後継者のいない同業を引き受けて商圏を広げるか、値決めを握られている仕入先を思い切って買うか——M&Aで会社を一段大きくする絵を、頭の片隅で描いていないでしょうか。
売上5億を超えたあたりから、自社の成長だけでは伸びしろが見えにくくなる。
取引先の高齢化。
職人の引退。
そこに、譲ってくれる相手が現れる。
ただ、初めて会社を「買う側」に立つとき、多くの2代目社長がある落とし穴にはまります。仲介会社から渡される資料の数字を、そのまま信じてしまうことです。M&Aは、売り手に情報が集まり、買い手が情報の少ない側で判断を迫られる取引です。仲介の多くは、成約して初めて報酬が入る。だから資料は、当然きれいに整えられて出てきます。
私は税理士として、認定経営革新等支援機関の立場でM&A・事業承継の実務に伴走し、複数社の経営会議・取締役会で買収の意思決定の現場に立ち会ってきました。銀行の審査がどの数字を見るかも、選ばれる側からずっと見てきました。その経験から、正直に書きます。M&Aで失敗する買い手のほとんどは、買う瞬間ではなく、買った後に財務でつまずきます。
この記事は、会社を買う側の進め方を「買い手を財務で守る」視点だけで整理します。仲介の数字をどこまで信じるか、財務デューデリジェンスで最初に叩くべき論点、買収資金と銀行審査、そしてクロージング後に効いてくる財務の地雷まで。きれいごとではなく、買ってはいけない会社の見分け方まで書きます。
買収の話が、具体的に動き始めているなら
M&Aは相手のある話で、スピードが命です。だからこそ、案件が走り出す前に「買い手を守る財務の目」を一枚噛ませておくと、後の地雷が大きく減ります。決算書とM&Aの概要を前提に、45分の無料相談で最初の一手を整理します。テンプレートを渡して終わり、のような対応はしません。
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1. M&Aで会社を買うとき、買い手は結局どんな順番で進むのか?
結論から書きます。買い手のM&Aは、大きく「①目的の明確化 → ②案件の探索 → ③トップ面談・意向表明 → ④基本合意 → ⑤デューデリジェンス → ⑥最終契約・クロージング → ⑦統合(PMI)」という順番で進みます。着手から引き継ぎ完了まで、半年から1年ほどかかるのが一般的です。
ここまでは、どの仲介会社のサイトにも載っている流れです。だから、あえて書き足します。この7ステップのうち、買い手の勝ち負けが決まるのは③〜⑤と⑦。それ以外は、正直、手続きに乗っていれば進みます。
順番に、買い手目線でだけ要点を置きます。
- ①目的の明確化——「なぜ買うのか」を数字で言えるか。商圏拡大なのか、仕入れの内製化なのか、人材や技術の確保なのか。目的が曖昧なまま案件を見始めると、「良さそうな会社」に引っ張られて、要らないものを買います
- ②案件の探索——仲介・金融機関・事業引継ぎ支援センター経由でノンネーム情報が来ます。この段階では会社は特定できません
- ③トップ面談・意向表明(LOI)——ここで初めて相手の社長と会い、買う意思と条件のたたき台を出します。価格の初期感がここで動きます
- ④基本合意——独占交渉権を得て、価格やスキームの大枠を握る。ここから先が本番です
- ⑤デューデリジェンス(DD)——買い手が売り手の中身を精査する唯一の機会。財務・税務・法務・労務を叩きます。買い手を守る勝負どころです
- ⑥最終契約・クロージング——株式譲渡契約を結び、代金を払い、経営権が移ります
- ⑦統合(PMI)——買った後の融合。実は、ここで一番お金が動き、一番失敗が起きます
私が伝えたいのは、この一本の線のどこに「財務の目」を入れるか、です。多くの買い手は⑤のDDで初めて会計士や税理士を呼びます。でも、それでは遅い。③の意向表明で価格の初期感を出す前に、財務の視点を入れておく——ここが、後で効いてきます。理由は次章で書きます。
2. 仲介が出す「きれいな数字」を、買い手はどこまで信じていいのか?
先に、はっきり書きます。仲介から渡される企業概要書(IM)の数字は、出発点であって、結論ではありません。信じてはいけない、という話ではない。ただ、それは「売り手が見せたい形に整えられた数字」だと知ったうえで読む、ということです。
M&Aという取引の構造を、冷静に見てください。売り手は自社を知り尽くしている。買い手は外から限られた資料で判断する。仲介の多くは、成約したときに初めて報酬が入る。この三者の立場を並べれば、資料がどちらを向いて作られるかは、言葉を選ばずに書けば、明らかです。仲介が悪いのではありません。そういう構造の取引だ、というだけです。
では、買い手は概要書のどこを疑うのか。私が最初に手を止めるのは、この3つです。
①「営業利益」ではなく「正常収益力」で見る
中小企業の決算書には、社長個人の車、家族への給与、生命保険、交際費——本業の実力ではない損益が混ざっています。逆に、オーナーが役員報酬を極端に抑えて利益を厚く見せているケースもある。表面の営業利益ではなく、これらを調整した「その会社が普通に回したときに稼ぐ力(正常収益力)」に引き直さないと、買う価値を見誤ります。
②「純資産」ではなく「実態純資産」で見る
貸借対照表に載っている資産が、本当にその金額の価値を持っているか。回収できない売掛金、売れない不良在庫、価値の落ちた設備、回収見込みのない役員貸付金。これらを時価に引き直すと、簿価の純資産が大きく目減りすることは珍しくありません。私の体感では、中小企業のBSは「額面より痩せている」ことのほうが多い。
③「利益」と「現金」がずれていないか
利益が出ているのに現金が薄い会社は、運転資金がどこかで詰まっています。売掛の回収が遅い、在庫が寝ている、返済が重い。買った後にその資金繰りを背負うのは買い手です。損益計算書のきれいさより、現金がどう回っているかを見る。ここは、決算書を経営者の目で読む力そのものです。数字の読み方の土台は成長企業の財務マネジメント完全ガイドにまとめています。
この3つを、意向表明で価格感を出す「前」にざっくりでも当てておく。それだけで、高く掴むリスクも、後で揉めるリスクも下がります。
概要書の数字を、鵜呑みにする前に
「この価格は高いのか妥当なのか」——意向表明の前に、正常収益力と実態純資産のあたりを付けておくだけで、交渉の景色が変わります。仲介とは別の、買い手だけの味方の目として、決算書を一緒に読みます。まずは45分の無料相談から。
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3. 財務デューデリジェンスで、買い手を守るために最初に叩くべき数字はどこか?
財務デューデリジェンス(DD)とは、買う前に売り手の財務の中身を精査する、買い手に許された唯一の調査機会です。ここで見落としたものは、買った後、全部あなたの負担になります。だから、優先順位をつけて叩きます。
私が買い手側で入るとき、限られた時間でまず手を突っ込むのは、次の順番です。
① 簿外債務・偶発債務——「BSに載っていない借金」を探す
これがDDの最重要論点です。未払残業代、退職給付の引当不足、債務保証、係争中の訴訟、リース債務、税務の申告漏れ。決算書の表には出てこないのに、買った瞬間に引き継ぐ債務がある。株式取得は、会社を「まるごと」引き受ける取引です。過去のツケも、そのまま背負います。ここを掘らずに買うのは、家の基礎を見ずに家を買うのと同じです。
② 売掛金の回収可能性と在庫の質
売掛金は「ある」ことより「回収できる」ことが大事です。長期滞留している債権、実質倒産している取引先への売掛。在庫も同じで、帳簿上は資産でも、売れ残りやデッドストックは価値ゼロに近い。ここは実態純資産に直結します。
③ 正常収益力(実態のEBITDA)
2章で触れた正常収益力を、DDでは腰を据えて詰めます。オーナー個人の経費、一時的な特別損益、関連会社との不自然な取引を洗い、「買った後に、買い手が回したらいくら稼ぐのか」を出す。買収価格の妥当性は、最終的にここに帰結します。
④ 運転資金の必要額(買った後に沈むお金)
これは見落とされがちですが、買い手の資金繰りを直撃します。仕入れが先、入金が後、という商売なら、事業を回すだけで一定の現金が寝続ける。買収代金とは別に、この運転資金を用意できていないと、買った直後に資金ショートに近づきます。卸売や製造で、仕入先行・掛売の会社を買うなら、必ず織り込んでください。
ここで正直に、限界も書きます。中小企業のM&Aで、上場企業並みのフルスペックDDに何百万もかけるのは、現実的でないことが多い。だから、「この会社で一番リスクが集まっている一点はどこか」を見極めて、そこに調査を集中させる。全部を薄く見るより、地雷が埋まっていそうな場所を深く掘る。この優先順位付けこそ、財務が分かる伴走者を買い手側に置く価値です。承継・M&Aで買い手が背負う借入・保証・株価がどう動くかは事業承継の財務を2代目目線で設計するでも扱っています。
4. 買収資金をどう作り、銀行は買い手の何を審査するのか?
結論を先に書きます。買収資金の多くは銀行融資で作ります。そして銀行は、買い手の今の財務と、買収後の返済ストーリーの両方を審査します。ここは、選ばれる側で銀行の目をずっと見てきた立場から書きます。
会社を買う原資は、自己資金だけで賄えることは稀です。多くはM&A向けの融資(買収ローン)を使います。このとき銀行が見ているのは、単純化すれば2つです。
①買い手本体の体力——今の会社が、この借入を上乗せして返せるのか。既存の借入と合わせた債務償還年数(借入を利益とキャッシュで何年で返せるか)が、審査の芯になります。ここが伸びすぎると、そもそも融資が付きません。
②買収後の統合ストーリー——買った会社と合わせて、返済原資がどう生まれるのか。シナジーで売上が増える、仕入れが下がる、間接費が減る——その絵に、銀行が納得できる根拠があるか。銀行融資は「数字の審査」であると同時に「返済ストーリーの審査」です。これは買収ローンでも変わりません。
もう一つ、買い手が誤解しやすい論点があります。「のれん」です。「純資産より高く買った差額は”のれん”として税務上5年で経費に落ちる」と説明されることがありますが、これは事業だけを買う事業譲渡や合併のケースの話です。会社をまるごと買う株式取得では、買い手の帳簿に載るのは「子会社株式」だけで、税務上ののれん(資産調整勘定)は生じず、5年償却で費用化することもできません(税務上ののれんが発生するのは、法人税法上の非適格合併・事業譲受などに限られます)。つまり株式取得は、高く買っても買収額を経費で取り戻せない——この”税でカバーできない”構造こそ、次に説明する制度が用意されている理由です。価格交渉は、買った後の損益まで見て握るべきです。
ここで、買い手を後押しする税制も押さえておきます。株式取得でM&Aをする中小企業には、取得価額の一定割合をその年の損金に積み立てられる「中小企業事業再編投資損失準備金(経営資源集約化税制)」があります。買収初年度の税負担を抑え、その資金を統合や運転資金に回せる制度です。ただし、これは経営力向上計画の認定をM&Aの「前」に取っておくのが前提で、順番を外すと使えません。仕組みと落とし穴は中小企業事業再編投資損失準備金の使い方と落とし穴に、前提になる計画そのものは経営力向上計画のメリットとは?に詳しく書いています。買う前に認定を動かす——この一手を知っているかどうかで、初年度の手取りが変わります。
5. クロージングの後に効いてくる「財務の地雷」は何か?
ここが、この記事で一番読んでほしい章です。言葉を選ばずに書きます。M&Aの失敗の大半は、買った後(PMI)の財務で起きます。契約書に判を押した瞬間が、本当のスタートです。
買った後に効いてくる地雷を、4つ挙げます。
①運転資金の想定外の膨らみ
3章で触れた運転資金は、統合の混乱期にさらに膨らみます。取引条件の見直し、システムの入れ替え、支払サイトの調整。買収代金の融資は組めても、この「回すための現金」を用意し忘れて、買った直後に資金繰りが締まる会社を見てきました。買収代金と運転資金は、別の財布で用意する。これは鉄則です。
②キーマン・取引先・従業員の流出
中小企業の価値は、決算書に載らない人に宿っています。オーナー社長が辞めた瞬間に取引が止まる、キーマンの職人が去る、主要取引先が「先代だから続けていた」と離れる。これらは全部、買った後の売上減——つまり返済原資の減少として、財務に跳ね返ります。DDの段階で、売上が「誰に」依存しているかを必ず見てください。
③子会社株式の評価損
株式取得で会社を買うと、買い手の決算に載るのは「子会社株式」です。買った会社が想定どおり稼げず価値が大きく下がると、一定の要件を満たした場合に「評価損」として損失計上を迫られます。高く買った案件ほど、この下押しは大きい。買収後の事業計画が絵に描いた餅だと、ここで牙をむきます(連結決算を作る会社や事業譲渡では、代わりに”のれんの減損”という形で現れます)。
④引き継いだ税務・簿外リスクの顕在化
株式取得で会社をまるごと買うと、過去の税務リスクもついてきます。買った後の税務調査で、前オーナー時代の申告漏れが指摘される。DDで簿外債務を叩ききれていないと、ここで初めて表面化します。契約書に表明保証(売り手が「隠れた債務はない」と約束する条項)を入れて備えるのが定石ですが、相手に支払能力がなければ絵に描いた餅です。だからこそ、買う前のDDで潰しておくしかない。
❌ 買い手が、やってはいけないこと
- 仲介の概要書の数字だけで価格を握る——正常収益力・実態純資産に引き直す前の数字は出発点にすぎません
- 財務DDを「時間がないから簡易でいい」と省く——簿外債務は、買った後にあなたの債務になります。一点集中でも必ず叩く
- 買収代金だけ融資で用意し、運転資金を忘れる——回すための現金は別の財布で。買った直後の資金ショートは、ここから起きます
- PMI(買った後の統合)を無計画に始める——キーマン・取引先の流出は返済原資の減少に直結します
- 経営力向上計画の認定を後回しにして買収を先に走らせる——投資損失準備金が丸ごと使えなくなります
これらの地雷に共通するのは、「買う前に見ておけば防げたのに、買った後に気づく」という一点です。私が買収の相談を受けたら、契約の前に、買収後3年の資金繰りと損益の見取り図を一枚引きます。制度や価格の話より先に、買った後にお金がどう動くかを見せる。ここまでやって、はじめて「買っていいか」の判断ができます。
6. 買い手が「買ってはいけない会社・買うべきでない場面」はどこか?
正直に、線を引きます。すべての案件を、買うべきではありません。むしろ、良い買い手ほど「買わない」判断を数多くしています。
買うのを慎重に考えるべき会社は、こういう輪郭です。
- 売上が特定の1〜2社の取引先に極端に依存している——その取引先が離れれば、買った価値が消えます
- 実態純資産が簿価より大きく痩せている——不良債権・不良在庫・過大な役員貸付が積み上がっている
- 簿外債務の疑いをDDで晴らせない——未払残業代や税務リスクの尻尾が見えるのに、相手が資料を出さない
- オーナー個人の力で回っていて、その人が抜けたら成立しない——属人性が高すぎる
- 買収後の返済ストーリーが、希望的観測でしか描けない——シナジーの根拠が「たぶん」しかない
そして、会社ではなく「買い手側の場面」として、見送るべきタイミングもあります。
- 自社の資金繰りが、今まさに苦しい——他社を背負う体力がない状態での買収は、共倒れのリスクを上げます
- 目的が曖昧なまま「良い案件があるから」で動いている——買うこと自体が目的化しています
- 認定やDDの時間をまったく取れないほど、案件が急いでいる——順番を守れないなら、その案件は縁がなかったと考える冷静さも要ります
私が伴走の現場で大事にしているのは、「買えるから買う」ではなく「この会社を、この価格で、この体力で買っていいか」という問いを、社長と一緒に何度もくぐらせることです。仲介は成約で報酬が入る側。だからこそ、買い手には「買わない」も選択肢に入れて一緒に考える味方が要ります。それは税務にとどまらず、財務・経営の意思決定に踏み込む仕事です。税理士が財務コンサルとして買い手に伴走する意味は税理士が財務コンサルとして伴走するメリットに、税理士を変えて銀行の見方まで変わった話は税理士を変えて、銀行融資が通った話にまとめています。
7. よくあるご質問(FAQ)
Q1. M&Aの買い手側は、着手から完了までどのくらいの期間がかかりますか?
案件の規模やスキームによりますが、目的の明確化から統合開始まで、一般的に半年から1年程度が目安です。特に、案件探索とデューデリジェンスに時間がかかります。急ぐほど調査が甘くなり、買った後のリスクが上がるため、スケジュールには余裕を持たせることをおすすめします。
Q2. 仲介会社に任せていれば、買い手側に別の専門家は要らないのではないですか?
仲介は売り手と買い手の間に立って成約を目指す立場で、多くは成約時に報酬が発生します。構造上、買い手だけの味方ではありません。買い手を財務面で守る目——正常収益力や実態純資産の検証、簿外債務の洗い出し、買収後の資金繰りの設計——は、買い手側に立つ専門家を別に置くことで初めて機能します。仲介と対立する話ではなく、役割が違うということです。
Q3. 財務デューデリジェンスは、中小企業のM&Aでも必要ですか?費用が心配です。
必要です。ただし、上場企業並みのフルスペックDDを求める必要はありません。中小企業のM&Aでは、その会社で最もリスクが集まっている論点(多くは簿外債務・売掛と在庫の質・正常収益力)に調査を集中させる、優先順位付けが現実的です。全部を薄く見るより、地雷が埋まっていそうな一点を深く掘るほうが、費用対効果も高くなります。
Q4. 買収資金は、銀行から借りられますか?審査で何を見られますか?
M&A向けの買収ローンを扱う金融機関は増えています。審査では、買い手本体の返済余力(既存借入を含めた債務償還年数など)と、買収後にどう返済原資が生まれるかの統合ストーリーの両方を見られます。銀行が納得できる根拠のある事業計画を、買い手側で用意できるかが鍵になります。
Q5. 会社を買うと使える税制優遇はありますか?
株式取得によるM&Aをする中小企業には、取得価額の一定割合(通常枠で70%)をその年の損金に積み立てられる「中小企業事業再編投資損失準備金(経営資源集約化税制)」があります。買収初年度の税負担を抑えられる制度ですが、経営力向上計画の認定をM&Aの前に受けておくことが前提です。順番を外すと使えないため、案件が動く前の準備が重要です。仕組みと注意点は関連記事に詳しくまとめています。
Q6. 買った後に一番失敗しやすいのは、どんな点ですか?
買収代金は融資で用意できても、事業を回すための運転資金を別に用意し忘れて、買った直後に資金繰りが締まるケースが目立ちます。加えて、キーマンや主要取引先が抜けて売上が落ちる、子会社株式の評価損が損益を直撃する、といった買収後(PMI)の財務リスクが失敗の中心です。買う前に、買収後3年の資金繰りと損益の見取り図を作っておくことが有効です。
Q7. 大阪の会社ではありませんが、M&A(買い手側)の相談はできますか?
できます。当事務所は大阪市淀川区ですが、オンラインで全国対応しています。買い手側のM&Aは、決算書と検討中の案件の概要を事前に共有いただければ、初回からオンラインで具体的な段取りやリスクの議論が可能です。案件が動く前のご相談ほど、打てる手が多く残ります。
8. まとめ|買う瞬間ではなく、買った後で差がつく
会社を買う側の進め方を、財務で守る視点だけで整理してきました。要点はこうです。
- 流れ——買い手の勝負どころは、トップ面談・意向表明(③)とデューデリジェンス(⑤)と統合(⑦)に集まる
- 数字の読み方——概要書の営業利益・簿価純資産は出発点。正常収益力・実態純資産・現金の回り方に引き直す
- DD——簿外債務・偶発債務を最優先で叩く。株式取得は過去のツケごと引き受ける取引
- 資金と審査——買収代金と運転資金は別の財布で。銀行は返済ストーリーを審査する。使える税制(投資損失準備金)も織り込む
- 地雷——失敗の大半は買った後(PMI)。運転資金・キーマン流出・子会社株式の評価損・引き継いだ税務リスク
- 買わない判断——取引先依存・属人性・希望的観測の返済計画は見送る勇気も要る
M&Aは、会社を一段大きくする最短ルートになり得ます。同時に、買った後の財務でつまずけば、本業まで巻き込んで沈む取引でもあります。その分かれ目は、才能でも資金力でもありません。買う「前」に、買い手を守る財務の目を一枚噛ませておいたかどうか——多くは、それだけです。
仲介の出す数字を鵜呑みにして、買った後に地雷を踏んで、本業ごと資金繰りに追われる日々に戻るのか。それとも、案件が動く前に地雷の在りかを潰し、買収を自社の次の成長に変えるのか。分かれ道は、契約に判を押すよりずっと手前、今この瞬間にあります。
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💡 単発のM&A相談ではなく、買う前から統合後まで一気通貫で任せたいなら
Luxe Partners|年商1〜10億の成長企業向け 財務伴走パートナー
案件の目利き、概要書の数字の読み直し、財務デューデリジェンス、買収資金と運転資金の設計、経営力向上計画の認定、そして買った後の統合と資金繰り——M&Aは、財務・税務・経営の意思決定が絡み合います。税理士業務の枠を超えて、買う前から統合後まで買い手の側で一気通貫に伴走するのが Luxe Partners です。
この記事を書いた人
稲田光浩(いなだ みつひろ)
税理士/稲田光浩税理士事務所 代表
年商1〜10億の成長企業オーナー専門・freee認定アドバイザー
- 顧問先:成長期の中小企業・スタートアップ・医療歯科・飲食等
- 認定経営革新等支援機関/CFO顧問の伴走実績あり、新規CFO顧問の受付を再開しています
- 監査役:東京プロマーケット 上場準備中の企業 1社
- 監事:社会医療法人 1法人
- 経営会議・取締役会への参加経験:複数社
- プロジェクト型支援領域:M&A・事業承継の伴走/経営計画策定/資金調達伴走/経営ダッシュボード設計・構築/経理業務フロー改善/AI活用設計
〒532-0011 大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605



