ネットで拾ったテンプレートを埋めて、来期は売上V字回復、という数字を並べてみた。けれど、これで本当に通るのか——正直、自分でも自信が持てない。
その不安は、正しい不安です。
言葉を選ばずに書きます。中小企業の経営改善計画書は、書き方の「型」を埋めただけでは、まず通りません。銀行の担当者が計画書のどこを見て、どの数字で鉛筆を止めるか——そこを先回りできていない計画書は、体裁が整っていても、稟議の途中で静かに止まります。
私は税理士として、認定経営革新等支援機関の立場で、社長と一緒に経営改善計画書を作り、それを持って金融機関の面談に何度も同席してきました。東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役、社会医療法人の監事も務め、複数社の経営会議に入っています。だからこそ「審査する側が、その数字をどう疑うか」を、社長側から先回りして書くお手伝いができます。
この記事では、金融支援(リスケ・条件変更・追加融資)を受けるための経営改善計画書に絞って、銀行の担当者が真っ先に疑う数字と、その潰し方を正直に書きます。これから普通に新規融資を取りに行くための計画書は、別記事の銀行に伝わる事業計画書の書き方のほうが合っています。守りの局面か、攻めの局面か。まずそこを間違えないでください。
その計画書、銀行に出す前に一度見せてください
決算書と作りかけの計画書を見ながら、45分の無料相談で「この数字は担当者に疑われる」「ここは根拠を足せば通る」を具体的に指摘します。認定経営革新等支援機関として、計画の策定から銀行提出、月次で回す運用まで伴走します。無料の財務健康診断として、資金繰りの現在地の見立てもお伝えします。
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1. なぜ、あなたの経営改善計画書は担当者に「これは通せない」と言われるのか?
結論から書きます。担当者は、あなたの計画書を「読者」として読んでいません。「稟議で上を説得できる材料か」という一点で読んでいます。
ここが、多くの社長が誤解しているポイントです。
目の前の担当者が「いいですね」と言ってくれても、その人に決定権はほとんどありません。担当者は、あなたの計画書を持って支店内の会議に上げ、支店長や本部の審査部を説得しなければならない。つまりあなたが本当に相手にしているのは、目の前の担当者ではなく、その背後にいる「一度も会わない審査部」です。
審査部は、あなたの人柄も、社員への想いも知りません。彼らが見るのは、紙の上の数字と、その数字が「実現可能かどうか」だけです。
だから、担当者が計画書を突き返すとき、多くの場合こう言います。「社長、想いは分かるんですが、これだと上を通せないんです」。この「上を通せない」という言葉の裏にあるのは、たいてい次の3つです。
- 売上計画が甘い——なぜその数字になるのか、根拠が説明できない
- 返済原資が見えない——利益が出る前提でも、その利益で借入を返せるのかが読めない
- 実現可能性が低い——絵に描いた餅で、去年もその前も同じことを言っていた
私が銀行員との面談に同席していて、審査側が最初に鉛筆を止めるのは、決まってこの3か所です。逆に言えば、この3か所を社長側から先回りして潰しておけば、計画書の通る確率は大きく変わります。順番に見ていきます。
2. 銀行の担当者が真っ先に疑う「売上計画」のどこを、どう潰すのか?
売上計画で疑われるのは、ただ一点。「その数字の根拠は何ですか」に答えられるかどうかです。私が計画書のレビューで最初に赤を入れるのも、ほぼここです。
経営改善計画書でいちばんよく見るのが、こういう売上計画です。今期3億円、来期3.6億円、再来期4.3億円——きれいな右肩上がりの直線。前年比120%が3年並んでいる。
審査側は、この手のグラフを一秒で見抜きます。
なぜなら、業績が悪化してリスケをお願いしている会社が、なぜ来期からいきなり2割も売上を伸ばせるのか、その説明がどこにもないからです。「頑張ります」は根拠ではありません。むしろ、根拠のないV字回復のグラフは「この社長は数字が分かっていない」という逆の心証を与えます。
ではどう書くか。売上を「積み上げ」で語るしかありません。
ざっくりでいいので、売上を「単価×数量」あるいは「客数×客単価×リピート」に分解する。そして、その内訳の一つひとつに、今日から打てる具体的な手を紐づける。既存の取引先ごとに来期の見込みを積み上げ、新規はあくまで「上乗せ分」として控えめに置く。この積み上げの合計として売上計画を出すと、審査側は「なるほど、この数字は根拠がある」と読めるようになります。
経験上、間違いないのは「厳しめに置いた計画のほうが、結果的に通る」ということです。金融庁が金融機関に示している審査の物差しでも、計画は「売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること」が求められています(金融庁・貸出条件緩和債権関係Q&A)。強気の数字は、社長の希望であって、審査側にとってはリスクでしかないのです。
3. 「返済原資」を語れていない計画書が、一発で落ちるのはなぜか?
返済原資とは、平たく言えば「その計画通りに進んだとき、借入を返すお金がどこから、いくら出てくるのか」です。ここが語れていない計画書は、どれだけ売上計画が精緻でも落ちます。
ここで多くの社長がつまずくのが、「利益」と「返せるお金」を混同することです。
利益(損益計算書の数字)と、実際に手元に残る現金(キャッシュフロー)は、別物です。帳簿上は黒字でも、売掛金の回収が遅く、在庫に現金が寝ていれば、返済に回せる現金は残りません。審査側が本当に見たいのは、損益計算書の一番下の利益ではなく、そこに減価償却費を足し戻した「営業キャッシュフロー」——本業で年間いくらの現金を生めるか、です。
そして、その営業キャッシュフローで、借入をあと何年で返せるかを見る。これを債務償還年数(有利子負債を年間の返済原資で割った年数。銀行がその会社の返済力を測る代表的な物差し)と呼びます。この年数が長すぎると、審査側は「この会社は、今のペースでは借入を返しきれない」と判断します。
製造業や卸売業の社長に、私が計画書づくりで最初にお願いするのはここです。私自身、複数社の経営会議で毎月この数字を追いかけていますが、本業の現金創出力を裸で直視するところからしか、立て直しは始まりません。売上のV字回復を描く前に、まず「うちの本業は、年間いくらの現金を生む力があるのか」を裸で出す。運転資金がどれだけ在庫と売掛金に縛られているかを直視する。卸売業なら、仕入が先行して掛売りの回収が後になる、そのタイムラグに現金が消えている。そこを直さないまま売上だけ伸ばす計画は、伸ばすほど資金繰りが苦しくなる「増収貧乏」の計画になってしまいます。
銀行融資は、突きつめれば「数字の審査」ではなく「返済ストーリーの審査」です。いくら儲かるかではなく、どうやって返すか。その一本の筋を、営業キャッシュフローの言葉で語れているか。ここが、通る計画書と落ちる計画書を分ける背骨です。
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4. 数字を良く見せる「粉飾まがいの計画」が、逆に信用を壊すのはなぜか?
結論を先に書きます。数字を良く見せようとした細工は、審査側にほぼ確実に見抜かれ、その一発で社長個人の信用まで失います。ここは、私が現場でいちばん強く止める部分です。
計画書を通したい一心で、社長がやりがちな「良く見せる工夫」があります。けれど、それは工夫ではなく、自分の首を絞める行為です。
❌ 経営改善計画書でやってはいけないこと
- 役員報酬を計画上だけゼロに近づけて利益を出す——生活が回らない数字は「絵に描いた餅」だと即バレる。逆に「この社長は現実を見ていない」と評価が下がる
- 実現のあてがない新規事業やシナジーを、売上の柱に据える——「新商品で1億円」の類は、根拠を問われた瞬間に崩れる
- 在庫評価や売掛金を甘く見積もって、資産を膨らませる——審査側は不良在庫・回収不能債権を疑ってかかる。膨らませた資産は、むしろ疑いの入口になる
- 費用を過小に、売上を過大に置いて、無理やり黒字化する——「十分に厳しい想定」という審査の物差しの真逆。一番やってはいけない
計画は、良く見せるほど通らなくなります。審査側が信じるのは、きれいな計画ではなく「厳しめでも、この会社なら実行できそうだ」と思える計画です。
経営改善計画書に求められているのは、反省文でも、決意表明でもありません。「実現可能性」——その一語に尽きます。多少みっともなくても、達成できる数字を並べ、実際に達成していく。その積み重ねだけが、審査側の信頼を取り戻す唯一の道です。良く見せた計画で一度通しても、翌期にその計画を下回れば、次はもう誰も信じてくれません。
5. 銀行はどこまでの改善スピードを求めるのか?——実抜計画と合実計画
結論から言うと、中小企業に求められるのは「概ね5年以内に、正常な会社に戻る道筋」です。ここには、社長がほとんど知らない審査の裏側の物差しがあります。
金融機関は、リスケなどに応じた融資を「貸出条件緩和債権」——いわゆる不良債権の一歩手前——として扱います。銀行にとっては、この扱いになる融資を増やしたくない。だから、一定の条件を満たす経営改善計画があれば、その融資を不良債権扱いから外せる、というルールが金融庁から示されています。この物差しが2つあります。
- 実抜計画(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画)——「概ね3年」で正常先に戻ることが求められる、主に規模の大きい企業向けの厳しい基準
- 合実計画(合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画)——「計画期間が概ね5年以内(5〜10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む)」で、計画終了後に正常先となることを求める、中小企業向けの基準
いずれも金融庁の貸出条件緩和債権関係Q&Aで示されている考え方です(要件の適用は個別の判断を伴うため、詳細は取引金融機関にご確認ください)。
この物差しを社長が知っておくと、計画書の作り方が変わります。私が面談に同席していても、この5年の着地点を意識して組まれた計画は、審査側の反応が明らかに違います。多くの中小企業が土俵にするのは合実計画のほう。つまり、あなたの計画書は「概ね5年で正常な会社に戻る」という着地点から逆算して組むのが筋になります。10年かけてゆっくり、では審査の土俵に乗りません。かといって、来期いきなりV字、も実現可能性を欠く。5年という期間の中で、無理のない、けれど着実な回復曲線を描く。この「厳しさと実現可能性の両立」が、計画書の勘どころです。
ここまで踏み込んだ計画は、社長ひとりで作るのは正直きつい。次の章で、自作すべき会社と、専門家と作るべき会社の線引きを、合わない場合も含めて正直に書きます。
6. どんな会社が自作すべきで、どんな会社は専門家と作るべきか?
先に、専門家に頼まなくていいケースから正直に書きます。私の商売の話をする前に、これを言っておきたい。
売上規模が小さく、借入も数百万円程度で、リスケではなく「返済を少し猶予してほしい」レベルの相談なら、日本政策金融公庫や中小企業庁が公開している計画書のひな型を使って、社長自身で書けます。中小企業の経営計画の作り方の考え方をベースに、この記事で書いた3つの疑われポイントを自分で潰せるなら、外注する必要はありません。
一方で、専門家と組んだほうがいいのは、こういう会社です。
- 借入が複数の銀行にまたがっている——各行の足並みをそろえる調整は、社長ひとりでは荷が重い
- 年商5億円以上の製造・卸で、在庫と運転資金が複雑——キャッシュフローの構造を正確に描くのに専門的な目がいる
- 経営者保証を外す交渉も同時に進めたい——計画の作り込みと金融機関交渉がセットになる
ただし、専門家に頼むときの最大の落とし穴を、正直に書きます。丸投げは逆効果です。
コンサルに丸投げして作った、社長本人が中身を説明できない計画書——これは審査の面談で一発で見抜かれます。担当者が「この数字の根拠は?」と聞いたとき、社長が「専門家が作ったので…」と口ごもった瞬間、その計画書は死にます。作るのは専門家でいい。けれど、語るのは社長本人でなければならない。私が伴走するときも、計画は一緒に作りますが、銀行の前で数字を語るのは必ず社長ご本人にお願いしています。
なお、こうした計画づくりには国の支援制度もあります。まだ危機になっていない段階なら国が費用の2/3を補助する早期経営改善計画(ポスコロ事業)、すでにリスケなど金融支援が必要な段階なら本格版の405事業。この2つの制度の使い分けは、早期経営改善計画の記事で詳しく整理しています。認定経営革新等支援機関として、どちらの制度を使うべきかの見立てからお手伝いできます。
7. よくあるご質問(FAQ)
Q. リスケをお願いする経営改善計画書は、どれくらいの分量が必要ですか?
借入の規模や金融機関の数によりますが、数枚のサマリーと数値計画(損益・資金繰り・返済計画)で足りるケースから、事業の沿革・財務分析・具体的施策まで含めて十数ページになるケースまで幅があります。大切なのは枚数ではなく、この記事で書いた「売上の根拠」「返済原資」「実現可能性」の3点が語れているかです。メインバンクに指定のフォーマットがあれば、まずそれに従ってください。
Q. 赤字が続いていても、経営改善計画書で融資は通りますか?
赤字それ自体が理由で門前払いになるわけではありません。審査側が見るのは「赤字の原因が特定できているか」と「その原因を潰す打ち手で、いつ黒字化し、いつ返済が正常に戻るか」の筋道です。原因と回復の道筋を数字で語れていれば、赤字でも土俵に乗ります。逆に、黒字計画でも根拠がなければ通りません。
Q. 一度出した計画を達成できなかった場合、どうなりますか?
計画未達がただちに融資引き上げにつながるわけではありませんが、放置は禁物です。未達になったら、なぜズレたのかを説明し、計画を実態に合わせて見直す。この「モニタリングと軌道修正」を続けている会社は、審査側の信頼を保てます。計画は出して終わりではなく、毎月回して初めて意味を持ちます。
Q. 顧問税理士がいますが、経営改善計画だけ別の専門家に頼めますか?
頼めます。顧問契約はそのままに、経営改善計画の策定や銀行交渉の伴走だけを別の認定経営革新等支援機関に依頼することは、実務上まったく問題ありません。税務申告と財務戦略は役割が異なります。相談先を変えるのではなく、増やすという考え方が現実的です。
Q. 経営改善計画書と事業計画書は、何が違うのですか?
ざっくり言えば、経営改善計画書は「業績が悪化した会社が、金融支援を受けて立て直すための守りの計画」、事業計画書は「これから前に進むために新規融資を取りに行く攻めの計画」です。求められる中身も、審査で見られる点も違います。攻めの局面なら事業計画書の書き方を参照してください。
Q. 大阪以外の会社でも相談できますか?
できます。当事務所は大阪市淀川区ですが、オンラインで全国対応しています。決算書と作りかけの計画書を事前に共有いただければ、初回からオンラインで具体的な議論が可能です。
8. まとめ|計画書は「反省文」ではなく「返済ストーリー」
経営改善計画書の書き方について、要点を整理します。
- 相手は目の前の担当者ではなく、背後の審査部——「稟議で上を通せる材料か」で計画書は読まれる
- 売上は積み上げで、厳しめに——根拠のないV字回復は逆効果。金融庁も「十分に厳しい想定」を求めている
- 返済原資を営業キャッシュフローで語る——利益ではなく、本業が生む現金で借入を返せるか
- 良く見せる細工は信用を壊す——実現可能性がすべて。多少みっともなくても達成できる数字を
- 中小企業は「概ね5年で正常先」から逆算——合実計画の物差しを知って組む
- 作るのは専門家でいい、語るのは社長本人——丸投げは面談で一発で見抜かれる
資金繰りの不安は、頭の片隅に居座り続けます。それを抱えたままでは、社長の頭は本来やるべき「攻めの意思決定」に使えません。数字の不安を計画書という紙の上で見える化し、返済のストーリーを一本の筋で語れるようにする。それだけで、社長の脳の余白が戻ってきます。そしてその余白こそが、守りを固めたあと、もう一度数字で売上を伸ばすための土台になります。
来期もまた、テンプレートの空欄と通帳の残高を交互ににらみながら、通るかどうか分からない計画書を一人で抱え込むのか。それとも、審査側が何を疑うかを先回りした計画書を手に、銀行と対等に向き合うのか。その分かれ目は、会社の規模でも、いまの赤字額でもなく、「審査する側の目線」を一度でも借りられるかどうかです。
その計画書が銀行に通るか、審査側の目で確かめませんか
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経営改善計画の策定と月次運用、資金繰り設計、銀行との交渉、経営者保証の見直し——お金まわりの意思決定を、税理士業務の枠を超えて一気通貫で伴走するのが Luxe Partners です。計画を作って終わらせず、毎月の経営会議で数字が回り、正常先へ戻るところまで、社外CFOとして並走します。
この記事を書いた人
稲田光浩(いなだ みつひろ)
税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・認定経営革新等支援機関・freee認定アドバイザー
- 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
- CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
- 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
- 監事:社会医療法人 1法人
- 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
- プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計
〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605



