記事更新日:2026/06/21
「先生、開業の融資、いくらの金利で借りられると思いますか?」
歯科の開業相談で、私はよくこう聞きます。
返ってくる答えは、たいてい曖昧です。
「2%台ですかね……」「銀行さんに言われた条件で」。
正直に書きます。
開業資金の融資条件は、事業計画書ひとつで大きく変わります。
私が開業支援に入ったケースでは、しっかり作り込んだ事業計画書を持って臨み、金利1.375%・返済期間20年・据え置き1年という条件を実現できたことがあります。
(※条件は申込先・時期・個別の状況により異なります。同様の条件を保証するものではありません)
同じ先生、同じ開業計画でも、「銀行に言われるまま借りる」のと「事業計画書で交渉する」のとでは、20年でまったく違う金額を払うことになる——これが、開業支援の現場で何度も見てきた現実です。
この記事では、歯科医院の開業を考えている先生に向けて、なぜ事業計画書が融資条件を左右するのか、何を盛り込むべきかを、財務に伴走してきた税理士の立場で解説します。
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この記事の目次
1. 歯科の開業資金は、なぜ事業計画書で条件が変わるのか?
結論から書きます。
金融機関は「先生の人柄」ではなく「返済できるという根拠」にお金を貸すからです。その根拠を示す唯一の書類が、事業計画書です。

歯科の開業資金は、テナント開業でも数千万円、土地・建物から揃えると1億円を超えることも珍しくありません。ユニット、レントゲン、CT、内装、運転資金——これだけの金額を、金融機関は「なんとなく良さそうな先生だから」では貸しません。
金融機関の担当者が見ているのは、たった一つです。
「この先生は、借りたお金を、計画通りに返せるのか」
これに「YES」と言える根拠を、数字で組み立てて見せる。それが事業計画書の役割です。
言葉を選ばずに書きます。事業計画書のない開業融資は、丸腰で交渉のテーブルに着くようなものです。
融資の本質は、歯科開業も一般の事業も同じです。融資は「数字の審査」ではなく「返済ストーリーの審査」——これは経験上、間違いない。
2. 金利1.375%・20年・据え置き1年は、何がすごいのか?
結論:この条件は「毎月の返済を軽くし、開業直後の一番苦しい時期を乗り切る」ために、ほぼ理想的な組み合わせだからです。

3つの要素を、分けて見ます。
① 金利1.375%|20年で効いてくる差
金利は、借入が大きいほど、期間が長いほど、効いてきます。
仮に5,000万円を20年で借りるとして、金利が1.375%と、たとえば2.5%とでは、総返済額で数百万円単位の差が生まれます。
「たった1%」と思うかもしれません。でも、20年という時間をかけると、その1%がユニット1台分、スタッフ一人分の人件費に化けます。これは、現場で何度も見てきた現実です。
② 返済期間20年|毎月の返済を薄くする
同じ借入でも、返済期間が長いほど毎月の返済額は小さくなります。
開業直後は、患者さんがまだ少なく、売上が読めない時期です。ここで毎月の返済が重いと、診療より資金繰りに神経をすり減らすことになります。
③ 据え置き1年|開業直後の「呼吸」を作る
据え置きとは、最初の一定期間、元金の返済を待ってもらい、利息だけを払う仕組みです。
開業1年目は、患者さんを増やし、スタッフを育て、診療を軌道に乗せる時期。ここで元金返済まで重なると、資金繰りが一気に苦しくなります。
据え置き1年は、この一番苦しい立ち上がりの時期に「呼吸」を作る仕組みです。私は、開業医にとってこれが何より大きいと考えています。
❌ やってはいけないこと
「金利だけ」を見て条件を判断すること。金利が少し低くても、返済期間が短く据え置きがなければ、開業直後の毎月の返済が重くのしかかります。金利・期間・据え置きは、3つセットで設計するもの。1つだけで良し悪しは決まりません。
3. 融資を勝ち取る事業計画書に、何を盛り込むべきか?
結論:「この立地で、この診療方針なら、患者数と売上はこう伸び、返済はこう進む」という一本のストーリーを、数字で裏付けることです。
金融機関に響く事業計画書には、外せない要素があります。
- 立地・商圏の分析:周辺人口、競合医院、患者層。なぜこの場所なのかの根拠
- 診療方針と強み:自費/保険のバランス、専門性、他院との差別化
- 患者数の積み上げ根拠:1日あたりの来院数を、月を追ってどう増やすか
- 収支計画:売上・人件費・材料費・家賃・返済を月次で並べる
- 資金繰り計画:開業から黒字化までの現金の動き
- 感応度(保守シナリオ):患者数が想定より少なくても返せるか
特に最後の「保守シナリオでも返せるか」。ここを示せるかどうかで、金融機関の評価は大きく変わります。
良い数字だけを並べた計画は、かえって信用されません。「うまくいかなかった場合の備え」まで描けている計画が、評価されます。
事業計画書の組み立て方そのものは、銀行が読みたい事業計画書|外せない5要素と作り方 に詳しくまとめています。歯科開業でも、土台の考え方は同じです。
❌ やってはいけないこと
業者やメーカーが用意した「ひな形」をそのまま提出すること。数字の根拠が薄い計画は、金融機関にすぐ見抜かれます。先生自身の言葉と、自院の数字で組み立てた計画でなければ、面談で突っ込まれたときに答えられません。
4. 「据え置き1年」が開業医にとってなぜ重要なのか?
結論:開業1年目は、売上が読めないのに固定費だけが確実に出ていく、一番資金が苦しい時期だからです。
開業直後の現実を、数字の流れで書きます。
開業した瞬間から、家賃・人件費・リース料・材料費は、患者さんが来ても来なくても出ていきます。一方、患者さんは初日から満員にはなりません。口コミやリピートで、少しずつ増えていく。
つまり、出ていくお金は最初から満額、入ってくるお金は後から増える。この時間差が、開業1年目の資金繰りを苦しくします。
ここに元金返済まで乗ってくると、手元の運転資金がみるみる減っていく。「患者さんは増えてきたのに、なぜか通帳が減る」——この状態に陥る開業医を、私は何度も見てきました。
据え置き1年があれば、この立ち上がり期に元金返済を待ってもらえる。診療を軌道に乗せることに集中できる。
これは、黒字なのに現金が苦しくなる構造そのものです。融資条件の設計と合わせて、資金繰りの余白を作ることが、開業初期の生命線になります。
5. 開業の事業計画は、誰と作るべきか?
結論:「歯科の開業と、開業後の財務の両方が分かる専門家」と作るのが理想です。
正直に書きます。
開業支援を名乗る相手はたくさんあります。でも、「開業させること」がゴールの相手と、「開業後に先生が困らないこと」がゴールの相手は、まったく別物です。
機材や内装の業者は、開業してもらうのが仕事です。悪い人たちではありませんが、その立場上、借入を大きくする方向に働くことがあります。
一方、開業後も先生の財務に伴走する立場の専門家は、「身の丈に合った借入か」「開業後に返済で苦しまないか」を一緒に考えます。事業計画書は、その対話の中で初めて、金融機関に響くものになります。
税理士をはじめとする財務の専門家がなぜ事業計画に関わるべきかは、税理士が財務コンサルとして伴走するメリット にもまとめています。
開業の事業計画づくりから、一緒に始めませんか
立地・収支・資金繰りまで、金融機関に響く事業計画書を一緒に作ります。開業を考え始めた段階でのご相談を歓迎します。
6. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 歯科の開業資金は、いくらくらい必要ですか?
開業形態によって大きく変わります。テナント開業で数千万円、土地・建物から揃えると1億円を超えることもあります。重要なのは総額そのものより、「その借入を、開業後の収支で無理なく返せるか」です。事業計画の中で、身の丈に合った資金規模を設計します。
Q2. 金利1.375%・20年・据え置き1年は、誰でも借りられますか?
いいえ。これは事業計画書を作り込んで臨んだ場合に実現できた条件の一例で、申込先・時期・先生の状況によって条件は変わります。同様の条件を保証するものではありません。ただし、しっかりした事業計画書を用意するかどうかで、引き出せる条件が変わるのは確かです。
Q3. 開業資金はどこから借りるのがよいですか?
日本政策金融公庫、民間の金融機関、医療系に強い金融機関など、複数の選択肢があります。それぞれ金利・期間・据え置きの条件が異なるため、1か所だけで決めず、比較して設計するのが得策です。どこにどう申し込むかの段取りも、事業計画とセットで考えます。
Q4. 事業計画書は自分で作れますか?
作れますが、金融機関に「響く」計画にするには、財務と融資の視点が必要です。特に収支計画・資金繰り・保守シナリオは、専門家と一緒に作ることで精度が上がります。先生は診療の専門家、数字の組み立ては専門家に任せる——この役割分担が現実的です。
Q5. 開業前のどのタイミングで相談すべきですか?
早ければ早いほどよい、というのが正直なところです。物件や機材を決めてから相談に来られる先生も多いのですが、本当は「開業を考え始めた段階」で資金計画から一緒に組むと、選択肢が広がります。まずは話を聞いてみる、で構いません。
Q6. 顧問契約しないと、開業相談はできませんか?
いいえ。45分の無料相談で、現状の計画と資金調達の方向性を整理するところから始められます。開業後の顧問契約が前提ではありません。まずはご相談ください。
7. まとめ|開業の成否は、開業前の準備で決まる
要点を整理します。
- 歯科の開業資金の融資条件は、事業計画書で大きく変わる
- 金利1.375%・20年・据え置き1年のような条件も、計画次第で実現の可能性がある(※条件は個別に異なる)
- 金利・期間・据え置きは3つセットで設計する
- 「据え置き1年」は、開業直後の一番苦しい時期に呼吸を作る
- 事業計画は開業後も伴走する専門家と作るのが理想
言い切ります。
開業の成否は、開業日ではなく、開業前の準備で半分決まります。
診療は先生の専門ですが、資金計画と事業計画は、数字の専門家と組んだ方が、確実に良い条件を引き出せます。開業を考え始めたら、物件を決める前に、一度資金計画から相談してみてください。
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Luxe Partners|成長を目指すクリニック・企業の財務伴走パートナー
開業時の事業計画・資金調達から、開業後の月次の数字・資金繰り・分院展開まで、一気通貫で伴走するのが Luxe Partners です。先生が診療に集中できる財務体制を、一緒に作ります。
この記事を書いた人
稲田光浩(いなだ みつひろ)
税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・freee認定アドバイザー
- 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
- CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
- 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
- 監事:社会医療法人 1法人
- 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
- プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計
〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605
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