
「公庫と地銀、どっちで借りるべきですか?」——年商1〜3億のフェーズで、最も多い質問のひとつです。
結論から書きます。両方使うのが正解です。役割が違うから。今回は、日本政策金融公庫(公庫)と地方銀行(地銀)の特性比較と、成長企業の借入ポートフォリオ設計を整理しました。
1. 公庫と地銀の役割の違い
| 項目 | 日本政策金融公庫 | 地方銀行 |
|---|---|---|
| 設立背景 | 政府100%出資の政策金融機関 | 民間営利金融機関 |
| 主な役割 | 創業支援・小規模支援・政策誘導 | 事業性融資・取引関係の長期維持 |
| 金利 | 低め・固定が多い | 市場連動・変動も可 |
| 借入期間 | 長期OK(10〜20年) | 基本は5〜7年 |
| 審査の柔軟性 | 規格化(型に当てはまる) | 柔軟(事業性で判断) |
| 追加融資の機動性 | 遅い(数か月) | 速い(数週間) |
| 経営相談・伴走 | 限定的 | 担当者ベースで強い |
つまり、公庫は 「型にハマる長期低利」、地銀は 「機動性と柔軟性」。両者の役割は補完関係です。
2. 公庫の特徴|創業期と長期低利の強み
公庫が強いシーン
- 創業期:銀行が貸さないフェーズで、公庫だけが貸してくれる
- 長期借入:設備投資など10〜20年の長期借入は公庫が圧倒的に有利
- 政策テーマ:女性・若者・シニア向け、新事業展開支援などは特別金利
- 大規模融資:中小企業事業の貸付なら数億円も可能
公庫の弱み
- 追加融資の意思決定が遅い
- 経営相談・コンサル機能は弱い
- 運転資金より設備資金が得意(短期回転には不向き)
3. 地銀の特徴|柔軟性と機動力
地銀が強いシーン
- 運転資金:機動的に短期借入を組める
- 口座取引との連動:日常の振込・給与支払・現金管理
- 経営相談:担当者が会社の状況を継続的に把握
- 当座貸越・コミットメントライン:予備与信枠は地銀の領域
地銀の弱み
- 金利は公庫より高い
- 長期借入は組みにくい(短期巻き直し前提)
- 経営状況が悪化すると、態度が急に変わる
4. 成長フェーズ別の使い分け戦略
創業〜年商1億:公庫メイン
地銀はまだ動かない。公庫の創業融資・新規開業資金を使う。
年商1〜3億:公庫+地銀1〜2行
地銀との取引を開始。最初は保証付きから。公庫の長期借入を骨格に、地銀の運転資金を機動的に使う。
年商3〜10億:公庫+地銀2〜3行+メガバンク
取引銀行を増やし、競争原理を働かせる。地銀のプロパーも徐々に取得。メガバンクとも接点を作る。詳細は プロパー融資の取り方 参照。
年商10億超:地銀メイン+メガバンク+公庫の特別融資
主取引は地銀・メガ。公庫は特定の政策融資(事業承継・海外展開等)でスポット利用。
5. 借入ポートフォリオの組み方
借入も「分散投資」と同じ考え方が必要です。
理想的なバランス例(年商5億)
| 借入先 | 金額 | 期間 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 公庫(長期) | 3,000万 | 15年 | 設備投資 |
| 地銀A(プロパー) | 2,000万 | 5年 | 運転資金 |
| 地銀B(保証付き) | 1,500万 | 7年 | 運転資金 |
| 地銀A(当座貸越) | 枠1,000万 | 1年更新 | 予備与信 |
このように 「長期×短期」「複数行×公庫」 を組合せると、1行に依存しないリスク分散ができ、かつ機動性も確保できます。
6. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 公庫と地銀、どちらから先に借りるべきですか?
創業期〜年商1億までは公庫が先。年商1億超で地銀との取引を本格化する流れが一般的です。
Q2. 公庫の審査が地銀より厳しいと聞きました。本当ですか?
事業計画書の精度を求める点では公庫の方が厳格です。ただ、担保・保証は地銀より柔軟です。
Q3. 公庫の金利が安いなら、全部公庫にしたほうが良いのでは?
違います。公庫だけだと 機動性・経営相談・予備与信 がカバーできません。地銀との関係構築は別軸で必要です。
Q4. 地銀が複数行になると、管理が大変ではないですか?
多少手間は増えますが、複数行のメリット(金利交渉力・与信枠分散)の方が圧倒的に大きいです。月次試算表を全行に同じものを送れば、管理コストは大きくなりません。
Q5. メガバンクとはいつから取引すべきですか?
年商10億超で、海外展開や上場準備など 「機能が必要」 なタイミングで開始するのが王道です。それまでは地銀の方が密度の濃い関係が築けます。
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