経営者保証を外す財務要件とは?銀行がどの決算数値で判定するかを、認定支援機関の税理士が正直に解説

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会社の借入に、社長個人の連帯保証がついている。もし会社が返せなくなれば、自宅も、家族の暮らしも巻き込まれる——先代から事業を引き継いだとき、その判子の重さに、一度は胃が縮む思いをしていないでしょうか。

父はこの保証を、当たり前のように背負ってきた。
自分の代でも、それを続けるしかないと思っている。
でも本当は、外せるものなら外したい。

正直に書きます。ここ数年で、経営者保証をめぐる金融機関の対応は、社長が思っている以上に変わりました。私は税理士であり、国が認定する認定経営革新等支援機関として、社長と一緒に決算を整え、金融機関に融資や保証の交渉をしてきました。銀行の審査がどの数字を見て判断しているかを、外側からではなく、資料を作って通す側から見てきた立場です。その経験から言えるのは、「経営者保証を外せるかどうか」は、社長の気合いでも銀行との人間関係でもなく、決算書のいくつかの数字でほぼ決まるということです。

この記事では、経営者保証に関するガイドラインの3要件を、銀行が実際に「決算書のどの数字で判定しているか」まで落として解説します。そのうえで、2024年に始まった「保証料を上乗せして外す」新しい制度、そして——ここがいちばん大事ですが——外せる会社と外せない会社を分ける財務のラインはどこかを、審査側の目線で正直に書きます。

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1. なぜ今「経営者保証は外せる」時代になったのか?

結論から書きます。この2〜3年で、国が本気で「経営者保証に頼らない融資」へ舵を切ったからです。社長の会社が特別に強くなったからではありません。制度そのものの潮目が変わりました。

まず土台になっているのが、2013年(平成25年)12月に策定された「経営者保証に関するガイドライン」です。全国銀行協会と日本商工会議所を事務局とする研究会がまとめたもので、一定の要件を満たす会社なら、経営者保証なしで融資を受けたり、既存の保証を外したりできる——その道筋を示しました。法的な強制力はありませんが、多くの金融機関が融資判断の拠り所にしています。

ここに大きなアクセルがかかったのが、2022年12月に国(金融庁・財務省・中小企業庁)が打ち出した「経営者保証改革プログラム」です。これを受けて金融庁の監督指針が改正され、2023年4月から民間金融機関には説明義務が課されました。融資に経営者保証を求めるなら、銀行は社長に対して次の2点を説明しなければならなくなったのです。

① どの部分が十分でないために、保証契約が必要なのか

② どこをどう改善すれば、保証契約の変更・解除の可能性があるのか

この2つ目が、社長にとって効きます。「うちは何を直せば保証を外せるんですか」と、銀行に正面から聞いていい時代になったということです。以前なら「保証は当然のもの」で話が終わっていた。今は、銀行側に説明する義務がある。この差は大きい。

実際、金融庁が公表している実績では、2023年4月〜9月の新規融資に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合は46.7%まで上がっています(前年同期は33.8%)。新規融資のほぼ半分が、もう社長の個人保証を取っていないということです。これは、私が現場で肌で感じている変化とも一致します。

ただし——ここで冷静になってほしい。潮目が変わったからといって、「言えば外れる」わけではありません。銀行が説明義務を負ったのは事実ですが、外すかどうかの最終判断は、あくまで金融機関にあります。そして彼らが判断の根拠にするのは、社長の熱意ではなく決算書の数字です。次の章が、この記事の核心です。

2. 銀行は「3要件」を、決算書のどの数字で判定しているのか?

ガイドラインが求める要件は、大きく3つです。教科書的にはこう並びます——①法人と経営者の資産の分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性(適時適切な情報開示)。ただ、この3つを言葉で覚えても意味がありません。大事なのは、銀行員がこの3要件を、決算書と勘定科目内訳書のどの数字で見ているかです。審査側の目線で、1つずつ「見られている数字」に翻訳します。

数字に落とす前に、全体像を1枚で置いておきます。そのうえで各要件を解説します。

要件①「法人と経営者の分離」——見られているのは役員貸付金と仮払金

まず銀行が真っ先に開くのが、勘定科目内訳書の役員貸付金・仮払金・立替金です。ここに社長個人への貸付が残っていると、それだけで「この会社と社長の財布は一体だ」と判定されます。会社の金と社長個人の金の境目が曖昧な会社から、個人保証を外すことはできません。理屈は単純で、公私が混ざっている以上、会社だけを見て与信できないからです。

具体的に見られるのは、こういう数字です。

  • 役員貸付金・仮払金がゼロか——残っているなら、まずこれを解消する。役員報酬からの返済計画で消していくのが王道です
  • 社長個人所有の不動産を会社に貸している場合、その地代・家賃が相場の範囲内か——相場から大きく外れた金額は「利益移転」と見られます
  • 社長の生活費・私的経費が経費に紛れていないか——交際費や車両費の中身まで見られることがあります

言葉を選ばずに書きます。中小企業でいちばん多い”外せない理由”が、この役員貸付金です。本業は黒字で財務も悪くないのに、社長への貸付が数百万〜数千万残っているせいで、保証の交渉が入り口で止まる。これは本当に多い。逆に言えば、ここを計画的に消すだけで、外す土俵に乗れる会社は少なくありません。

要件②「財務基盤の強化」——見られているのは純資産・債務償還年数・EBITDA倍率

次が本丸です。会社の資産だけで借入を返していける体力があるか。銀行は主に3つの数字で見ます。

1つ目は、純資産(自己資本)がプラスか。債務超過——つまり純資産がマイナスの会社は、この時点で保証を外す議論に乗りません。まず債務超過を解消することが、すべての出発点です。

2つ目は、債務償還年数です。これは「有利子負債÷(税引後利益+減価償却費)」で計算する、借入を今の利益で何年で返せるかを表す指標です。銀行員が債務者の体力を測るときの、最も基本的なものさしの一つです。私の経験では、ここが10年を超えてくると、審査側の見る目が明確に厳しくなります。10年以内、できれば7年以内が、保証を外す交渉では一つの目安になります。(債務償還年数の詳しい読み方と改善は債務償還年数の計算と改善で書いています)

3つ目は、EBITDA有利子負債倍率です。これは「(借入金・社債−現預金)÷(営業利益+減価償却費)」で計算します。手元の現預金を差し引いた実質的な借入を、本業のキャッシュ稼得力で何年分抱えているかを見る指標です。後で触れる「保証料を上乗せして外す制度」では、この倍率が15倍以内であることが要件の一つになっています。

言葉だけだとイメージしにくいので、制度説明のためのモデルケースで計算してみます(実在の顧問先の数字ではなく、あくまで試算です)。

項目(モデルケース) 金額
借入金・社債 1億円
現預金 2,000万円
営業利益 1,000万円
減価償却費 500万円
EBITDA有利子負債倍率 (1億円−2,000万円)÷(1,000万円+500万円)≒ 5.3倍

※制度説明のためのモデルケース試算。実在の顧問先の数字ではありません。指標の定義・要件は執筆時点のもので、申込前に信用保証協会・金融機関に要確認。

このモデルケースなら約5.3倍で、15倍の要件は十分クリアします。15倍という基準は、正直かなり緩い設定です。本業でまともに利益が出ていれば、ほとんどの会社が満たせる水準。逆にここに引っかかる会社は、現預金が薄いか、本業のキャッシュ稼得力が相当弱っているということで、そちらの立て直しが先になります。

要件③「経営の透明性」——見られているのは月次の開示習慣

3つ目は、決算書そのものではなく「決算後の情報を、銀行にどれだけ開示しているか」です。年に一度、決算書を渡して終わりの会社と、毎月の試算表・資金繰り表を自ら出している会社とでは、銀行の信頼がまったく違います。

私が現場で見ているのは、ここが「返済ストーリーの審査」の分かれ目になっているということです。銀行融資は、過去の決算書の点数だけを見る”数字の審査”ではありません。「この会社は来期どう稼いで、どう返すのか」という筋書き——つまり返済ストーリーを、社長が自分の言葉で語り、数字で裏づけられるか。経営者保証を外す交渉では、この透明性が、要件①②の数字と同じくらい効きます。

具体的には、こういう習慣があるかを見られています。

  • 月次試算表を、翌月のうちに固めて金融機関に共有できているか
  • 資金繰り表を作り、いつ現金が薄くなるかを事前に説明できているか
  • 事業計画・業績見通しを、進捗も含めて開示できているか

経験上、間違いないのは、この開示習慣がある会社は、要件①②の数字が多少弱くても、銀行が保証解除に前向きになりやすいということです。逆に数字は良くても「決算書以外、何も出してこない」会社は、外す話が進みにくい。透明性は、数字の弱さを補う”信頼の担保”になります。

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3. 「保証料を上乗せして外す」制度は、うちにも使えるのか?

結論から書きます。信用保証協会の保証付き融資なら、2024年3月に始まった「事業者選択型経営者保証非提供制度」という選択肢があります。一定の財務要件を満たせば、保証料を少し上乗せする代わりに、経営者保証を提供しないことを社長側から選べる制度です。プロパー融資(保証協会を通さない銀行直接の融資)とは別の、保証協会ルートの話です。

要件は、前章の3要件が具体的な数字に落とし込まれたものだと思ってください。代表的なものを挙げます。

  • 過去2年間、決算書等を金融機関の求めに応じて提出していること(=透明性)
  • 直近決算で代表者への貸付金等がなく、役員報酬が社会通念上適切な範囲であること(=法人個人の分離)
  • 資産超過であること(純資産がプラス)、または2期連続で減価償却前の経常利益が黒字であること(=財務基盤)
  • EBITDA有利子負債倍率が15倍以内であること(=財務基盤)
  • 申込時点で、返済緩和(リスケ)をしている借入がないこと

上乗せされる保証料率は、資産超過と2期連続黒字の両方を満たせば年0.25%、どちらか一方または創業2年以内なら年0.45%が上乗せの目安です(制度・保証協会により異なる場合があります)。保証限度額は2億8,000万円(組合等は4億8,000万円)とされています。

この上乗せをどう捉えるか。私の体感では、「数十万円の保証料を追加で払うことで、自宅と家族を借入のリスクから切り離せる」なら、多くの社長にとって安い保険料です。借入1億円に0.25%を単純に乗せれば年25万円。もちろん残高に応じて計算は変わりますが、桁としてはその程度。個人保証を背負い続ける精神的な重さと天秤にかけたとき、どちらを取るかは社長の価値観です。

ただし正直に付け加えると、この制度は信用保証協会の保証付き融資が対象です。すでにプロパー融資が中心の会社や、保証を外したい対象がプロパー借入なら、この制度ではなく、ガイドラインに沿った金融機関との個別交渉になります。プロパー融資への3ステップ信用保証協会の保証料を最小化する4つの設計も、あわせて読むと全体像がつかめます。

4. 外せる会社と外せない会社の”財務ライン”は、どこで分かれるのか?

ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。世の中の記事は「3要件を満たしましょう」で終わりますが、「うちは今どっち側なのか」が知りたいはずです。審査側の目線で、外せる側と外せない側の財務ラインを、正直に線引きします。

「今は外せない」側に多い、5つのパターン

私が決算書を見て「これは今のままでは厳しい」と判断するのは、だいたい次のどれかに当てはまるときです。

  • 債務超過——純資産がマイナス。これは入り口で議論になりません。まず解消が先です
  • 役員貸付金・仮払金が残っている——本業が良くても、公私混同と見られてここで止まります
  • 債務償還年数が10年を大きく超えている——今の利益では借入が重すぎる、と判定されます
  • 直近でリスケ(返済条件変更)をしている——返済を緩めている最中に保証を外す話は、まず通りません
  • 決算書以外、銀行に何も出していない——透明性の要件を満たせていません

逆に、純資産がプラスで、役員貸付金がなく、債務償還年数が10年以内(できれば7年以内)、リスケもしておらず、月次を銀行に開示できている——ここが揃えば、外せる側の土俵に立っています。あとは金融機関との個別交渉です。

大事なのは、「今は外せない」は「一生外せない」ではないということです。役員貸付金は数年かけて役員報酬から返済していけば消えます。債務超過や債務償還年数は、利益を積んで純資産を厚くしていけば改善します。月次開示は、来月から始めればいい。外せない理由の多くは、時間と設計で外せる理由に変わります。だから私は、社長に「今はまだ」と伝えるとき、必ず「何を何期で直せば外せるか」の工程までセットで示すようにしています。

❌ ここで多くの社長がやってしまう失敗

財務を整える前に、勢いで銀行に「保証を外してほしい」と直談判してしまうこと。役員貸付金が残ったまま、あるいは債務償還年数が15年ある状態で頼んでも、答えは「今は難しいですね」で終わります。しかも一度そこで断られると、次に交渉するときの心理的なハードルが上がる。順番が逆です。まず決算書を外せる状態に近づけ、月次開示で信頼を積み、そのうえで「説明義務」を根拠に「うちは何を直せば外せますか」と聞く。この順番なら、銀行は具体的な条件を出さざるを得ません。

5. 保証を外す前に、社長が知っておくべきデメリットは何か?

保証を外すことをすすめる記事は多いですが、デメリットまで正直に書いている記事はほとんど見ません。だから両方書きます。経営者保証を外すのは、いいことばかりではありません。

知っておいてほしい”コスト”は、主に3つです。

1つ目は、金利や保証料の上乗せです。保証がなくなる分、銀行はリスクを取ります。前章の事業者選択型なら保証料が0.25〜0.45%上乗せされますし、プロパーで外す場合も、金利が保証付きより高めに設定されることがあります。「保証を外す=タダで身軽になる」ではないと理解しておいてください。

2つ目は、調達枠が絞られる可能性です。保証を外した結果、銀行が慎重になり、借りられる金額の上限が下がる、あるいは新規の設備投資資金が出にくくなるケースもあります。攻めの投資を控えている局面なら問題ありませんが、これから大きく借りて伸ばしたい会社は、「保証を外すこと」と「調達力を保つこと」のどちらを今優先すべきかを天秤にかける必要があります。

3つ目は、すべての借入を一度に外せるわけではないことです。保証の解除は、原則として借入ごと・金融機関ごとの交渉です。複数行から借りていれば、A銀行は外れてもB銀行は当面残る、ということが普通に起きます。「一発ですべての保証が消える」という期待は、持たないほうがいい。

言葉を選ばずに書きます。それでも、外す価値がある会社がほとんどです。個人保証は、社長の意思決定を静かに縛ります。「失敗したら家族まで巻き込む」という恐怖は、攻めの判断を鈍らせる。上乗せの保証料や多少の枠の窮屈さと引き換えに、社長が数字で売上を伸ばす判断を、恐怖なしにできるようになる——その価値は、コスト表には載りません。デメリットを正直に見たうえで、それでも外したいなら、動く価値は十分にあります。

6. 顧問税理士を変えずに、保証解除の相談だけできるのか?

できます。この相談は、本当に多い。結論から言えば、顧問契約はそのままに、経営者保証の解除に向けた財務の整備と銀行交渉だけを、別の認定支援機関に相談することは、実務上まったく問題ありません。

「先代からの付き合いで税理士は変えづらい。でも、その先生は保証や資金繰りの相談には乗ってくれない」——2代目社長から、私はこの悩みを繰り返し聞いてきました。税務申告をしてくれる税理士と、財務戦略に伴走する専門家は、そもそも役割が違います。前者が「過去の数字を正確にまとめる」仕事なら、後者は「未来の数字を一緒に作り、銀行と交渉する」仕事です。両方を一人に求める必要はありません。

経営者保証を外すという作業は、決算書の中身を整え、月次開示の仕組みを作り、金融機関と条件を詰めていく、いわば財務の総合戦です。私自身、顧問は既存の先生のまま、保証解除と資金繰りの設計だけを伴走する形の相談を数多く受けています。税理士を「変える」のではなく、財務の相談先を「増やす」。この選択肢があることを、知らない社長がまだ多いのが実情です。財務を税理士業務の枠を超えて相談する意味については、税理士が財務コンサルとして伴走するメリットでも詳しく書いています。

7. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 経営者保証を外すには、まず何から手をつければいいですか?

決算書の3点——役員貸付金・仮払金が残っていないか、純資産がプラスか、債務償還年数が10年以内かを確認するところからです。特に役員貸付金は、中小企業が保証を外せない最も多い理由の一つで、放置されがちです。ここが残っているなら、役員報酬からの返済計画で計画的に消していくのが出発点になります。そのうえで、月次試算表を金融機関に開示する習慣を作ると、外す交渉の土台が整います。

Q2. 保証料を上乗せして外す制度(事業者選択型)は、どんな会社が使えますか?

信用保証協会の保証付き融資を利用する会社で、過去2年間の決算書提出、代表者への貸付がなく役員報酬が適正、資産超過または2期連続の減価償却前黒字、EBITDA有利子負債倍率15倍以内、リスケ中でないといった要件を満たす会社です。上乗せ保証料の目安は年0.25〜0.45%で、保証限度額は2億8,000万円(組合等は4億8,000万円)とされています。2024年3月に取扱いが始まった制度で、要件・料率は改正され得るため、申込前に取引金融機関と信用保証協会に最新情報をご確認ください。

Q3. 債務超過だと、経営者保証は絶対に外せませんか?

今の決算のままでは、まず外す議論に乗りません。純資産がプラスであることが、財務基盤の要件の出発点だからです。ただし「一生外せない」わけではありません。利益を積んで純資産を厚くし、債務超過を解消すれば、外せる側の土俵に立てます。まずは何期で債務超過を解消できるかの計画を立て、その進捗を金融機関に開示していくことが、遠回りに見えて最短の道です。

Q4. 保証を外すと、逆に借りにくくなることはありますか?

あり得ます。保証がなくなる分、銀行はリスクを取るため、金利や保証料が上乗せされたり、調達枠が慎重になったりするケースがあります。これから大きく設備投資をして伸ばしたい局面では、「保証を外すこと」と「調達力を保つこと」のどちらを優先すべきかを検討したほうがいいでしょう。攻めの投資が一段落した会社ほど、外すメリットが素直に効きます。

Q5. 複数の銀行から借りていますが、全部の保証を一度に外せますか?

原則として、保証の解除は借入ごと・金融機関ごとの個別交渉です。財務が整っていても、A銀行は外れてB銀行は当面残る、ということは普通に起こります。まずは自社の財務を評価してくれそうな金融機関から交渉を始め、実績を作りながら他行に広げていくのが現実的な進め方です。一度にすべてが消えるという期待は持たないほうがいいです。

Q6. 大阪以外の会社でも、保証解除の相談はできますか?

できます。当事務所は大阪市淀川区ですが、オンラインで全国対応しています。経営者保証の解除は、決算書と勘定科目内訳書を事前に共有いただければ、初回からオンラインで「今の数字で外せるか」「何を直せば外せるか」の具体的な議論が可能です。信用保証協会は各都道府県に設置されているため、御社の所在地に応じた制度の使い方もご案内します。

8. まとめ|保証の判子を外す一歩が、社長の脳の余白を作る

経営者保証を外す財務要件について、要点を整理します。

  • 潮目は変わった——2023年4月から銀行に説明義務。新規融資の約半分が、もう経営者保証を取っていない
  • 3要件は数字で見られる——①役員貸付金・仮払金、②純資産・債務償還年数・EBITDA倍率、③月次の開示習慣
  • 保証料を上乗せして外す制度——事業者選択型経営者保証非提供制度(2024年3月開始)。要件を満たせば年0.25〜0.45%の上乗せで外せる(保証協会ルート)
  • 外せる/外せないの財務ライン——債務超過・役員貸付金・債務償還年数10年超・リスケ中は「今は外せない」側。ただし多くは時間と設計で外せる側に変えられる
  • デメリットも正直に——金利・保証料の上乗せ、調達枠、一度に全部は外せないこと。それでも外す価値がある会社がほとんど

個人保証の判子は、社長の頭の片隅に静かに居座り続けます。「失敗したら家族まで」という重しを背負ったままでは、社長の頭は本来やるべき攻めの意思決定に使えません。決算書のいくつかの数字を整え、外せる状態を作る。それだけで、次の一年に向けた社長の脳の余白が生まれます。

来期もまた、あの判子の重さを漠然と抱えたまま、一人で胃を痛める一年を過ごすのか。それとも、自社の数字を整え、「うちは何を直せば外せますか」と銀行に対等に問える社長になるのか。その分かれ目は、会社の規模でも景気でもなく、決算書を「外せる数字」に近づける一歩を、今踏み出すかどうかです。

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この記事を書いた人

稲田光浩(いなだ みつひろ)

税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・認定経営革新等支援機関・freee認定アドバイザー

  • 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
  • CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
  • 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
  • 監事:社会医療法人 1法人
  • 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
  • プロジェクト型支援領域:経営ダッシュボード設計・構築/経営計画策定/資金調達伴走/経理業務フロー改善/AI活用設計

〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605

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