「最低賃金が上がるので、従業員の時給を上げる予定がある」
「年内に機械や設備を購入しようと思っている」
「POSレジや業務システムを入れ替えたい」
このような大阪府内の中小企業・小規模事業者の方は、設備を購入したり、賃上げを実施したりする前に、確認していただきたい制度があります。
+
② 大阪府の「業務改善・賃上げ促進補助金」
特に2026年度は、国の業務改善助成金を活用した大阪府内の事業者について、一定の要件を満たせば大阪府からさらに上乗せ補助を受けられる制度が設けられています。
ポイントは2つです。
「どうせ賃上げするなら、賃上げする前に助成金を確認する」
「どうせ設備投資するなら、発注・契約・購入する前に助成金を確認する」
⚠ 大阪府の事業者は、期限が「9月30日」です
大阪府の2026年度最低賃金は10月1日に発効(時間額1,231円・大阪労働局公表)のため、国の業務改善助成金の申請期限「発効日の前日」は9月30日になります。大阪府の上乗せ補助の事前登録も9月30日まで。両方とも、ここが締切です。
▶ 対象になりうるか、45分で一緒に整理する ▶ LINEで質問する
現在の最低時給・雇用保険の加入状況・賃上げ額・購入予定の設備が分かれば、制度の要件と照らして「申請を検討する価値があるか」の入口整理ができます。対象かどうかの最終判断は労働局の審査によります。
1.国の「業務改善助成金」とは?
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が、
事業場内最低賃金を引き上げる(2026年度は50円・70円・90円の3コース)
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生産性向上につながる設備投資等を行う
ことで、その設備投資等にかかった費用の一部について国から助成を受けられる制度です。
2026年度の助成上限額は、賃上げ額のコースと引き上げる労働者数によって異なり、最大600万円です。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。
大阪府の事業者が実際に当てはまる区分
- 大阪府の最低賃金は現在1,177円なので、府内の事業場は全て「1,050円以上」=助成率は3/4です(4/5は適用されません)
- 上限600万円は「90円コース×10人以上×特例事業者」の区分です。一般の事業者の上限は450万円(90円コース×8人以上)。特例事業者になるには、大阪では「物価高騰等要件」(申請前6か月平均の利益率が前年度比3%ポイント以上低下)を満たす必要があります
- 助成額は「設備投資額×3/4」と「上限額」のいずれか低い方です
助成上限額の一覧(令和8年度・厚生労働省)
| コース | 引き上げる 労働者数 |
上限額 (右記以外の事業者) |
上限額 (事業場規模30人未満) |
|---|---|---|---|
| 50円 コース |
1人 | 30万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 40万円 | 70万円 | |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 | |
| 10人以上※ | 130万円 | 130万円 | |
| 70円 コース |
1人 | 40万円 | 50万円 |
| 2〜3人 | 50万円 | 100万円 | |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 | |
| 10人以上※ | 300万円 | 300万円 | |
| 90円 コース |
1人 | 90万円 | 100万円 |
| 2〜3人 | 150万円 | 240万円 | |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 | |
| 10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
※「10人以上」の区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合のみ対象です。事業場規模30人未満の事業者は、1人・2〜3人の区分で上限が高く設定されています。出典:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」。
2.「事業場内最低賃金」とは?
簡単にいうと、雇入れから6か月を経過した雇用保険被保険者のうち、最も低い時給のことです。時給の算定は最低賃金の計算と同じで、精皆勤手当・通勤手当・家族手当は含めません(Q&A問7)。月給制の正社員は「月給÷1か月の平均所定労働時間」で時給に換算します。
業務改善助成金では、原則として雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。
例えば、
- 正社員 月給25万円÷月平均所定労働時間170時間=時給換算 約1,470円
- パートA 時給1,220円
- パートB 時給1,200円
だった場合、事業場内最低賃金は「1,200円」です(大阪府では1,177円以上1,231円未満なので申請可能)。この1,200円を、コースに応じて50円・70円・90円以上引き上げます。なお、引上げ後の新しい最低賃金を下回る労働者(この例ではパートA)も、全員その額まで引き上げる必要があります。
対象になるための前提(令和8年度)
- 事業場内最低賃金が、改定後の地域別最低賃金未満であること——大阪府なら、いまの最低時給が1,177円以上1,231円未満の事業場が対象です。すでに1,231円以上なら申請できず、現行の最低賃金1,177円を下回っている場合も対象になりません(Q&A問3・問6)
- 引き上げる対象労働者は雇用保険の被保険者であること(令和8年度の変更点)
- 労働保険に加入していること(未加入・滞納中は対象外)
- 労働者(従業員)を雇用していること——従業員がいない事業者は対象外です
3.これから設備投資する事業者は特に要チェック
今回、特に確認していただきたいのが、「これから設備投資を予定している事業者」です。
- 新しい機械を購入したい
- 店舗や工場の設備を入れ替えたい
- POSレジを導入したい
- 業務システムを導入したい
- 業務効率化につながる機器を購入したい
- 生産性向上につながる設備を導入したい
といった予定がある場合、業務改善助成金を活用できる可能性があります。
※一方で、自動車(特殊用途自動車を除く)は令和8年度から助成対象外です。また、パソコン・スマホ・タブレット等の新規導入は、物価高騰等の要件を満たす「特例事業者」のみ対象になります。対象経費の下限は10万円です。
4.いつ設備投資すれば対象になる?
ここは非常に重要です。業務改善助成金は、「○月○日以降に買えば全部対象」という制度ではありません。
- 賃上げ・設備投資の計画を作る
- 国の業務改善助成金を申請する
- 交付決定を受ける
- 計画に基づいて設備投資を実施する
- 実績報告・助成金の支給
したがって、「これから申請を行い、交付決定を受けてから設備投資できる事業者」が主な対象です。厚生労働省も「事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります」と明記しています。
2026年度は、設備投資等の事業完了期限が原則として交付決定の属する年度の1月31日です。「年内〜2027年1月頃までに設備投資を考えている」という事業者様は、特に早めに制度の確認をおすすめします。
「事業完了」は、次の3つがすべて終わった日です
- 導入機器等の納品日
- 導入機器等の支払完了日(銀行振込は振込日、クレジットカード等は口座の引落し日)
- 賃金引上げ日(就業規則等の改正・適用日)
このうちいちばん遅い日が事業完了日になります。つまり、納品・支払・賃上げの3つをすべて1月31日までに終える必要があります。納入業者の都合で納品が遅れるなど、やむを得ない理由がある場合は、あらかじめ理由書を添えて申請すれば、3月31日まで延長が認められることがあります(管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に確認)。
一方で、交付決定を受ける前に助成対象設備を導入してしまった場合は、原則として助成対象となりません。「設備を買ってから助成金を探す」のではなく、「設備を買う前に助成金を確認する」ことが非常に重要です。
5.最低賃金が上がるから賃上げする会社こそ確認を
今回の制度で特に注目していただきたいのが、「最低賃金改定に合わせて、どうせ従業員の賃金を上げる予定だった」という事業者様です。
何もせずに賃上げをすれば、当然ですが賃上げをして終わりです。一方で、これから賃上げする+これから設備投資するという会社であれば、賃上げ前に業務改善助成金を検討することで、設備投資費用の一部について助成を受けられる可能性があります。
ここが令和8年度で最も注意すべき点です。賃金の引上げは、助成金の申請より後に行う必要があります。先に時給を上げてしまってから申請することは、令和8年度からできなくなりました(厚生労働省「一部変更のお知らせ」)。
なお、賃金引上げは2026年9月1日から、その事業場に適用される2026年度地域別最低賃金の発効日の前日までに行う必要があります。大阪府の場合、発効日は10月1日なので、9月30日までです。検討できる期間は長くありません。
※賃上げの実務では、①引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めること、②引上げを複数回に分けて行うことは認められないこと、③交付決定後に解雇や賃金の引下げを行うと不交付事由になること、④就業規則の改正の適用日も申請日より後である必要があること(Q&A問16)、⑤申請日の1年前から実績報告までの間に労働基準監督署の是正勧告を受けていると申請できないこと(Q&A問49)、⑥同じ労働者をキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象と重ねてカウントできないこと(Q&A問47)にご注意ください。
6.国の業務改善助成金の申請期限
2026年度の申請期間は、2026年9月1日から、「その事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日」または「2026年11月30日」のいずれか早い日までです。
つまり、地域によって実際の締切日が異なります。大阪府は最低賃金の発効日が10月1日のため、申請期限は9月30日です。「年末に設備を買うから、そのときに申請すればいい」というわけではありませんので注意してください。
※申請は労働局への到達日で判定されます(郵送は消印ではなく到達日)。また、予算の範囲内で交付されるため、申請期間内でも募集が終了することがあります。
7.さらに大阪府から最大200万円の上乗せ
2026年度、大阪府では国の業務改善助成金を活用する事業者を対象として、「大阪府業務改善・賃上げ促進補助金」を実施しています。
一定の要件を満たした場合、
の補助を大阪府から追加で受けられる可能性があります。つまり、国の業務改善助成金+大阪府の上乗せ補助という組み合わせです。
上限200万円は「最上位の区分」の数字です
- 府の補助額は「補助対象経費×1/4」と、コース・引き上げる労働者数ごとの上限額(別表)のいずれか低い方です(府交付要綱第4条)
- 府の上限額は、おおむね国の助成上限の3分の1です。例:90円コースで8人以上を引き上げる一般事業者は150万円、50円コースで2〜3人なら13.3万円
- 200万円になるのは、90円コース×10人以上×特例事業者の区分だけです
- 国・自治体・商工会議所等の他の補助金を受ける経費は、府の補助対象外です(第3条第2項)
8.大阪府の上乗せを受けるための主な条件
大阪府の補助金を受けるためには、国の業務改善助成金を受けるだけでは足りません。主な条件は次のとおりです。
- 大阪府内に事業場があること
- 2026年9月1日以降に大阪労働局へ国の業務改善助成金を申請すること
- 国の業務改善助成金の支給決定等を受けること
- 国へ提出した事業実施計画を上回る賃上げを実際に行うこと
- 引上げ後の事業場内最低賃金を、2026年度大阪府最低賃金よりさらに2%を上回る額にすること(1,231円×1.02=1,255.62円 → 1,256円以上が目安。当事務所の試算)
- 2027年3月5日までに、大阪労働局長から国の助成金の交付額確定・支給決定の通知を受けていること
※府の「補助対象経費」は、国の助成金の精算書(様式第9号別紙1)に記載した対象経費の支出済額です。国の助成額を差し引いた残額ではなく、支出額そのものに1/4を乗じます(上限200万円)。
国の助成金よりも、さらに一段高い賃上げを行う事業者を大阪府が支援する仕組みです。
9.大阪府分は「2026年9月30日までの事前登録」が必要
ここは特に注意してください。大阪府の上乗せ補助を利用したい場合は、2026年9月1日〜9月30日の間に、大阪府行政オンラインシステムから事前登録を行う必要があります。
しかも、この事前登録を行った事業者でなければ、後から大阪府の補助金の交付申請をすることができません(交付申請の受付は2026年12月1日〜2027年3月10日)。
「国の業務改善助成金が通ってから大阪府分を考えよう」では間に合いません。大阪府の上乗せ補助を検討する場合は、まず9月30日の事前登録期限を意識してください。
10.こんな事業者様は一度確認してください
次の項目に一つでも該当する場合は、制度を利用できる可能性があります。
- ☑ パート・アルバイトを含め従業員を雇用している
- ☑ 最低賃金改定に伴い、これから賃上げする予定がある
- ☑ 年内〜2027年1月頃までに設備投資を予定している
- ☑ 機械や設備を購入・入れ替えたい
- ☑ POSレジ等を導入・入れ替えたい
- ☑ 業務システム等を導入したい
- ☑ 人手不足なので業務効率化を進めたい
- ☑ 生産性向上のための設備投資を考えている
特に、「これから賃上げする」+「これから設備投資する」の両方に該当する場合は、設備の発注・契約等を行う前に確認することをおすすめします。
11.ご相談いただく際に確認したいこと
制度の対象になる可能性があるか確認するため、次の内容をお知らせください。
- 現在の従業員の中で最も低い時給
- その時給に該当する従業員数
- 今後予定している賃上げ額
- 購入・導入したい設備、機械、システム等
- おおよその購入予定金額
- いつ頃購入・導入したいか
この6点が分かると、制度を利用できる可能性について検討しやすくなります。
※助成金の申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の独占業務です(社会保険労務士法第27条)。当事務所は、賃上げ後の人件費(法定福利費を含む)と設備投資の資金計画・消費税の取扱い・銀行対応を担当し、申請手続きは提携の社会保険労務士と連携して進めます。対象かどうかの最終判断は労働局の審査によります。
よくあるご質問
Q1. 先に時給を上げてしまいました。今から申請できますか?
できません。令和8年度から、賃金の引上げは交付申請書が労働局に到達した後に行う必要があり、申請より前に引き上げた場合は助成対象外です(厚生労働省Q&A問15・問16)。
Q2. いまの最低時給が1,231円以上でも申請できますか?
できません。事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金未満であることが要件です。大阪府では1,231円未満の事業場のみが対象です(Q&A問3)。
Q3. 大阪府の申請期限は本当に9月30日ですか?
国の申請期限は「地域別最低賃金の発効日の前日」または11月30日の早い日で、大阪府の発効日は2026年10月1日(大阪労働局公表)のため、9月30日です。大阪府の上乗せ補助の事前登録期限も9月30日です。
Q4. 大阪府の上乗せは、国の助成金が出た残りの金額に1/4ですか?
いいえ。府の補助対象経費は、国の精算書に記載した対象経費の支出済額です。支出額そのものに1/4を乗じ、上限200万円です。
Q5. 申請手続きは税理士にお願いできますか?
交付申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務です(Q&A問67・社会保険労務士法第2条)。当事務所では、対象になりそうか・賃上げ後の資金計画が回るかを一緒に確認し、申請手続きは提携の社会保険労務士と連携して進めます。
Q6. 他の助成金と一緒に使えますか?
同一の設備投資に対する他の助成は併用できません。設備投資とは別の費用に対する助成金は受けられる場合がありますが、補助目的が重なると併給調整の対象になります。また、業務改善助成金で賃上げの対象にした労働者を、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象として重ねてカウントすることはできません(Q&A問47)。
12.まとめ
2026年度の業務改善助成金で特に重要なのは、「賃上げする前」そして「設備投資する前」に制度を確認することです。
最低賃金の引上げに伴い「どうせ従業員の時給を上げる予定だった」という事業者様で、さらに設備投資を検討されている場合には、助成金を活用できる可能性があります。また、大阪府内の事業者様については、国の業務改善助成金に加えて、大阪府独自の上乗せ補助を受けられる可能性があります。
ただし、大阪府の事業者は、国の申請期限も、府の事前登録期限も、2026年9月30日です。設備投資や賃上げを予定されている事業者様は、実施してしまう前にお早めにご確認ください。
9月30日までに、申請を検討する価値があるかを一緒に整理します
上の6点(最低時給・人数・賃上げ額・設備・金額・時期)をお知らせいただければ、制度の対象になり得るか、賃上げ後の人件費を含めた資金計画が回るかを一緒に確認します。申請手続きは提携の社会保険労務士と連携します。
初回45分・無料 | オンライン(Zoom・Google Meet)可 | 2営業日以内にご返信 | 無理な営業はいたしません
公式情報
- 厚生労働省「業務改善助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html - 大阪労働局「大阪府最低賃金は、令和8年10月1日から時間額1,231円に改正されます。」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/saichin2026kaisei.html - 大阪府「大阪府業務改善・賃上げ促進補助金」
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110090/rodokankyo/gyoumukaizen_chinagesokushin_hojokin.html
※本記事は2026年9月6日時点の公表情報に基づいて作成しています。大阪府の2026年度最低賃金(時間額1,231円・2026年10月1日発効)は大阪労働局の公表に基づきます。制度内容は変更される可能性がありますので、実際の申請にあたっては厚生労働省、大阪労働局、大阪府等の最新情報をご確認ください。
※「最大600万円」は特例事業者・90円コース・10人以上の区分の上限です。助成額はコース・人数・助成率により異なります。※個別の事業者が助成金・補助金の対象となるか、対象経費として認められるか、支給される金額等を保証するものではありません。
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監修:稲田 光浩(いなだ みつひろ)/税理士
稲田光浩税理士事務所 代表。近畿税理士会所属(登録番号135413)。税理士業界19年、税理士登録8年目、独立5年目。認定経営革新等支援機関。東京プロマーケット上場準備中の企業の監査役、社会医療法人の監事を務め、複数社の経営会議・取締役会に外部の立場で参加。決算書を作る側と、それを見て判断する側の両方の席から、経営者の数字に伴走しています。
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