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儲からない構造の
自己診断ガイド
儲からない会社の特徴は、社長の姿勢ではなく
決算書の「行」に出る。
直近3期分の決算書を横に置いて、30分で見立てる。
このガイドの使い方
「儲からない会社の特徴」を検索すると、「社長に戦略がない」「数字意識が弱い」といった話が並びます。読んでも、自社に当てはまるかどうか判定できません。判定できないものは直せません。
このガイドは違います。儲からない会社の特徴を、決算書のどの行に・どう出るかで10個に分解しました。各サインには「見る場所」「計算式」「チェック欄」を付けています。直近3期分の決算書を横に置いて、上から順に埋めてください。
① 損益計算書 ② 貸借対照表 ③ 販売費及び一般管理費の内訳 ④ 勘定科目内訳書(売掛金・棚卸資産・貸付金) ⑤ 借入金の返済予定表
※商品別・顧客別の売上と粗利は決算書に載りません。販売管理データか、顧問税理士に依頼して出してもらってください。
なぜ「3期分」なのか
1期の決算書は、その年の天気しか映しません。原材料高、大口受注、退職金の支払い。1年の数字には必ず言い訳がつきます。3期並べると、天気ではなく気候が見えます。儲からない会社の特徴は、気候のほうに出ます。
損益計算書だけでは半分しか見えない
10のサインのうち4つ(在庫・売掛金・役員貸付金・現預金)は貸借対照表の話です。「利益は出ているのに現金がない」と悩む社長の多くは、損益計算書しか見ていません。このガイドでは貸借対照表の行も指定しています。
判定のルール
| 判定 | 基準 |
|---|---|
| × 出ている | 3期連続で悪化している、または目安を明確に超えている |
| △ 兆候あり | 直近1〜2期で悪化している、または目安の近辺 |
| ○ 出ていない | 横ばい・改善、または目安の範囲内 |
迷ったら厳しめに。この診断は誰にも提出しません。正直につけるほど、打ち手が正確になります。目安の数値は業種で大きく異なるため、「自社の3期推移」を最優先してください。
チェック式(1/3)── 損益計算書に出るサイン
サイン1粗利率が3期連続で下がっている
| 見る場所 | 損益計算書「売上総利益」÷「売上高」 |
|---|---|
| 記入 | 前々期 ___% / 前期 ___% / 当期 ___% |
| 判定 | 3期連続で低下 → × / 1〜2期低下 → △ / 横ばい・上昇 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
1年で1ポイントなら「材料高」で済みます。3期で3ポイントなら構造です。年商8億円なら3ポイントで年2,400万円の粗利が消える計算です。
サイン2売上は伸びているのに、営業利益が伸びていない
| 見る場所 | 損益計算書「売上高」と「営業利益」の前期比伸び率 |
|---|---|
| 記入 | 売上伸び率 ___% / 営業利益伸び率 ___% |
| 判定 | 売上増かつ営業利益が横ばい・減少 → × / 営業利益の伸びが売上の伸びを下回る → △ / それ以外 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
「売れば売るほど利益にならない売り方」のサイン。値引き案件・特急案件・手間のかかる小口案件の増加が典型です。
サイン3売上の構成が分散していて、主力がない
| 見る場所 | 商品別・部門別の売上明細(販売管理データ)。上位3商品・サービスの売上構成比 |
|---|---|
| 記入 | 上位3つの合計 ___% / 各商品の粗利率を社長が言えるか(はい・いいえ) |
| 判定 | 上位3つで50%未満かつ商品別粗利率が言えない → × / どちらか一方 → △ / それ以外 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
サイン4固定費が、売上と関係なく増え続けている
| 見る場所 | 販売費及び一般管理費の内訳。人件費・地代家賃・リース料・保険料・通信費・システム利用料を3期並べる |
|---|---|
| 記入 | 販管費合計 ÷ 売上高:前々期 __%/前期 __%/当期 __% |
| 判定 | 3期連続で比率が上昇 → × / 1〜2期上昇 → △ / 横ばい・低下 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
費目ごとに「売上が落ちたら減らせるか」と自問してください。減らせないものが増え続けているなら固定費の硬直化です。
チェック式(2/3)── 貸借対照表に出るサイン
サイン5在庫が増え、回転が遅くなっている
| 見る場所 | 貸借対照表「棚卸資産(商品・製品・原材料・仕掛品)」÷ 月商(年商÷12) |
|---|---|
| 記入 | 前々期 __ヶ月分 / 前期 __ヶ月分 / 当期 __ヶ月分 |
| 判定 | 3期連続で増加 → × / 1〜2期増加 → △ / 横ばい・減少 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
在庫は損益計算書に出ません。利益が減らないまま、現金だけが減ります。月商2ヶ月分→3ヶ月分は、月商1ヶ月分の現金を倉庫に置き換えたのと同じです。
サイン6値決めが他人任せになっている
| 見る場所 | 勘定科目内訳書「売掛金」の上位先の構成比と、得意先別粗利率(販売管理データ) |
|---|---|
| 記入 | 上位1社の売上構成比 __% / 上位先の粗利率 __%(全社平均 __%) |
| 判定 | 上位1社が30%超かつその先の粗利率が全社平均を下回る → × / どちらか一方 → △ / それ以外 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
大口だから断れない→値上げを言えない→原価上昇を自社で吸収する。この連鎖がサイン1を生みます。
サイン7売掛金の回収が長くなっている
| 見る場所 | 貸借対照表「売掛金+受取手形」÷ 月商 |
|---|---|
| 記入 | 前々期 __ヶ月分 / 前期 __ヶ月分 / 当期 __ヶ月分 |
| 判定 | 3期連続で増加 → × / 1〜2期増加 → △ / 横ばい・減少 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
サイン8役員貸付金・仮払金・立替金が膨らんでいる
| 見る場所 | 貸借対照表の流動資産「役員貸付金」「仮払金」「立替金」「未収入金」 |
|---|---|
| 記入 | 合計額 ____万円 / 前期比(増・減) / 中身を説明できるか(はい・いいえ) |
| 判定 | 増加かつ中身を説明できない → × / どちらか一方 → △ / それ以外 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
儲け方の問題というより「会社と社長の財布が混ざっている」サイン。銀行は必ずこの行を見ます。
チェック式(3/3)── 返済と現金に出るサイン + 集計
サイン9減価償却前の利益で、借入の年間返済額を賄えていない
| 見る場所 | 損益計算書「経常利益」+「減価償却費」と、返済予定表の年間元金返済額 |
|---|---|
| 記入 | 経常利益+減価償却費 ____万円 / 年間元金返済額 ____万円 |
| 判定 | 返済額が上回る状態が2期以上 → × / 当期のみ上回る・ほぼ同額 → △ / 余裕がある → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
銀行の審査は「数字の審査」ではなく「返済ストーリーの審査」です。この行が崩れると、利益の問題は資金繰りの問題に姿を変えます。
サイン10現預金が月商1ヶ月分を割っている
| 見る場所 | 貸借対照表「現金及び預金」÷ 月商 |
|---|---|
| 記入 | 前々期 __ヶ月分 / 前期 __ヶ月分 / 当期 __ヶ月分 |
| 判定 | 1ヶ月分未満 → × / 1〜1.5ヶ月分 → △ / それ以上 → ○ [ × ・ △ ・ ○ ] |
上の9つの結果が、月末の通帳残高に現れます。現金の不足は、社長の脳の余白の不足です。余白がないと、構造を直す判断ができません。
集計 ── ×と△の数を数える
| サイン | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ×合計 | △合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 判定 |
| ×の数 | 状態と打ち手 |
|---|---|
| 0〜1個 | 構造は概ね健全です。△が3つ以上あるなら、×に落ちる前の予防が打ち手。次のテーマは「強みを1つ磨く」です。 |
| 2〜4個 | 多くの中小企業がこのゾーンです。×のうち最も金額が大きいもの、最も構造の根に近いものを1つ選んでください。次ページの処方箋と対応表で「どの構造が詰まっているか」を見立てます。 |
| 5個以上 | 「頑張っているのに利益が残らない」状態が構造として固定化している可能性があります。個別の対策の前に、どの構造から手をつけるかの優先順位づけが必要です。決算書2期分を持って、外部の目を入れることをおすすめします。 |
サイン別処方箋 ── 最初の一手と、やってはいけない一手
処方箋は「最初の一手」だけを書いています。全部を同時にやらないでください。×のうち1つを選び、その行だけを読んでください。
| サイン | 最初の一手 | やってはいけない一手 |
|---|---|---|
| 1 粗利率逓減 | 商品別・顧客別の粗利率を出し、「粗利率が落ちている商品・顧客」を特定する。全社平均では原因が見えない。 | 全商品一律の値上げ。顧客を失う商品と失わない商品を分けずに動くこと |
| 2 売上増・利益横ばい | 直近1年で増えた売上の中身を「粗利率別」に分ける。値引き・特急・小口案件が増えていないか確認する。 | 売上目標の引き上げ。利益にならない売上をさらに積むこと |
| 3 主力がない | 商品を「粗利額」の多い順に並べ、上位3つを主力と決める。下位の商品は「やめる候補」として一覧にする。 | 新商品の追加。分散をさらに広げること |
| 4 固定費硬直 | 費目ごとに「粗利を増やす費用」と「穴を塞ぐ費用」に分類する。後者を来期の見直し対象にする。 | 一律の経費削減。粗利を生む投資(教育・営業・仕組み化)まで削ること |
| 5 在庫回転悪化 | 在庫を「売れ筋」「定番」「死に筋」に分け、死に筋の金額を把握する。仕入を見込みではなく受注・実績ベースに切り替える。 | 在庫の一括処分だけで終わること。仕入の仕組みを変えないと翌年また増える |
| 6 値決め他人任せ | 「この値段でしか売らない」と言える商品を1つ決める。大口先の粗利率と交渉条件を社長が把握する。 | 大口先への唐突な値上げ通告。根拠(原価資料)なしに交渉に入ること |
| 7 回収長期化 | 得意先別の回収サイトを一覧にし、最も長い先から条件交渉の優先順位をつける。回収管理の担当を決める。 | 回収遅延を営業担当の裁量に任せたままにすること |
| 8 役員貸付金 | 金額と経緯を整理し、解消の道筋(年数)を決める。会社と社長の財布を分ける。 | 決算直前の帳尻合わせ。銀行はこの行を毎年見ている |
| 9 返済超過 | 借入の一覧(金利・残期間・返済額)を作り、返済額と利益のバランスを把握する。銀行に「返済ストーリー」を説明する準備をする。 | 返すために新しく借りる、を説明なしに繰り返すこと |
| 10 現預金不足 | 直近3ヶ月の通帳残高と支払予定を並べる。上の9つのうち「最も現金を奪っているサイン」を1つ特定する。 | 10のサインを全部いっぺんに直そうとすること |
10のサイン × 5つの構造 対応表 ── 原因はどの構造にあるか
10のサインは「結果」です。原因は、商品 × 顧客 × 販売 × 事業 × 組織の5つの構造のどこかにあります。掛け算なので、1つに×があると他がいくら強くても利益は漏れます。サインを見つけたら、次に「どの構造が詰まっているか」を見立ててください。ここまでできて、初めて打ち手が決まります。
| 構造 | ひと言 | 詰まっているサイン |
|---|---|---|
| 商品 | 何を価値として売るか | 安いから選ばれる/主力商品が古い/値上げできない |
| 顧客 | 誰を顧客にするか | 誰でも客にしている/大口1社に依存/手間客が多い |
| 販売 | どう選ばれ、買われるか | 集客が経営者頼み/新規が来ない/営業が属人的 |
| 事業 | どう利益を生むか | 売上は伸びても利益が増えない/人を増やさないと売上が伸びない |
| 組織 | 誰がどう動くか | 社員が指示待ち/幹部が育たない/経営者が現場から抜けられない |
| 決算書のサイン | 主に詰まっている構造 | 構造側で起きていること |
|---|---|---|
| 1 粗利率の逓減 | 商品・顧客 | 値上げの主導権がない/主力商品が古い/安さで選ばれている |
| 2 売上増・利益横ばい | 事業・販売 | 儲からない取引をやめられない/人を増やさないと売上が伸びない |
| 3 主力がない | 商品・事業 | 勝ち筋への集中ができていない/何でも屋 |
| 4 固定費の硬直化 | 組織・事業 | 社長が現場から抜けられず人で解決している/仕組み化の投資がない |
| 5 在庫回転の悪化 | 商品・販売 | 売れ筋と死に筋を分けていない/見込みで仕入れている |
| 6 値決め他人任せ | 顧客・商品 | 大口1社依存/値上げに耐えない顧客層/代替不能な商品がない |
| 7 回収の長期化 | 顧客・組織 | 取引条件を交渉できる関係がない/回収を管理する担当・ルールがない |
| 8 役員貸付金 | 組織 | ガラス張り経営ができていない/数字を社員と共有していない |
| 9 返済超過 | 事業 | 利益を生まない投資・事業を抱えている/継続収入の柱がない |
| 10 現預金不足 | 5構造の結果 | 上の9つの合計。「最大の×」を特定する局面 |
自社の見立て(記入欄)
| 構造 | 商品 | 顧客 | 販売 | 事業 | 組織 |
|---|---|---|---|---|---|
| 該当サインの数 |
まず直す構造(1つ):
構造を直した会社の決算書に、何が起きるか
決算書は「粗利率 → 固定費率 → 現預金」の順番で変わります。売上は最後です。場合によっては一度減ります。
| 時期 | 決算書の変化 |
|---|---|
| 1期目 | 「やめる」「値決めを変える」の結果、売上は横ばいか微減、粗利率は上がる。社長には少し怖い決算。ここで踏みとどまれるかが次を決める |
| 2期目以降 | 社長が穴を塞ぐ仕事から抜け、固定費を「人」から「仕組み」へ切り替える余裕が生まれる。売上に対する固定費の割合が下がり始める |
| その後 | 在庫・売掛金が適正化し、返済が利益の範囲に収まり、現預金が月商1ヶ月分を超えて2ヶ月分へ。ここで初めて「数字で売上を伸ばす」段階に入る |
※複数社の経営会議での観察を一般化した傾向であり、個別の会社で同じ変化を保証するものではありません。速度は業種・借入状況・意思決定の速さで大きく異なります。
次の一歩
このガイドの集計結果(×の数)と決算書2期分をお持ちください。
「10のサインのどれが出ていて、5つの構造のどこが詰まっていて、利益をいくら削っているか」を数字でお示しします。売るより先に、診断です。
お電話:06-7777-1762(平日9:00〜18:00)
LINE:https://line.me/R/ti/p/@325iobwg(ID:@325iobwg)
② 儲け方の設計ワークショップ──この診断を出発点に、「最大の×を1つ減らす」打ち手を5年の設計図と30日のアクションに落とし込むワークショップを開いています。×が5個以上だった方、どの構造から手をつけるべきか迷った方は、無料相談の際にお声がけください。https://inada-tax.com/moukekata-workshop/
③ 関連ページ──頑張っているのに利益が残らないのはなぜか:https://inada-tax.com/rieki-nokoranai/ / 無料診断ツール・資料室:https://inada-tax.com/tools/
監修
稲田 光浩(いなだ みつひろ)/税理士(登録番号135413)
税理士業界19年・税理士登録8年目。東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役、社会医療法人の監事を務め、複数社の経営会議・取締役会に外部の立場で継続参加。クラウド会計(freee認定アドバイザー)と社外CFOサービスで、中小企業の「儲かる構造づくり」を支援している。
稲田光浩税理士事務所
〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605(新大阪駅 徒歩圏)
TEL:06-7777-1762|Web:https://inada-tax.com
本資料の数値の目安は一般的な説明であり、業種・規模により異なります。無断転載・複製を禁じます。© 稲田光浩税理士事務所
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