月次の試算表は毎月届いている。顧問税理士にも見てもらっている。それでも、来月の資金が足りるのかどうかが分からない。
そういう状態の会社を、私は何社も見てきました。数字が無いわけではありません。見る順番が決まっていないだけです。
ここでは、私が社外CFOとして顧問先の数字を見るときに、実際に確認している場所を20に分けて書きます。上から順に見ていけば、どこで詰まっているかが分かるようになっています。
全部できている会社は、まずありません。3つか4つ引っかかるのが普通です。引っかかった場所から手をつけてください。
書き込んで使える資料を5点、お配りしています
20項目のチェックリストと、章ごとのワークシート4点です。いずれもA4で、そのまま印刷して使えます。数字を書き込む欄を作ってあるので、経理担当の方や後継者の方と一緒に埋めていただく想定です。会社名・お名前・メールアドレスのみで受け取れます。
第1章 現金 ― 利益ではなく、残高で見る
財務の話は、ほぼここから始まります。利益が出ているかどうかより先に、来月払えるかどうかです。
1. 黒字なのに、現金が増えていない
決算は黒字。けれども預金残高は去年と変わらない、むしろ減っています。この状態は、利益が現金以外の場所に変わっているということです。
行き先は3つしかありません。売掛金・在庫・借入返済です。この3つの前期比を並べると、どこに消えたかはすぐ出ます。減価償却と税金を足し引きするのは、その後で構いません。
確認するもの:貸借対照表2期分。売掛金・棚卸資産・借入金の増減
2. 手元資金がいくら必要か、決めていない
「いくらあれば安心ですか」と聞かれたら、月商の2〜3か月分とお答えしています。ただ、これは目安です。業種によって答えが変わります。
本当に決めるべきなのは、固定費の何か月分を持つかです。売上がゼロになっても、家賃と人件費と借入返済は出ていきます。そこから逆算した金額が、その会社にとっての最低ラインです。
確認するもの:月次の固定費合計、毎月の借入返済額、現預金残高
3. 資金繰り表が、月次までしかない
月次の資金繰り表はあっても、月末に残っていればいい、という見方になりがちです。実際に詰まるのは月の途中です。
給与の支払日、社会保険の納付日、仕入の支払日、借入の返済日。これらが重なる週があります。週次の資金繰りにしないと、その週が見えません。
確認するもの:直近3か月の入出金を週単位に並べたもの
4. 在庫と短期借入が、ずれている
在庫を持つ業種では、在庫が短期借入で回っているかを見ます。ここがずれているとき、差額は別のものに使われています。
不動産販売業なら、現金で買った物件、仲介手数料、リフォーム代。製造業なら仕掛品の積み上がり。物件や商品そのものは短期借入で補えても、その周りの費用は補えません。ここが資金を食います。
確認するもの:棚卸資産と短期借入金の残高、その差額の内訳
5. 納税資金を、別枠にしていない
法人税と消費税は、利益が出た翌期に出ていきます。特に消費税は、預かっているだけのお金です。手元にあると、どうしても使ってしまいます。
決算の2か月前ではなく、毎月、概算で積んでおくのが確実です。別口座に移すだけでも違います。
確認するもの:今期の予測利益、消費税の概算額、納税予定日
第1章 現金 配布資料
現金が消えた場所を特定するワークシート(A4・2ページ)
貸借対照表2期分の数字を書き込むと、利益が売掛金・在庫・借入返済のどれに変わったかが出ます。手元資金の最低ラインを出す欄もつけました。
1章で2つ以上引っかかった方へ
現金の章で複数つまずく場合、原因は経理ではなく構造にあることが多いです。直近2期の決算書をお持ちいただければ、どこで現金が止まっているかを分解してお返しします。
初回45分の無料相談 | 電話 06-7777-1762 | LINEで質問する
初回45分・無料|対面/オンライン可|平日9:00-20:00(土日祝対応可)|24時間以内にご返信|無理な営業はいたしません
第2章 銀行 ― 向こうが見ている数字を、こちらも見る
銀行は決算書を独自の見方で読み替えています。その読み替えを知らないまま説明に行くと、話が噛み合いません。
6. 債務償還年数を、知らない
借入金を、いまの利益で何年かけて返せるか。銀行が必ず見る数字です。目安は10年以内とされています。
ややこしいのは、計算式が1つに決まっていないことです。簡易式で出すか、正常運転資金を引くかで年数が変わります。自社の取引銀行がどちらで見ているかは、聞けば教えてくれます。
私は顧問先に、一度聞いてみてくださいとお伝えしています。借りる話をしていないときに聞くほうが、落ち着いて話せますので。
確認するもの:有利子負債、営業利益+減価償却費
7. 実質無借金かどうかを、見ていない
借入金が3億あっても、現預金が3億5千万あれば、正味では借りていません。銀行はここを見ます。
借入を減らすことだけが財務改善ではない、という話でもあります。借りたまま現金を厚く持つという選択が正しい局面はあります。金利を払ってでも手元を厚くしたほうがいい会社は、実際にあります。
確認するもの:有利子負債合計と現預金合計の差額
8. 短期と長期の借り方が、逆になっている
設備投資を短期借入で、運転資金を長期借入で。これが逆になっている会社をときどき見ます。
設備は何年もかけて回収するものなので、返済もその期間に合わせます。短期で借りると、回収前に返済が来ます。借り方を直すだけで資金繰りが楽になることは珍しくありません。
確認するもの:借入一覧(借入日・期間・残高・資金使途)
9. 保証協会の枠が、あとどれだけ残っているか知らない
信用保証協会の保証には限度があります。いざ必要になったときに枠が残っていないと、動けません。
枠は、残っているうちに確認しておくものです。借りる予定がないときに聞くほうが、落ち着いて話せます。
確認するもの:保証付き融資の残高、制度ごとの限度額
10. 経営者保証を外す条件を、確認していない
経営者保証に関するガイドラインがあり、一定の条件を満たせば保証を外せる場合があります。
条件の中心は3つです。法人と個人の資産・経理が分かれていること、財務基盤が十分であること、財務情報を適時に開示していること。3つ目は、月次試算表を期日どおりに出しているかという話でもあります。
確認するもの:役員貸付金・役員借入金の有無、月次の提出実績
第2章 銀行 配布資料
借入一覧表と、銀行面談の前に確かめること(A4・3ページ)
借入を1本ずつ書き出す一覧表(銀行名・期間・残高・資金使途・保証)、債務償還年数の計算欄、面談前の10項目チェック。
銀行の章で、よくある誤解
❌ 借入は少ないほうがいい……現預金を削って返済に回すと、いざというときに動けなくなります
❌ 決算が終わってから相談する……数字が固まってからでは打つ手がありません。期中に動きます
❌ 銀行には良い顔だけ見せる……悪い数字こそ先に出したほうが、説明の機会をもらえます
第3章 利益の構造 ― どこで稼いで、どこで溶けているか
利益が出ているかどうかではなく、どういう形で出ているかを見ます。同じ利益でも、構造が違えば打てる手が変わります。
11. 変動費と固定費を、分けていない
損益計算書の並びは、売上原価と販管費です。これは税務の分け方であって、経営の判断には使いにくいものです。
売上に連動して増えるもの(変動費)と、売上がゼロでも出ていくもの(固定費)に分け直します。この分け直しをしないと、この先のほとんどの判断ができません。第3章の残り4つも、全部ここが前提です。
確認するもの:勘定科目ごとに変動・固定を仕分けた一覧
12. 損益分岐点が、出ていない
いくら売れば赤字にならないか。変動費と固定費が分かれていれば、すぐ出ます。
出したあとが本番です。いまの売上は、損益分岐点から何パーセント上にあるか。ここが10%なら、売上が1割落ちただけで赤字になります。その余裕の幅が、その会社の体力です。
確認するもの:限界利益率、固定費合計、現在の売上との差
13. 粗利率が、商品別・部門別に出ていない
全社の粗利率だけを見ていると、平均に隠れます。売上の大きい商品が、実は一番利益が薄いということが起きます。
部門別、商品別、物件別、取引先別。どの切り口で分けるかは業種によります。ただ、何か1つの軸で分けることだけは、どの会社でも要ります。
確認するもの:売上上位10件の粗利額と粗利率
14. 値上げしなかった場合の損失を、数字にしていない
値上げ交渉の話になると、断られたらどうするかに意識が向きます。そこではありません。
見るべきなのは、このまま上げなかったら、1年で利益がいくら減るかです。原価が上がっているのに価格が据え置きなら、毎月確実に減っています。その金額を出すと、交渉に行く理由がはっきりします。
確認するもの:主要原価の前年比、取引先ごとの単価改定履歴
15. 役員報酬を、利益から逆算していない
役員報酬は期首に決めて、原則その期は変えられません。だから「去年と同じ」で決めている会社が多いように思います。
本来は、いくら利益を残したいかから逆算します。返済額、納税額、設備投資の予定。これらを先に置いて、残りから役員報酬を決めます。順番が逆になっているだけで、手元に残る金額が変わります。
確認するもの:年間の借入返済額、予測利益、社長個人の必要額
第3章 利益の構造 配布資料
変動費・固定費の仕分け表と、損益分岐点(A4・3ページ)
勘定科目を変動・固定に振り分ける表、限界利益率から損益分岐点と余裕率を出す計算欄、値上げしなかった場合の損失、役員報酬の逆算。迷いやすい科目の考え方つき。
11番で止まった方へ
変動費と固定費の分け方には、業種ごとに勘所があります。ここを間違えると、12〜15が全部ずれます。勘定科目の一覧をお持ちいただければ、分け方を一緒に決めます。
第4章 体制と承継 ― 数字が出る仕組みと、残し方
ここまでの15項目は、数字が出てくることが前提でした。最後の5つは、その前提のほうの話です。
16. 試算表が、翌月15日に出ていない
先月の数字が出てくるのが翌々月、という状態だと、手の打ちようがありません。気づいたときには2か月経っています。
目安は翌月15営業日以内。できれば10日。そのためには、締めの期日と資料の提出ルールを決める必要があります。会計ソフトを変えるより、そこが先です。
確認するもの:直近6か月の試算表の完成日
17. 社長個人と法人の資金を、分けて見ていない
役員貸付金があったり、社長個人の不動産を会社が借りていたり、個人の借入の返済を役員報酬で賄っていたり。中小企業では、どれも普通にあることです。
問題は、法人だけ見ても資金の全体像が分からなくなることです。法人と個人を一枚に並べて初めて、どこが詰まっているかが見えます。銀行もここを見ています。
確認するもの:役員貸付金・役員借入金の残高、個人の借入返済額
18. 経営会議で見る数字が、決まっていない
毎月集まってはいるけれど、その場で出てくる資料が毎回違い、議題もその都度変わります。これだと比較ができません。
毎月同じ数字を、同じ形で見る。変わったのは数字だけ、という状態を作るのが先です。見る項目を増やすのは、後からで構いません。
確認するもの:直近3回の会議資料。同じ項目が並んでいるか
19. 自社株の評価額を、知らない
承継の話になってから評価してみたら、想定の何倍もあって動けなくなる。よくある詰まり方です。
評価額は利益と純資産で動くので、業績がいい年ほど上がります。皮肉な話ですが、調子がいいときほど承継は難しくなります。だから早めに一度出しておきます。出しておけば、いつ動くかを選べます。
確認するもの:直近の決算書、株主名簿
20. 決め方が、記録に残っていない
最後はこれです。20項目のなかで、いちばん軽く見られていて、いちばん後で効きます。
私は監査役・監事として取締役会や理事会に出ていますが、そこで問われるのは金額そのものより「それを誰が、何を見て、どう決めたか」です。税務調査でも、承継のときも、銀行に新しく説明するときも、同じことを聞かれます。
議事録、稟議、承認の記録。数字は後から直せますが、決め方は後から作れません。
確認するもの:直近1年の重要な決定について、記録が残っているか
第4章 体制と承継 配布資料
月次の締めスケジュールと、経営会議のアジェンダ(A4・3ページ)
「翌月15営業日に試算表」を実現する逆算表(担当・期日の記入欄つき)、毎月同じ形で見るための定例アジェンダ8項目、決め方を残せているかのチェック。
20項目のまとめ
| 章 | 項目 |
|---|---|
| 現金 | 1. 黒字なのに現金が増えていない |
| 2. 手元資金がいくら必要か決めていない | |
| 3. 資金繰り表が月次までしかない | |
| 4. 在庫と短期借入がずれている | |
| 5. 納税資金を別枠にしていない | |
| 銀行 | 6. 債務償還年数を知らない |
| 7. 実質無借金かどうかを見ていない | |
| 8. 短期と長期の借り方が逆 | |
| 9. 保証協会の枠の残りを知らない | |
| 10. 経営者保証を外す条件を確認していない | |
| 利益の構造 | 11. 変動費と固定費を分けていない |
| 12. 損益分岐点が出ていない | |
| 13. 粗利率が商品別・部門別に出ていない | |
| 14. 値上げしなかった場合の損失を数字にしていない | |
| 15. 役員報酬を利益から逆算していない | |
| 体制と承継 | 16. 試算表が翌月15日に出ていない |
| 17. 社長個人と法人の資金を分けて見ていない | |
| 18. 経営会議で見る数字が決まっていない | |
| 19. 自社株の評価額を知らない | |
| 20. 決め方が記録に残っていない |
なぜ、この順番なのか
現金 → 銀行 → 利益の構造 → 体制。この順番には理由があります。
現金が止まると会社は終わります。だから最初です。次が銀行で、これは現金を外から補う経路だからです。利益の構造はその次。構造を直すのは時間がかかるので、足元が持たないうちに取りかかっても間に合いません。
体制と承継を最後に置いたのは、優先度が低いからではありません。急がないけれど、後からは取り返せないものだからです。1〜15はあとからでも直せます。19と20は、気づいたときには手遅れになっていることがあります。
——と書くと、順番どおりにやらないといけないように聞こえるかもしれませんが、そこまで厳密なものではありません。引っかかったところから手をつけてもらえれば十分です。
それと、20項目と書いておいて何ですが、これが完全なリストだというつもりはありません。業種によっては、ここに載っていないものが一番大事だったりします。不動産販売業の物件別の採算、飲食業のFL比率、医療法人の設備投資の償還期間。そういうものは、その業種に入ってみないと出てきません。
ここに書いたのは、業種を問わず必ず見る20です。土台のほうだと思ってください。
資料5点のダウンロード
このページの内容を、書き込んで使える形にしました。全部で5点です。
- 財務20項目チェックリスト(全体・A4 5ページ)……20項目のチェック欄とメモ欄、チェックの数で見る次の一手
- 第1章 現金が消えた場所を特定するワークシート(A4 2ページ)
- 第2章 借入一覧表と、銀行面談の前に確かめること(A4 3ページ)
- 第3章 変動費・固定費の仕分け表と、損益分岐点(A4 3ページ)
- 第4章 月次の締めスケジュールと、経営会議のアジェンダ(A4 3ページ)
一度のお申し込みで5点すべてをお送りします。どれが一番気になっているかだけ教えてください。料金のご案内は入っていません。しつこい営業もいたしません。
財務20項目チェックリスト(PDF・A4 5ページ)
表紙+20項目のチェック欄(メモ欄つき)+チェックの数で見る次の一手+事務所のご案内。料金のご案内は入っていません。
いただいた情報は、資料のお送りとご連絡にのみ使用します。しつこいお電話はいたしません。
よくある質問
20項目のうち、いくつできていれば大丈夫ですか
全部できている会社はまずありません。3つか4つ引っかかるのが普通です。ただし、第1章の現金に2つ以上引っかかっている場合は、原因が経理ではなく事業の構造にある可能性があります。その場合は順番に直すより、まとめて見たほうが早く済みます。
顧問税理士がいますが、相談できますか
できます。税務顧問はそのままで、財務の部分だけを見る形でご依頼いただくことがあります。申告や記帳は現在の税理士が、月次の数字の読み方と銀行対応を当事務所が担当する、という分担です。顧問税理士を変える必要はありません。
何を持っていけばよいですか
直近2期の決算書があれば、1〜15についてはその場でおおよそ分解できます。あわせて借入の一覧(借入日・期間・残高)があると、第2章の精度が上がります。資料が揃っていなくても構いません。
チェックリストを受け取ると、営業の連絡が来ますか
資料をお送りするメールと、その後に1通ご案内をお送りするだけです。しつこくお電話することはありません。不要であればその旨ご返信ください。
毎月、この20項目を一緒に見続ける形をお探しの方へ
一度点検して終わりではなく、月次で数字と運用の両方を見続ける体制については、Luxe Partners でご案内しています。
監修:稲田 光浩(税理士)
稲田光浩税理士事務所 代表。近畿税理士会所属・税理士登録番号135413。認定経営革新等支援機関。
2007年から会計事務所に勤務し、2021年10月に大阪・西中島で独立。決算書を作る側であると同時に、東京プロマーケット上場準備企業の監査役、社会医療法人の監事として、出てきた数字を見て判断する側の席にも座っています。監査役としては監査計画の策定から監査報告書の作成まで実際に行い、取締役会と経営会議の両方に出席しています。
稲田光浩税理士事務所/〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島4-2-21 ミツフ新御堂筋ビル605/TEL 06-7777-1762(平日9:00-20:00・土日祝対応可)


