS)に積まれます。仕入代金は現金で出ているのに、利益は減らない構造です。結果、利益と現金の差が在庫の分だけ広がります。

在庫は「売るための備え」に見えるので、増えていても気づきにくい項目です。前期と今期の棚卸資産を並べるだけで、利益のうちどれだけが在庫に変わったかが分かります。

理由3|設備投資が回収サイクルに入っていない

設備投資の支出は一括で出ますが、損益計算書には減価償却費として耐用年数にわたって分けて計上されます。計算で示すと、1億円の設備を耐用年数5年の定額法で償却する場合、買った年に現金は1億円出ていくのに、費用になるのは年2,000万円ずつです。この差額が、現金の「見えない流出」です。

理由4|借入金の元本返済はPLに出てこない

これが私が一番説明する部分です。借入返済のうち、PLに出るのは「支払利息」だけ。元本の返済は、通帳から現金が消えるだけでPLには載りません。

計算で示すと、借入残高1.5億円を7年で均等に返す場合、年間の元本返済は約2,140万円です。この返済額が「経常利益+減価償却費−法人税等」を上回っていれば、黒字でも現金は減ります。

理由5|法人税・消費税の納税タイミング

決算で利益が出れば法人税が発生します。法人税の申告・納付の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法第74条・第77条。申告期限の延長の特例は第75条の2)。消費税は中間納付を含めて年4回払う会社もあります。利益が出た翌期は、納税でまとまった現金が出ていきます。これを資金繰り表に組み込んでいないと、その月に資金が足りなくなりやすくなります。

PLとCFの乖離要因 PL影響 現金影響
売掛金増加 利益+ 現金−
在庫増加 変化なし 現金−
設備投資 減価償却のみ 現金大幅−
借入元本返済 影響なし 現金−
法人税・消費税納税 前期計上済 現金−

関連記事:決算書の読み方②|財務3表を使って経営判断の精度を上げる方法

自社の”資金ショックリスク”を測る3つの数字

「黒字なのにお金がない」状態が続くと、手元の現金が減り、借入の相談も後手に回りやすくなります。早めに、自社の状態を3つの数字で測ってください。3つとも、銀行が決算書を見るときに確認されやすい数字です。関連する注意点は銀行評価を下げる5つのNG|社長が知らずにやっていることにまとめています。

数字1|運転資金(売掛金+在庫−買掛金)

運転資金とは、本業を回すために必要な現金です。計算式:売掛金 + 棚卸資産 − 買掛金。この数字が前年比で増えていれば、その分だけ現金が”事業の中”に飲み込まれています。

数字2|債務償還年数(借入を何年で返せるか)

債務償還年数は、いまの稼ぎで借金を何年で返せるかを示します。計算式:(有利子負債 − 正常運転資金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)。正常運転資金は「売掛金+棚卸資産−買掛金」です。銀行が融資の判断で見る数字の1つで、計算の手順は債務償還年数の計算式と目安で詳しく書いています。私は財務体質の目標として、10年未満を置いています。

数字3|手元流動性(現預金÷月商)

手元流動性は、いまの現金で月商の何か月分をまかなえるかを示します。計算式:現預金 ÷ 月商。目安の考え方は手元資金の目安で書いていますが、1か月分を下回っている場合は、次の決算月までに現金を積み上げる計画を先に立てることをお勧めします。

入金が安定している会社でも、取引先の支払いが遅れれば、月末の支払いに使える現金はすぐに減ります。入金の予定がずれた月を想定して、余裕を持たせておくことをお勧めします。

運転資金・債務償還年数・手元流動性の3つの数字|キャッシュフロー 中小企業
銀行にも確認されやすい3つの数字

銀行が見ている数字|債務償還年数・実質金利・運転資金の関係

融資の判断でどこから見られるかは、金融機関や担当者によって違います。ただ、決算書を渡したときに確認されやすい項目には、ある程度の共通点があります。

決算書で確認されやすい項目

  1. BSの「現預金」と「借入金」の比較
  2. 債務償還年数(自分で計算する)
  3. 運転資金の前年比増減
  4. 営業キャッシュフローの符号(プラスかマイナスか)
  5. 最後にPLの売上・利益

意外でしたか?PLの利益は最後に見られる数字なんです。融資の判断では「貸したお金が返ってくるか」が中心になります。利益額よりも、返済原資(≒キャッシュフロー)が重く見られます。

実質金利と表面金利の差

もう1つ、銀行員と社長の間で誤解されやすいのが「金利」です。表面金利が1.5%でも、保証料・手数料・拘束預金(積立預金や定期預金)を計算に入れると、実質金利は表面金利より高くなります。

関連記事:表面金利と実質金利の違いを理解して、財務管理を改善しよう

運転資金は「常に必要な短期借入」と理解させる

銀行に追加融資を依頼するとき、「運転資金が増えたから貸してほしい」と言うと、担当者の評価は半減します。理由は、運転資金は経営者が自分でコントロールすべきもの、と銀行は考えているからです。

正しい言い方は、「売上が前年比1.3倍に伸び、それに伴う必要運転資金が3,000万円増えた。この成長運転資金を短期借入で調達したい」です。これだけで担当者の表情が変わります。「成長」と「数字の根拠」が揃うと、銀行は動きやすくなるからです。

関連記事:債務償還年数の目安は何年?計算式と、銀行評価を上げる3つの改善策

黒字なのにお金がない状態を改善する5ステップ

「黒字なのにお金がない」を改善する5つのステップを、取り組む順にまとめます。前のステップで作った数字が、次のステップの材料になります。

ステップ1|資金繰り表を13週間先まで作る

まず、向こう13週間(約3ヶ月)の入金・出金を週次で並べます。Excelで構いません。大事なのは「予測」と「実績」を毎週並べて差を確認することです。

週次で並べると、消費税の中間納付や賞与の支払いがいつ来るかが先に見えるようになります。見えれば打ち手が出ます。

参考:日本政策金融公庫「資金繰り改善のポイント」
関連記事:財務コンサルティングで資金繰りが変わる理由|銀行交渉の実例と改善の5ステップ

ステップ2|売掛金回収サイトと在庫水準を見直す

運転資金を圧縮する代表的な手段は、売掛金回収を早めることと、在庫を絞ることです。具体的には次の3つ。

  • 請求書発行を月末締め翌月末入金から、月末締め翌月20日入金に短縮交渉
  • 在庫の「動かない品番」を四半期ごとにリスト化し、処分・値引き販売
  • 仕入先への支払サイトは現状維持(無理に延ばすと信用に響く)

計算で示すと、年商5億円で売上がすべて掛売りの会社の場合、1日あたりの売上は約137万円です。回収を10日早めれば、計算上は約1,370万円が売掛金から現金に戻ります。銀行借りより先に、ここを締める方が早いです。(中小企業基盤整備機構「資金調達・キャッシュフロー管理」も参考になります。)

ステップ3|借入の構造を「短期+長期」に組み直す

借入をすべて長期5〜7年で借りていると、毎月の返済負担が重くなります。運転資金は短期、設備資金は長期が原則です。

  • 運転資金:短期借入(1年以内・期日一括返済)or 当座貸越
  • 設備資金:長期借入(5〜10年・約定弁済)
  • 赤字補填:本来借入で対応せず、根本原因を経営判断で潰す

借入の期間は、使い道に合わせて決めるのが基本です。運転資金まで長期借入でまかなうと、毎月の返済額は小さく見えても借入残高が積み上がり、債務償還年数が伸びる原因になることがあります。

ステップ4|決算書を「銀行に読ませる」前提で作り込む

決算書は税務署に出すだけの書類ではありません。借入をしている会社にとっては、銀行が融資の判断に使う資料でもあります。

銀行に提出する前に、次の3点を確認してください。

  1. 勘定科目内訳書の「役員貸付金」を減らす(残っていると使途を確認されやすい)
  2. 仮払金・仮受金を放置しない(怪しい資産・負債として扱われる)
  3. 事業概況書の従業員数・店舗数・主要取引先を正確に書く(手抜きすると印象がガクッと落ちる)

数字が同じでも、説明のつかない科目が残っている決算書は、銀行から確認を求められる項目が増えやすくなります。

関連記事:決算書の読み方|経営者が最低限チェックすべき3つの数字

ステップ5|銀行訪問を「年2回」ルーティン化する

最後は、人間関係です。決算月後と中間決算後の年2回、自分から銀行を訪問してください。持参するのは、決算書・試算表・資金繰り表・事業計画の進捗。

銀行から呼ばれてから行くのではなく、自分から数字を持って説明しておくと、追加の借入を相談するときに、銀行が会社の状況を把握した状態で話を始められます。

銀行を動かす財務改善5ステップのフロー図|資金繰り 改善方法
財務改善の5ステップ

月次の数字を見る会社と見ない会社の違い

「黒字なのにお金がない」状態を抜け出すには、社長ご自身が毎月の数字を見る習慣が欠かせないと私は考えています。続けてほしい習慣と、避けたい状態を並べます。

続けてほしい3つの習慣

月次の数字を見る会社で続けてほしいのは、次の3つです。

  • 社長自身が月次試算表と資金繰り表を毎月見る
  • 数字を社内の幹部1〜2名と共有する
  • 銀行に自分から訪問する習慣を持つ

避けたい3つの状態

反対に、次の状態が続いていると、同じ悩みが繰り返されやすくなります。

  • 試算表を税理士任せにして開かない
  • 銀行から呼ばれてから動く(先回りしない)
  • 資金繰り表を作っていない、or 月1回しか更新しない

正直に書くと、私が関わっても、社長ご自身が数字を見る時間を取れない場合は、改善に時間がかかります。そのため財務の伴走では、月に最低2時間、数字を一緒に見る時間を確保していただくことをお願いしています。

税務顧問の契約と、資金繰りの相談の関係

税務顧問の契約に、資金繰りの予測が含まれていないこともあります。「これから現金が足りるか」を予測して手を打つ業務は、申告とは別に頼む形になります。

税理士の良し悪しではなく、契約の範囲の違いです。ただ、その間で困るのは社長の方です。だから私は、税理士業務に加えてCFO顧問の伴走を提供しています。

関連記事:税理士に資金繰りの相談はできる?話が進まない理由と頼み方

自分でできること/専門家に頼むべきこと

「黒字なのに現金がない」を改善するうえで、社長自身でやるべきことと、専門家に頼んだ方が早いことを線引きします。

社長自身でやるべきこと(外注しない)

  • 毎月の試算表を1時間眺める習慣
  • 資金繰り表の「予実差」を週次で確認
  • 銀行担当者との関係構築(年2回の訪問)
  • 幹部への数字の共有(最低1名)

これは社長にしかできません。外注すると、社長の経営感覚が育たないからです。

専門家に頼んだ方が早いこと

  • 債務償還年数・実質金利の計算と銀行交渉のシナリオ作り
  • 資金繰り表のフォーマット設計と13週間予測の精度向上
  • 決算書の「銀行向け作り込み」(勘定科目内訳書のチューニング)
  • 事業計画書の作成と銀行への持ち込み同行
  • キャッシュフロー計算書の作成と分析

このあたりは、税理士1人だけだと厳しいことがあります。税務と財務は別の専門領域だからです。私の事務所では、税務は稲田光浩税理士事務所、財務伴走はLuxe Partnersという形で機能を分けてご提供しています。

私にも分からない領域

正直に書きます。私にも限界があります。海外子会社の連結キャッシュフロー、上場企業の四半期開示、不動産証券化スキームの組成などは、専門の会計士やコンサル会社をご紹介する形にしています。

「黒字なのにお金がない」でよくある質問

Q1|資金繰り表は毎週作らないとダメですか?月1回ではダメですか?

月1回でも、作らないよりは先の見通しが立ちます。精度を上げたいなら週次更新が向いています。最初は月次で始め、慣れてきたら週次に移す進め方をお勧めしています。大事なのは「予測と実績の差」を見る習慣です。

Q2|銀行に追加融資を頼むタイミングはいつが正解ですか?

お金が必要になってからではなく、決算書と税務申告がそろったタイミングで相談を始めることをお勧めします。借入の相談には決算書・試算表・資金繰り表の準備が要り、申し込んでから実行まで日数がかかるためです。現金が足りなくなりそうな月から逆算して、早めに動いてください。

Q3|顧問税理士がいるのに、別途財務の相談先を持つのは失礼ですか?

失礼ではありません。税務は顧問税理士、財務は財務コンサルと、機能で分けて頼む形があります。「税理士を変える」ではなく「機能を追加する」と考えれば、今の顧問との関係を続けたまま相談できます。

関連記事:財務コンサルティングと税理士の違い|どちらに頼むべきか、何が変わるか / 財務コンサルティング会社の選び方|大阪の中小企業オーナーが後悔しないための基準

Q4|年商3億円の会社で、社外CFOまで必要でしょうか?

必須ではありません。月次試算表を社長と税理士で読み込めていれば、それで足りる会社もあります。銀行借入が年商の50%を超えている場合や、設備投資を控えている場合は、財務の伴走を早めに検討する価値があります。

関連記事:財務コンサルは本当に必要?導入すべき会社・不要な会社の違い / 税理士が「財務コンサルタント」として伴走する5つのメリット

Q5|うちは決算書がきれいだから銀行から信頼されているはず。何が問題ですか?

「決算書がきれい」と「銀行が安心して貸せる」は別の話です。役員貸付金、仮払金、棚卸資産の急増、売掛金の回収遅れなどがあると、銀行から説明を求められ、評価に影響することがあります。利益の額だけでなく、貸借対照表の科目の中身も確認してください。

Q6|キャッシュフロー計算書は中小企業でも作るべきですか?

義務ではありませんが、作ることをお勧めします。損益計算書と貸借対照表だけでは「なぜ現金が減ったか」を説明しにくいからです。銀行に経営状況を説明するときの資料としても使えます。

Q7|45分の無料相談で何が分かりますか?

初回45分の無料相談では、決算書2期分をもとに債務償還年数・運転資金・手元流動性の3つを概算で出し、売掛金・在庫・設備投資・元本返済・納税のどこで現金が止まっているかを一緒に確かめます。具体的な改善案は、お話を伺ってから個別にご提案します。

資金繰り改善のFAQ|キャッシュフロー経営の実務
よくある7つの質問

まとめ|「黒字なのに現金がない」は数字で解ける

ここまでの話をまとめます。

  • 「黒字なのに現金がない」の正体は、売掛金・在庫・設備投資・借入返済・納税の5ヶ所で利益が現金以外に化けているから
  • 自社のリスクは3つの数字(運転資金・債務償還年数・手元流動性)で測れる
  • 銀行は利益の額に加えて、返済原資と運転資金の動きも見る
  • 改善は5ステップ(資金繰り表→売掛金・在庫→借入の組み替え→決算書の作り込み→銀行訪問のルーティン化)の順で
  • 社長自身が毎月の数字を見る習慣が、改善を続ける土台になる

まずは今日、前期と今期の決算書を並べ、売掛金と棚卸資産がいくら増えたかを見てみてください。

稲田光浩税理士事務所では、年商3〜10億円の成長企業を中心に、税務顧問とCFO伴走の両輪でご支援しています。「決算は黒字だけど月末が怖い」という状態を、3つの数字で見える化するところから一緒に始めましょう。

この記事を書いた人

稲田光浩(いなだ みつひろ)

税理士/稲田光浩税理士事務所 代表/freee認定アドバイザー

  • CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
  • 東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役
  • 税理士(近畿税理士会・登録番号135413)/認定経営革新等支援機関
  • 社会医療法人の監事
  • 経営会議・取締役会への参加経験:複数社

プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/経理業務フロー改善

公式サイト / Luxe Partners(CFO/財務伴走) / お問い合わせ

〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605

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財務コンサルティングの全体像(何をする仕事か・費用の決まり方・選び方)は、こちらに一本にまとめています。
財務コンサルティングとは|業務内容・費用・選び方

お金はどこで止まっている?社長が決算書と通帳で確かめる5項目

原因が5つあると分かっても、自社がどれに当てはまるかは決算書を開かないと分かりません。前期と今期の決算書と、借入の返済予定表を手元に置いて、次の5項目を上から順に確かめてください。

原因 見る場所 確かめ方
売掛金 貸借対照表の売掛金・受取手形(前期と今期) 増えた額を、売上の増えた額と比べる。売上の伸び以上に増えていれば、回収が遅れている取引先がある
在庫 貸借対照表の棚卸資産(商品・製品・仕掛品・原材料) 前期より増えた分は、利益が出ていても現金として手元にない。増加額が今期の利益に近いと、利益の多くが在庫に変わっている
設備投資 固定資産の増加額と、損益計算書の減価償却費 今期に買った設備の額が減価償却費を大きく上回っていれば、費用になるより先に現金が出ている
借入の元本返済 借入の返済予定表(年間の元本返済額) 年間の元本返済額と「経常利益+減価償却費−法人税等」を並べる。返済額の方が大きければ、黒字でもお金は減る
納税 法人税の納付期限(原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内)と消費税の中間納付の月 資金繰り表に納付月と納付額が入っているか。入っていなければ、その月に現金が足りなくなりやすい

5項目のうち、前期からの増加額がいちばん大きいものが、最初に手を付ける場所です。複数に当てはまる場合も、金額の大きい順に並べれば優先順位が決まります。

税理士の稲田は、この相談で何を確認するのか

「黒字なのにお金がない」というご相談で、私が最初に見るのは利益の額ではありません。上の5項目のうち、どこに現金が出ていったかです。監査役・監事として判断する側の席にも座っているので、数字を受け取る側がどこを見るかも合わせて確認します。

お預かりする資料

  • 決算書2期分(勘定科目内訳書を含む)
  • 借入の返済予定表(すべての金融機関の分)
  • 直近の月次試算表
  • 今後の納税・賞与・大きな支払いの予定が分かるもの

計算する数字

  • 5項目それぞれの前期からの増減額(どこに現金が出ていったかを金額の大きい順に並べる)
  • 年間の元本返済額と「経常利益+減価償却費−法人税等」の差(黒字でもお金が減る構造かどうか)
  • 債務償還年数(有利子負債 − 正常運転資金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)が10年未満に収まっているか
  • 自己資本比率が15%以上あるか

債務償還年数と自己資本比率の2つは、財務体質の目標として私が置いている数字です。どちらも決算書から計算できるので、初回相談の場で現在地をお伝えできます。

社長にお聞きすること

  • 売上が伸びた取引先の回収条件は、以前と同じですか
  • 在庫の中に、長く動いていないものはありますか
  • 今期の設備は、手元資金と借入のどちらで支払いましたか
  • 次の納税月と賞与月はいつで、資金繰り表に入っていますか
  • 銀行の担当者から、最近どんな質問や依頼がありましたか

反対に、初回の45分では「いつ資金繰りが楽になるか」「いくら借りられるか」はお約束しません。決算書を分解してお話を伺ってからでないと、私にも分からないからです。

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