小規模事業者持続化補助金とは?採択率の推移(全18回)と第20回の変更点を税理士が解説

記事更新日:

「うちも持続化補助金、使えるんじゃないか」。
そう思って検索したものの、情報が多すぎて、結局どこから手を付ければいいか分からなくなっていないでしょうか。

もらえる金額はいくらなのか。実際、どれくらいの確率で通るのか。次の締切はいつなのか。——調べれば調べるほど、ページごとに書いてあることが微妙に違って、頭が疲れてくる。この記事は、その状態を一度リセットするために書きました。

正直に書きます。持続化補助金は、申請すれば通る補助金ではありません。直近の第18回の採択率は51.1%。おおよそ2人に1人は落ちています。そして採択されても、お金が入るのは「後払い」。ここを知らずに走り出すと、資金繰りで苦しむことになります。

私は大阪で、年商1〜10億の成長企業の財務に伴走している税理士です。現在、東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役、社会医療法人の監事を務め、複数社の経営会議・取締役会に出ています。補助金を「もらって終わり」ではなく、資金繰りと決算にどう効かせるかという視点で、制度の全体像・全18回の採択率データ・第20回(次回)の変更点まで、良いことも悪いことも隠さず解説します。

※本記事の数値・スケジュールは執筆時点(2026年7月11日)の公表情報に基づきます。公募回・年度により内容は変わるため、申請前に必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。

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小規模事業者持続化補助金とは?制度の全体像

結論から書きます。小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が「販路開拓」に取り組む経費の一部を、国が補助してくれる制度です。チラシやホームページの制作、新商品の開発、店舗の改装、展示会への出展——「売上を伸ばすための投資」が対象になります。

運営は全国の商工会議所・商工会が担い、所管は中小企業庁。数ある補助金の中でも、小規模事業者にとって一番身近で、一番使われてきた制度と言っていいと思います。

仕組みはシンプルです。

  • 経営計画書・補助事業計画書を作って申請する——「何にいくら使って、どう売上を伸ばすか」を書面にする
  • 審査を経て、採択・不採択が決まる——全員がもらえるわけではない
  • 採択後、交付決定を受けてから経費を使う——順番を間違えると補助対象外
  • 実績報告をして、後からお金が振り込まれる——原則は後払い

私のところに来る相談でも、この補助金の名前が出る頻度は高い。それだけ間口が広く、使い道の自由度が高い制度です。ただ、相談を受けていて感じるのは、「もらえる金額」は調べていても、「通る確率」と「お金が入るタイミング」まで調べている方は少ないということです。この記事では、その2つを先に押さえます。

大事なのは、上の流れの3つ目と4つ目です。

先に自分でお金を払い、あとから3分の2が戻ってくる。これが持続化補助金の正体です。「もらえるお金」であると同時に、一時的には「立て替えるお金」でもある。ここを最初に押さえておくと、後の資金繰りの話がすっと入ってきます。

制度の詳細は中小企業庁公式サイト(商工会議所地区)で公表されています。※制度内容は公募回ごとに見直されるため、必ず最新の公募要領を確認してください。

採択率は実際どれくらい?全18回の推移を見る

結論から書きます。直近2回(第17回・第18回)の採択率は、いずれも51.1%。つまり、2人に1人は落ちるのが今の持続化補助金です。

虫眼鏡で採択率の推移を示す棒グラフと折れ線を分析する様子を描いた図解。推移分析・傾向把握・計画改善・次回対策の4要素で、過去回の推移を見ることで準備の精度が上がる、持続化補助金の採択率の波をどう読むかを示す。

「小規模事業者向けだから通りやすい」という感覚で語られることが多い補助金ですが、データを見るとその印象は修正が必要です。一般型の全18回の推移を、公表データで並べます。

公募回 申請数 採択数 採択率
第1回 8,044 7,308 90.9%
第2回 19,154 12,478 65.1%
第3回 13,642 7,040 51.6%
第4回 16,126 7,128 44.2%
第5回 12,738 6,869 53.9%
第6回 9,914 6,846 69.1%
第7回 9,339 6,517 69.8%
第8回 11,279 7,098 62.9%
第9回 11,467 7,344 64.0%
第10回 9,844 6,248 63.5%
第11回 11,030 6,498 58.9%
第12回 13,373 7,438 55.6%
第13回 15,308 8,729 57.0%
第14回 13,597 8,497 62.5%
第15回 13,336 5,580 41.8%
第16回 7,371 2,741 37.2%
第17回 23,365 11,928 51.1%
第18回 17,318 8,330 51.1%

※一般型の公表データより作成。第18回は2026年3月17日に8,330者の採択が発表された後、3月26日に不適格101件が除外され8,229者に修正されています(中小企業庁公表)。第19回の採択結果は本記事執筆時点で未発表です(2026年7月頃公表予定)。

この表から読み取れることを、3つに絞ります。

①「60%台の時代」は終わった

第6回〜第14回あたりまでは、採択率はおおむね55〜70%のレンジで推移していました。この時期の感覚——「しっかり書けば通る」——が、今もネット上の解説記事には残っています。しかし直近の実態は50%前後。古い体感のまま挑むと、見立てを誤ります

②第15回・第16回で採択率が急落した

第15回は41.8%、第16回は37.2%。全18回で最も厳しい2回です。特に第16回は、申請数が7,371件と少なかったにもかかわらず、採択は2,741件にとどまりました。3人に1人しか通らない回が、現実にあったということです。この時期に「持続化補助金は落ちるようになった」という空気が広がりました。

③第17回に申請が殺到し、以後は「2人に1人」で定着

第17回の申請数は23,365件。全18回で最多です。制度の見直しを挟んで公募再開を待っていた事業者が集中したことが、数字からうかがえます。それでも採択率は51.1%で、続く第18回も51.1%。「2人に1人は落ちる」が、今の持続化補助金の基準線と見るのが妥当です。

採択率は公募回ごとに変動します。次回が51%になる保証はどこにもありません。だからこそ、「落ちる半分」に入らないための計画づくりが重要になります。これは後半で詳しく書きます。

もう一点、私がこの表で注目してほしいのは申請数の動きです。第16回の7,371件から、第17回は23,365件へ。約3倍です。申請が集中すれば、それだけ計画書は比較されます。「書いた」だけの計画書と「練った」計画書の差が、一番残酷に出るのが申請の多い回です。第20回も、締切が年末進行と重なるこの日程なら、駆け込みの薄い計画書が相当数混ざるはずです。裏を返せば、早く動いて練った計画書ほど相対的に浮かび上がる、ということでもあります。

第20回(次回)は何が変わる?いつまでに何をすればいい?

結論から書きます。次回・第20回(一般型・通常枠)の申請受付は2026年11月5日から12月15日(火)17:00まで。そして最大の落とし穴は、様式4(商工会議所・商工会の発行書類)の発行受付締切が12月4日——申請締切の11日前に来ることです。さらに第20回は、ウェブサイト関連費・広報費のルールが大きく変わりました。ホームページ制作・EC・ネット広告で申請を考えている方に直結する変更なので、この章の後半で対比表つきで解説します。

砂時計とカレンダー、申請書類の束を並べた図解。日程確認・書類準備・時間配分・最終確認の4要素で、早めの段取りが申請の完成度を左右する、持続化補助金の次回申請に向けて締切までをどう逆算するかを示す。

「小規模事業者向けだから通りやすい」という感覚で語られることが多い補助金ですが、データを見るとその印象は修正が必要です。一般型の全18回の推移を、公表データで並べます。

公募回 申請数 採択数 採択率
第1回 8,044 7,308 90.9%
第2回 19,154 12,478 65.1%
第3回 13,642 7,040 51.6%
第4回 16,126 7,128 44.2%
第5回 12,738 6,869 53.9%
第6回 9,914 6,846 69.1%
第7回 9,339 6,517 69.8%
第8回 11,279 7,098 62.9%
第9回 11,467 7,344 64.0%
第10回 9,844 6,248 63.5%
第11回 11,030 6,498 58.9%
第12回 13,373 7,438 55.6%
第13回 15,308 8,729 57.0%
第14回 13,597 8,497 62.5%
第15回 13,336 5,580 41.8%
第16回 7,371 2,741 37.2%
第17回 23,365 11,928 51.1%
第18回 17,318 8,330 51.1%

※一般型の公表データより作成。第18回は2026年3月17日に8,330者の採択が発表された後、3月26日に不適格101件が除外され8,229者に修正されています(中小企業庁公表)。第19回の採択結果は本記事執筆時点で未発表です(2026年7月頃公表予定)。

この表から読み取れることを、3つに絞ります。

①「60%台の時代」は終わった

第6回〜第14回あたりまでは、採択率はおおむね55〜70%のレンジで推移していました。この時期の感覚——「しっかり書けば通る」——が、今もネット上の解説記事には残っています。しかし直近の実態は50%前後。古い体感のまま挑むと、見立てを誤ります

②第15回・第16回で採択率が急落した

第15回は41.8%、第16回は37.2%。全18回で最も厳しい2回です。特に第16回は、申請数が7,371件と少なかったにもかかわらず、採択は2,741件にとどまりました。3人に1人しか通らない回が、現実にあったということです。この時期に「持続化補助金は落ちるようになった」という空気が広がりました。

③第17回に申請が殺到し、以後は「2人に1人」で定着

第17回の申請数は23,365件。全18回で最多です。制度の見直しを挟んで公募再開を待っていた事業者が集中したことが、数字からうかがえます。それでも採択率は51.1%で、続く第18回も51.1%。「2人に1人は落ちる」が、今の持続化補助金の基準線と見るのが妥当です。

採択率は公募回ごとに変動します。次回が51%になる保証はどこにもありません。だからこそ、「落ちる半分」に入らないための計画づくりが重要になります。これは後半で詳しく書きます。

もう一点、私がこの表で注目してほしいのは申請数の動きです。第16回の7,371件から、第17回は23,365件へ。約3倍です。申請が集中すれば、それだけ計画書は比較されます。「書いた」だけの計画書と「練った」計画書の差が、一番残酷に出るのが申請の多い回です。第20回も、締切が年末進行と重なるこの日程なら、駆け込みの薄い計画書が相当数混ざるはずです。裏を返せば、早く動いて練った計画書ほど相対的に浮かび上がる、ということでもあります。

第20回(次回)は何が変わる?いつまでに何をすればいい?

結論から書きます。次回・第20回(一般型・通常枠)の申請受付は2026年11月5日から12月15日(火)17:00まで。そして最大の落とし穴は、様式4(商工会議所・商工会の発行書類)の発行受付締切が12月4日——申請締切の11日前に来ることです。さらに第20回は、ウェブサイト関連費・広報費のルールが大きく変わりました。ホームページ制作・EC・ネット広告で申請を考えている方に直結する変更なので、この章の後半で対比表つきで解説します。

スケジュールを表で整理します。

公募要領の公開 2026年5月27日(公開済み)
申請受付期間 2026年11月5日〜12月15日(火)17:00
様式4の発行受付締切 2026年12月4日(申請締切の11日前)
採択発表 2027年3月頃(予定)
事業実施期限 2028年3月31日

※第20回公募要領(2026年5月27日公開)に基づく。日程は変更される可能性があるため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。

様式4とは、地域の商工会議所・商工会が「この事業者の計画を確認しました」という趣旨で発行する書類です。これがないと申請自体ができません。そして発行には、計画書を持ち込んで相談する時間が必要です。

つまり、逆算するとこうなります。

12月15日締切だと思って12月に動き出すのは、遅い。

実質の締切は12月4日。さらに商工会議所の窓口は締切前に混み合いますから、11月中旬までに計画書の形ができていて、下旬には様式4の発行依頼まで済ませておく——これが現実的な逆算です。私は融資の現場でも同じことを言い続けていますが、書類仕事は「締切の1つ手前の締切」で管理しないと、必ず最後に詰まります。

私が顧問先と補助金の話をするときは、締切から逆算したカレンダーを最初に作ります。計画の中身を考える前に、まず日付を固定する。人間は締切が遠いと動けず、近いと雑になる生き物です。「11月中旬に計画書の初稿」「下旬に商工会議所へ持ち込み」と日付で置いてしまえば、あとは埋めるだけになります。

採択発表は2027年3月頃、そこから交付決定を経て事業を実施し、期限は2028年3月31日。つまり「申請してから実際にお金が動き終わるまで」は年単位の話です。目先のキャンペーンではなく、来期の経営計画の一部として組み込むのが正しい扱い方です。

ウェブサイト関連費・広報費のルールが大きく変わった

第20回で実務に一番効く変更が、この経費ルールです。旧ルール(第19回まで)との対比で整理します。

費目 旧ルール(第19回まで) 第20回
ウェブサイト関連費 交付申請額の4分の1が上限(最高50万円) 1/4ルール廃止。30万円(税込)の独立上限に変更
広報費 独立上限なし 30万円(税込)の独立上限を新設。SNS広告・インターネット広告が対象として公式に明記

ウェブサイト関連費の変更は、申請規模によってプラスにもマイナスにもなる点に注意してください。旧ルールは「交付申請額の4分の1まで」だったので、申請額が小さいとウェブに使える枠はごくわずかでした。それが一律30万円(税込)になったため、小さい申請でもウェブに30万円までフル充当できるようになった。一方、申請総額が大きい場合(200万円以上)は、旧ルールなら最高50万円まで使えた枠が30万円に縮みます。「HPに一番お金をかけたい」計画は、第20回では組み立て直しが必要です。

広報費側は追い風です。SNS広告・インターネット広告が広報費として公式に明記され、チラシ・ポスター等の従来型広報と組み合わせて計上できます。つまり、広報費30万円+ウェブサイト関連費30万円=最大60万円のネット販促・広報戦略が制度上組めるようになりました。ただし広報費の単独申請はできず、他の費目との組み合わせが必須です。※費目の細かい線引きは、必ず最新の公募要領で確認してください。

その他の変更点(相見積・賃上げ特例・加点)

  • 相見積の基準が厳格化——機械装置等費で2者以上の見積が必要になる基準が、「1件100万円(税込)超」から「1件50万円(税込)超」に引き下げられました。50万円を超える発注を予定しているなら、見積は最初から2者分そろえる段取りで動くこと。申請準備の手間は確実に増えます
  • 賃金引上げ特例の要件が変更——旧「事業場内最低賃金+50円」から、新「従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増加」へ。判定には12か月分の賃金台帳が必要で、未達の場合は補助金全体が交付されないリスクがあります。上乗せ150万円の重さに見合う覚悟が要る要件です(詳しくは次の章で書きます)
  • 加点項目の新設——「健康経営優良法人加点」「地域別最低賃金引上げ加点」が新設されました。該当する会社は忘れずに申請へ反映を
  • 据置のもの——補助率2/3(赤字事業者の賃上げ特例は3/4)、基本上限50万円は第20回も変わりません

いくらもらえる?特例で50万円が最大250万円になる仕組み

結論から書きます。第20回の通常枠は上限50万円・補助率3分の2。ここに2つの特例を積み上げると、最大250万円まで上限が上がります。

パターン 補助上限 補助率
通常枠のみ 50万円 2/3
+インボイス特例(+50万円) 100万円 2/3
+賃金引上げ特例(+150万円) 200万円 2/3(赤字事業者は3/4)
両特例を併用 最大250万円 2/3(赤字事業者は賃上げ分3/4)

※第20回公募要領に基づく。上限額・補助率は公募回により変わるため、必ず最新の公募要領を確認してください。

補助率3分の2というのは、たとえば通常枠の上限50万円を受けるには、75万円分の対象経費を使い、そのうち50万円が補助される、という計算です。残り3分の1と消費税分は自己負担。「50万円もらえる」ではなく「75万円使って50万円戻る」と読み替えてください。この読み替えができているかどうかで、資金繰りの見立てが変わります。

金額が大きくなるほど、この差は効いてきます。上限の250万円を狙う計画なら、支払う総額はさらに大きい。「上限いくらか」より先に、「自己負担と立て替えにいくら必要か」を計算する。私が補助金の相談で最初に電卓を叩くのは、いつもこちら側の数字です。

インボイス特例(+50万円)の要件

2021年9月30日から2023年9月30日までの間に免税事業者だった事業者、または2023年10月1日以降に創業した事業者で、補助事業の終了時点までに適格請求書発行事業者の登録を受けることが要件です。インボイス対応で消費税の負担が新たに生じた層への上乗せ、という位置づけです。

賃金引上げ特例(+150万円)の要件

事業実施期限の終点までの12か月間と、その前年同月の12か月間を比較して、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増加させることが要件です。旧要件の「事業場内最低賃金+50円」から様変わりし、判定には12か月分の賃金台帳が必要になります。さらにこの特例では、赤字事業者は補助率が4分の3に引き上げられます。自己負担が3分の1から4分の1に下がる——赤字でも前向きな投資と賃上げに挑む会社を後押しする設計です。

ここで税理士として一言。賃金引上げ特例は上乗せ額が大きい分、達成できなかった場合のリスクを含めて判断すべき特例です。給与総額を年3.0%上げるというのは、人件費の固定的な増加を約束するということ。補助金は1回きり、人件費は毎年です。目先の150万円のために、無理な賃上げ計画を書くべきではありません。しかも要件未達の場合、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付されないリスクがあります。顧問税理士がいるなら、人件費シミュレーションとセットで判断してください。

特例を使うべきか、数字で判断したいなら

インボイス特例・賃金引上げ特例が御社に合うか、賃上げ後の人件費まで含めて試算します。決算書があれば45分でおおよその答えが出ます。

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対象になる会社・ならない会社は?

結論から書きます。持続化補助金の対象は「小規模事業者」——従業員数で線が引かれます

業種 常時使用する従業員数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下
製造業その他/宿泊業・娯楽業 20人以下

会社(法人)でも個人事業主でも、一定のNPO法人でも申請できます。ポイントは「常時使用する従業員」の数え方で、ここの判定は公募要領に細かい定めがあります。境界線上の会社は自己判断せず、公募要領と商工会議所への確認を必ず挟んでください。

第18回からの重要な変更:農業関連経費が対象外に

見落とされがちな変更点を一つ。第18回から、農業生産に関する経費が補助対象外になりました。ビニールハウスの建設、トラクターの購入、苗木の取得——こうした「農業生産そのもの」への投資は、もう持続化補助金では出ません。

一方で、農産物の加工や、農産物を使った飲食業——いわゆる6次産業化は対象のままです。加工機械の導入、キッチンカー、EC販売サイトの構築などは引き続き使えます。

線引きの考え方はシンプルで、この補助金の目的を「販路開拓」に純化させる、という趣旨です。作る工程ではなく、売る工程への投資か。迷ったらこの問いで判定すると、おおよその見当がつきます。※個別の経費が対象になるかは、必ず最新の公募要領と商工会議所で確認してください。

採択される事業計画は何が違うのか?

結論から書きます。採択される計画書と落ちる計画書の差は、文章のうまさではありません。「現状→課題→打ち手→数字」が1本の物語としてつながっているかです。

私は銀行融資の事業計画書を数多く見てきましたが、構造はまったく同じです。

銀行融資が「返済ストーリーの審査」であるように、補助金は「販路開拓ストーリーの審査」です。審査する人が読むのは、経費の一覧ではなく、物語の筋が通っているかどうか。

私は監査役や監事として、複数社の経営会議・取締役会で「お金の使い道を説明する側」と「審査する側」の両方の景色を見てきました。どちらの席でも、通る話は同じ形をしています。結論と根拠が一本の線でつながっている話です。補助金の審査だけが特別なわけではありません。

落ちる計画書には共通点があります。「ホームページを作りたい」「チラシを撒きたい」と、手段から書き始めていることです。審査側から見れば、「なぜそれで売上が伸びるのか」の説明がない買い物リストにしか見えません。

通る計画書は、順番が逆です。

  • 現状——自社の強みと、客観的に見た市場の状況
  • 課題——強みがあるのに売上につながっていないボトルネックはどこか
  • 打ち手——そのボトルネックを外すために、この経費を使う
  • 数字——実行したら、売上・客数がどう変わる見込みか

この4つが一直線に並んでいれば、経費の1つひとつに必然性が生まれます。感覚ではなく数字で売上を伸ばす道筋を示す——それが審査で読まれている中身です。事業計画書の組み立て方は銀行に伝わる事業計画書の書き方(5要素)で詳しく書いています。補助金の計画書にもそのまま応用できます。

税理士視点の注意:採択はゴールではなく、資金繰りの始まり

もう一つ、支援機関の解説記事にはあまり書かれていないことを書きます。

補助金は後払いです。

採択されても、すぐにお金は入りません。交付決定を受け、自分のお金で経費を払い、事業を実施し、実績報告をして、確定検査を経て、ようやく入金される。この間、支出は全額、手元資金か借入で立て替えることになります。上限まで使う計画なら、立て替え額は百万円単位です。

だから私は、補助金の相談を受けたとき、必ず資金繰り表とセットで見ます。立て替え期間に手元が細るなら、つなぎの借入も選択肢に入れる。借入コストを抑える設計は信用保証協会の保証料を最小化する考え方にまとめています。補助金・融資・決算は、バラバラに考えるものではなく、1枚の資金繰り表の上で同時に考えるものです。

デメリット・注意点は?申請前に知っておくべきこと

ここまで制度の使い方を書いてきましたが、正直に書きます。持続化補助金には、飛びつく前に知っておくべき弱点が3つあります。

❌ やってはいけないこと・見落としやすい現実

  • 交付決定前の発注・契約・支払い——採択された嬉しさで先に発注すると、その経費は補助対象外になります。「採択」と「交付決定」は別物。必ず交付決定通知を待ってから動くこと
  • 「通る前提」の資金計画——直近の採択率は51.1%。2人に1人は落ちます。補助金ありきで投資を組むと、不採択のとき計画全体が崩れます。「落ちても実行するか」を先に決めておくこと
  • 事務負担の過小評価——申請書類の作成、様式4の取得、実績報告、証憑(請求書・振込記録等)の整理。第20回からは1件50万円(税込)超の発注に相見積も必要です。慣れていない方には相応の時間がかかります。本業を止めてまで取る金額か、冷静に見積もること
  • 賃金引上げ特例の安易な選択——給与支給総額年平均3.0%増の要件が未達だと、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付されないリスクがあります。150万円の上乗せは、達成できる賃上げ計画とセットでしか意味がありません

特に1つ目は、現場で本当によく起きる失敗です。採択の通知が来ると、気持ちが前のめりになる。その勢いで見積を発注に変えてしまう。制度のルール上、救済はありません。順番だけは、絶対に間違えないでください。

2つ目についても補足します。不採択だった場合、その投資をどうするか。「補助金が出ないならやらない」という投資なら、そもそも優先度を見直したほうがいい。「補助金がなくてもやる。出れば自己負担が軽くなる」——この順番で考えられている会社は、不採択でも計画が崩れませんし、経験上、計画書の説得力も一段違います。融資の世界で銀行を味方につける会社の考え方と、まったく同じ構造です。実際に税理士の関わり方で融資の結果が変わった話はこちらの記事に書いています。

3つ目の事務負担については、考え方を一つ。社長の時間は、会社で一番高い経営資源です。書類仕事で社長の脳の余白を使い切ってしまうくらいなら、商工会議所や専門家の支援を受けて、社長は計画の中身——「何で売上を伸ばすか」——に集中する。その配分のほうが、結果的に採択率にも本業にも効きます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 個人事業主でも申請できますか?

できます。対象は会社(法人)・個人事業主・一定のNPO法人で、業種ごとの従業員数要件(商業・サービス業は5人以下、製造業その他・宿泊業・娯楽業は20人以下)を満たすことが条件です。従業員がいないひとり事業主も対象になります。

Q2. 補助金はいつ入金されますか?先にもらえますか?

先にはもらえません。原則後払いで、交付決定後に自己資金で経費を支払い、事業実施と実績報告・確定検査を経てから入金されます。立て替え期間の資金繰りを先に確認しておくことが重要です。

Q3. もらった補助金に税金はかかりますか?

かかります。補助金は法人なら法人税、個人事業主なら所得税の課税対象になる収入です(一方、消費税の課税対象にはなりません)。入金される年度と経費を使う年度がずれることもあるため、決算・申告への影響は顧問税理士に事前に確認してください。

Q4. 農業をやっていますが対象になりますか?

農業生産に関する経費(ビニールハウス建設・トラクター購入・苗木取得等)は第18回から対象外になりました。ただし農産物の加工や農産物を使った飲食業などの6次産業化は対象のままで、加工機械・キッチンカー・EC構築などは使えます。個別判定は最新の公募要領で確認してください。

Q5. 自分で申請できますか?専門家に頼むべきですか?

自分で申請できますし、商工会議所・商工会の無料支援も受けられます。ただし直近の採択率は51.1%で、計画の質が結果を分けます。数字の裏付け(売上見込み・資金繰り)の部分は、決算書を見慣れた税理士等に確認してもらうと計画の説得力が上がります。

Q6. ホームページ制作だけで申請できますか?

できません。ウェブサイト関連費は単独での申請が認められておらず、他の費目(広報費・機械装置等費など)との組み合わせが必要です。また第20回からウェブサイト関連費の上限は30万円(税込)に変わりました。HP制作を軸にするなら、チラシやネット広告など他の販路開拓の取り組みと組み合わせた計画にしてください。

Q7. 大阪の会社でなくても相談できますか?

できます。当事務所は大阪市淀川区(西中島)ですが、オンラインで全国対応しています。なお様式4の発行は、御社の地域を管轄する商工会議所・商工会で受けることになります。

まとめ|補助金は「もらう」より「活かす」設計で

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 制度の本質——販路開拓への投資の3分の2(上限50万円〜特例で最大250万円)が、後払いで補助される制度
  • 採択率の現実——直近2回はいずれも51.1%。「2人に1人は落ちる」前提で計画を組む
  • 第20回の要点——申請受付は2026年11月5日〜12月15日。ただし実質の締切は様式4の発行受付締切=12月4日
  • 特例の判断——インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円。特に賃上げは人件費の固定増とセットで冷静に
  • 最大の注意点——交付決定前の発注は補助対象外。そして補助金は後払い。資金繰り表の上で考える

持続化補助金は、正しく使えば小規模事業者にとって間違いなく強力な制度です。ただしそれは、「もらえるお金」としてではなく、もともとやるべきだった販路開拓の投資を、一歩深い計画に磨き上げるきっかけとして使ったときの話です。計画を書く過程で自社の数字と向き合った経験は、採択・不採択にかかわらず、その後の銀行融資でも経営判断でも効いてきます。これは、経験上、間違いない。

11月の受付開始まで、まだ時間があります。
この時間を、締切前の駆け込み作業に使うのか。それとも、数字の裏付けがある計画をじっくり組み立てる時間にするのか。半分が落ちる審査で明暗を分けるのは、案外この差です。

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この記事を書いた人

稲田光浩(いなだ みつひろ)

税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・freee認定アドバイザー

  • 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
  • CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
  • 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
  • 監事:社会医療法人 1法人
  • 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
  • プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計

〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605

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